★今を遡ることちょうど50年前の1963年(昭和38年)11月20日に発売された「いすゞベレット」(本シリーズ第163回記事参照)は、4輪独立懸架やラック＆ピニオンのステアリング等のメカを丸味を帯びたコンパクトなボディで包み込んだ極めて魅力的な小型スポーティーサルーンであったが、1973年(昭和48年)9月までの当時の日本車としては異例に長い10年に亘るモデルライフの中で非常に複雑なバリエーション展開をみせ、その生涯は波乱に満ちていた。
★ベレット発売から約2年半後の1966年(昭和41年)4月、ベレットのセダン系(1500/1300および1800ディーゼル)は初めての目立つマイナーチェンジを受けた。
上下をメッシュ模様としたフロントグリルにテールライトは1600GTに準じた大きなものとなり、内装はコージーインテリア(Cozy interior=居心地の良い室内)と称するデザインに文字通り一新された。それまで２つのメーターだけが独立したフードに包まれて盛り上がり全体が低く非常にスポーツライクだった初期のダッシュ・デザインが、扁平であっさりとした平凡なデザインに変更され、ダッシュボードについては残念ながらこの新デザインがベレットの終焉に至るまで継承されることとなった。この内装についてはベレットのセダン・GT共に1966年のマイナー前の初期デザインがベストだったと断言することが出来る。
この1966年4月のセダンのマイナーチェンジに際して機構的にはフロア4速ミッションがフルシンクロとなり、1500ではオプションながらフロント・ディスクブレーキとリクライニング・シートを装着できるようになった。1965年(昭和40年)9月に加わったボルグワーナー35型3速オートマが僅か1年余り後の1966年11月に何故か国産2速オートマに変更され、また、同じ66年11月には1965年末までの1年余りという短命に終わった1500GTと同じ77psエンジンを搭載したセダン1500スポーツ、角型ヘッドライトにリア周りのデザインを変え後輪リジットとしたセダンBタイプ、GT系では1600GTファストバックがデビューするなど複雑極まりないベレットのバリエーション展開が本格的に始まった。ベレットの生涯で年間国内登録台数が2万台を上回ったのは、1966年(2万6238台)と1967年(2万4821台)の2年のみであり、この時期のベレットが商業的には最も成功した華の時代であったとも言える。
【主要スペック】 1966年 いすゞベレット1500 4ドア デラックス（型式PR20D4）
全長4030㎜・全幅1495㎜・全高1390 mm・ホイールベース2350㎜・車重930kg・FR・G150型水冷直列4気筒OHV1471cc・最高出力68ps/5000rpm・最大トルク11.3kgm/2200rpm・変速機4速フロアMT・乗車定員5名・最高速140㎞/h・販売価格64万2000円
●1967年 いすゞご見学のしおり （縦20×横21cm・6つ折）
川崎工場、藤沢工場等の見学者に配布された総合パンフレット。表紙画はマイナーチェンジしたベレットセダンのラリーシーン。
●1966年4月発行 いすゞベレット・セダン 本カタログ （A4判・24頁）
いすゞカタログNo.PC-2005
中頁から
1500デラックス
海辺の1300
高原で記念撮影
一新された「コージーインテリア」
裏面スペック
●1966年4月発行 いすゞベレット シリーズ総合簡易カタログ （縦21×横12cm・蛇腹5つ折10面）
いすゞカタログNo.PC-4011。GTを含むベレット総合簡易カタログ。
●1966年4月発行 いすゞベレット1500デラックス リーフレット（A4判・両面1枚)
いすゞカタログNo.PC-4013
●1966年4月発行 いすゞベレット1300 リーフレット（A4判・両面1枚)
いすゞカタログNo.PC-4012
●1966年10月発行 いすゞベレット1500デラックス 専用カタログ（A4判・8頁)
いすゞカタログNo.PC-3007
●1966年4月発行 いすゞベレット1300 専用カタログ（A4判・8頁)
いすゞカタログNo.PC-3002
●1966年10月発行 いすゞベレット・セダン 本カタログ （A4判・24頁）
いすゞカタログNo.PC-2008。基本的には1966年4月の本カタログと同じ内容のカタログ。
中頁から
オートマチックはBWから国産に替わったため内容が入れ替えられている。
●1966年10月発行 いすゞベレット シリーズ総合簡易カタログ （縦21×横12cm・蛇腹5つ折10面）
いすゞカタログNo.PC-4018。GTを除くセダン系のみの総合簡易カタログ。
●1966年10月発行 いすゞベレット1500オートマチック 専用カタログ（縦28×横20cm・3つ折6面)
いすゞカタログNo.PC-3009。新車価格は1500デラックスより5万5000円高い69万7000円。
●1966年10月発行 いすゞベレット1500スポーツ 専用カタログ（A4判・10頁)
いすゞカタログNo.PC-3003。ツインキャブ77ps最高速150km。新車価格は1500デラックスより9万円高い73万2000円(4ドア)。
スポーツの計器盤は木目にタコメーター他が付いた基本的に1600GTと同じレイアウト
●1966年発行 いすゞベレット1500 英文カタログ（A4判・8頁)
いすゞカタログNo.HE-901。左ハンドル輸出車両のカタログ。
左ハンドル
●1966年発行 いすゞベレット1500 英文簡易カタログ（縦11×横20cm・3つ折6面)
いすゞカタログNo.6A2-5。フェンダーミラーの付かない輸出向け車両だが右ハンドル。
オマケ（その１）： 三共模型製作所 1/32スケール 1966年いすゞベレット1500デラックス プラモデル
当時定価220円。ガソリンスタンド・ミニチュア付。ボディ成形色：薄緑。全長12cm。三共ポリマーに社名変更する前の初版。1960年代国産車プラモデルの名作「三共1/32スケール国産ファミリーカーシリーズ」の1台。初版はガソリンスタンドもしくはプレハブガレージが付属。同シリーズでは他に3代目RT40コロナ、2代目411ブルーバード、初代ファミリア、初代ルーチェ、スバル1000、三菱コルト800、初代サニーが出ていた。ベレットの当時物プラモデルは三共の1966年式セダンが唯一でコグレ(小暮模型)から発売が予告された1600GTは未発売に終わった。
モールドもシャープで出来が良いキット
オマケ（その２）： 三共ポリマー 1/32スケール 1966年いすゞベレット1500デラックス プラモデル
当時定価200円。三共ポリマーに社名変更された後の再販。ガソリンスタンドが省かれ箱にJPM(日本プラスチックモデル工業協同組合)のマークが印字された。ボディ成形色：薄緑。高速道路を飛ばすベレットの箱絵(ボックスアート)が秀逸。
オマケ（その３）： 三共ポリマー 1/32スケール 1966年いすゞベレット1500デラックス プラモデル
当時定価150円。再々販。ボディ成形色：白。あっさりした箱絵となり、初めてキットナンバーの印字が入った(No.C2-8-150)。
オマケ（その４）： 緑商会 1/32スケール 1966年いすゞベレット1500デラックス プラモデル
当時定価100円。三共倒産後に緑商会(KSN・ミドリ)が金型を買い取った後の再販。1969年頃(？)。ボディ成形色：クリーム。
オマケ（その５）： 尾高産業 1/32スケール 1966年いすゞベレット1500デラックス プラモデル
当時定価200円。緑商会も倒産して更に尾高(ODK・オダカ)に金型が流れた後の再販。定価が倍に跳ね上がっていることからオイルショック後。初版から10年後の1976年頃(？)。ボディ成形色：薄茶色。この尾高版の後、更にニコー科学に金型が流れた最終の再販品が存在する？(2代目ブルーバードやコルトのニコー版は確認されているがベレットについては現物未確認)。
