★1972年 いすゞベレット 最後のベレット ~ 自動車カタログ棚から 197 | ポルシェ356Aカレラ

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★1963年(昭和38年)11月に登場した「いすゞベレット」はその後様々な変転を経て、デビューから8年を経た1971年(昭和46年)10月21日に最後の大きなマイナーチェンジを受けた。
バリエーションは前年の13車種から一気に6車種に整理され、よりスポーティーな性格が強調された。セダンの1300と1500は生産中止となり、唯一残ったプッシュロッドOHVエンジンを積む「1600スペシャル」(2ドア56.1万円&4ドア59.1万円)をベーシック・グレードとして2ドアセダンにGTと同じSOHC115psエンジンを積む1800スポーツ(71.7万円)、クーペボディのGT系はDOHC120psの「1600GTR」(111万円)を頂点としてSOHCツインキャブ115psの正統派1800GT(87万円)とSOHCシングルキャブ100psの「狼の皮を着た羊」「女性向けファッショナブルGT」「スタイルだけの伊達GT」などと言われた新グレード「1800GTN」(80.2万円)というラインナップとなった。GT「N」の名称は117クーペの最廉価版に「N」と付けられていたのと同じだった。
その後、ベレットは1972年(昭和47年)9月にボディカラーの変更を受け、全車種7色のフルバリエーションとなり、その1年後の1973年(昭和48年)9月限りで生産を中止した。登場から丸10年という当時の日本車としては異例に長い生涯であった。なお、1972年9月1日~10月31日の期間に2ドアスペシャル・ベースの最終限定車が発売された(資料が見つからず詳細は不明)。そして、ベレットの終焉から1年のブランクの後、1974年(昭和49年)10月にGMグローバルカーたる初代ジェミニが「ベレット・ジェミニ」の車名で登場した。

★最後のベレットの外観は、一目で最終型と判るプラスチック製の黒いフロントグリルと大きな正方形4連テールが特徴。
「デコラティブ」「オーバーデコレーション」「ベレットのデザインにはそぐわない」「下品・品がない」等とCG誌を始めとする当時のジャーナリズムからも不評であった。実際、後年旧車となって維持される際には1971年以前のシンプルで誰の目にも美しいフロント&テールに改造された例も多かった。今思えば最後のベレットは1970年代前半のデザイン・トレンドを真っ正直に採り入れたもので、ベレット同様に1960年代に登場した510ブルーバードの眼鏡をかけたような顔の最終型やスバル1000の最終型たるff-1/1300G等も最終型ベレットと雰囲気のよく似たデコレーションが施されていた。40年を経た現在では、最終型ベレットのオーバーデコレーションも70年代前半という時代を想起させる一種の味わいが出てきたようにも思える。

★最後のベレットの外観の変化は不評ではあったが、先日亡くなられた小林彰太郎編集長時代のCG誌では以下のような記述がされるなど、1970年代に入っても尚、数々のライバル車達の中でベレットは最後まで独自の輝きを放っていた。
スバル360なき今日、現行国産車中のロンゲスト・セラーとなっているベレットは華やかにデビューするニューモデル群の中にあっては目立たない存在となってはいるが、自動車そのものの魅力という点ではそれらのニューカーに勝るとも劣らないものを持っている。なかでもクィックかつ確実なステアリングと独自のリア・サスペンションがもたらす軽快な操縦性は、ドライビングに楽しみを見い出せるエンスージャストには、いかなるニューカーも及ばないほどの喜びを与えてくれる。飽きのこない精悍なボディ・スタイリングと共に熱烈なベレット党を存続させている要因である。」(1972年12月発行CG臨時増刊「'73国産・輸入乗用車集」より抜粋)

【主要スペック】 1972年 いすゞベレット1600GTR (型式PR91W)
全長4005㎜・全幅1495㎜・全高1325mm・ホイールベース2350㎜・車重970kg・FR・G161W型水冷直列4気筒DOHC1584cc・最高出力120ps/6400rpm・最大トルク14.5kgm/5000rpm・変速機4速フロアMT・乗車定員4名・最高速190㎞/h・販売価格111万円


●いすゞ広報誌「鈴の音」1972年4月号 (B5判・28頁)
表紙はマイナーチェンジを受けた最後のベレGR
$ポルシェ356Aカレラ-鈴の音


●1971年10月 いすゞベレット1600GTR 広報写真 (縦10.8×横16.8cm)
$ポルシェ356Aカレラ-広報写真


●1971年10月発行 いすゞベレット'72 簡易カタログ (縦30×横24.5cm・4つ折8面)
いすゞカタログNo.PC‐4047
$ポルシェ356Aカレラ-72簡易表紙
中頁から
バリエーション6種類
$ポルシェ356Aカレラ-72簡易1中バリエーション6種
大きく印象の変わった前後
$ポルシェ356Aカレラ-72簡易2中前後
裏面スペック&ボディカラー。カラーは僅か合計4色まで減らされ、GTRは白とブルーベルメタリックの2色のみでオレンジの設定はなし。スペシャルに至っては白1色のみ。
$ポルシェ356Aカレラ-72簡易3裏スペックカラー


●1971年11月発行 いすゞベレット'72 本カタログ (縦30×横24.5cm・36頁)
いすゞカタログNo.PC‐2029
GT系とセダン系で分れていた本カタログが車種の大幅整理に伴い一つに統合された。
$ポルシェ356Aカレラ-72本表紙
中頁から
冒頭には藤巻 潤・浅岡重輝・佐良直美・小林彰太郎・加納典明・長嶋茂雄等(敬称略)の各界有名人の「ベレットについて一言」が掲載されている。
$ポルシェ356Aカレラ-72本1中
$ポルシェ356Aカレラ-72本2中
$ポルシェ356Aカレラ-72本3中
ブルーベル・メタリックのGTR。有名な黒塗りボンネットはオプション。
$ポルシェ356Aカレラ-72本4中GTR
1800GT&1800GTN
$ポルシェ356Aカレラ-72本5中GT&GTN
GT室内
$ポルシェ356Aカレラ-72本6中GT室内
1800スポーツ
$ポルシェ356Aカレラ-72本7中1800スポーツ
スペシャル2ドア&4ドアセダン
$ポルシェ356Aカレラ-72本8中スペシャル2&4ドア
シンプルなスペシャルのダッシュボード
$ポルシェ356Aカレラ-72本9中スペシャル室内シンプル
GT系エンジン3種
$ポルシェ356Aカレラ-72本10中GTエンジン3種
セダン系エンジン2種
$ポルシェ356Aカレラ-72本11中セダンエンジン2種


●1972年9月発行 いすゞベレット 簡易カタログ (縦30×横24.5cm・3つ折6面)
いすゞカタログNo.PC‐4051
$ポルシェ356Aカレラ-73簡易表紙
中頁から
バリエーション
$ポルシェ356Aカレラ-73簡易1中バリエーション
ボディカラーは白・黄・青・緑・銀・オレンジ・草色の7色に変更。全ての車種で7色選べた。
$ポルシェ356Aカレラ-73簡易2中ボディカラー7色


●1972年9月発行 いすゞベレット 本カタログ (縦30×横24.5cm・30頁)
いすゞカタログNo.PC‐2032
$ポルシェ356Aカレラ-73本表紙
中頁から
「精悍」「鋭敏」「鼓動」「清冽」「面魂」「潔癖」「静粛」「端正」「頑固」「徹底」「峻烈」「多彩」「群雄」といった2字熟語で構成されたシンプルで魅力的な最後の本カタログ。
$ポルシェ356Aカレラ-73本1中「精悍」
$ポルシェ356Aカレラ-73本2中
$ポルシェ356Aカレラ-73本3中後姿
1800スポーツ
$ポルシェ356Aカレラ-73本4中1800スポーツ
GT系室内。ステアリングがGTRと1800GTは革巻き、1800GTN(右下)は木目。
$ポルシェ356Aカレラ-73本5中GT室内
ボディカラー&オプション。セダン1800スポーツでも黒塗りボンネットが選択出来た。
$ポルシェ356Aカレラ-73本6中カラー&オプション




★オマケ(その1): 1971年10月 いすゞベレット’72 ディーラー店頭用ポスター (B1サイズ:縦73×横103cm)
カタログと同じフォト・セッションで撮られた別ショットの店頭用巨大ポスター。
$ポルシェ356Aカレラ-ポスター


★オマケ(その2): 三栄書房 「いすゞベレット」 (B5判・52頁)
ベレットが生産中止となる3ヵ月前の1973年6月20日発行。モーターファン「日本の傑作車シリーズ」の第9集。ベレット試作SXの開発秘話やいすゞデザイン室主査・井ノ口氏のベレット・デザイン誕生の記事など濃い内容の1冊。同シリーズではスカイラン・サバンナ・フェアレディ・セリカ/カリーナ等も発売されている。
$ポルシェ356Aカレラ-三栄書房


★オマケ(その3): トミカリミテッドヴィンテージ 1/64スケール 1973年いすゞベレット1600GTR
2013年11月発売されたばかりのTLV。税込定価1575円。ダイキャスト製。まさかの最終型のモデル化だが、以前トミーでは1985年夏にトミカ発売15周年として1/50スケールで同じ最終型ベレットGTRの少々ずんぐりしたブロンズメッキモデル(手元にあるモデルの裏板にはNo.908の刻印があり、これはシリアルナンバー?)を発売している。同じ最終型でも1972年式はGTRのボディカラーからオレンジが消えて白とブルーメタの2色の設定になり、最後の1973年式でオレンジが復活しているのでTLVの箱に記載された「'73年式」は正しいようだが、カタログで見る限り厳密には、'73年式は同じオレンジでも1971年式までのベレGRのイメージカラーとして有名な明るいオレンジではなくオマケ2の表紙写真のようなメタリックオレンジに変更されているようだ。
$ポルシェ356Aカレラ-TLV(1)
$ポルシェ356Aカレラ-TLV(2)
$ポルシェ356Aカレラ-TLV(3)


※前期型ベレットGTRについては本シリーズ第86回記事を参照ください。