★1964年 日野コンテッサ1300  ミケロッティ作の美女 ~ 自動車カタログ棚から 161 | ポルシェ356Aカレラ

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日野コンテッサ1300(4ドアセダン)は、前項のコンテッサ900のデビューから3年5ヵ月後の1964年(昭和39年)9月15日に発売された(プレス発表は8月31日)。東京オリンピック開催前月のことである。
基本的に900と同じリア・エンジン車だが、ホイールベースは130㎜伸びボディサイズは1.5L級に拡大され、全体としてルノーR8とも似たスタイルとなった。ボディデザインはイタリアのジョバンニ・ミケロッティ(Giovanni Michelotti;1921年10月-1980年1月23日)によるもので、同じミケロッティ作の1963年にデビューしたトライアンフ2000とも近似性のある上品かつ美しいものであった。
内外から高い評価受けたコンテッサ1300のデザインは当時の日本車としては文字通り傑出したもので、イタリア、ベルギーなどで開催された国際エレガンス・コンクールでは1300クーペ(1964年12月に追加発売:本シリーズ40回目参照)と共に度々大賞を受賞した。

★コンテッサ1300のリアに積まれたエンジンはGR100型直列4気筒OHV1251ccで連続高速走行を実現するため5ベアリング支持のクランクシャフトやクロスフローのバルブ・セッティングなどの先進メカを採用した。デラックスの4灯ヘッドライトに対してスタンダードは2灯ヘッドライトという外観上判りやすいグレード区分で登場したが、1966年にはスタンダードも4灯となった。なお、2灯ヘッドライトをスタンダードとする手法は当時のいすゞベレットなどにも見られ、1965年前後におけるコスト削減によるグレード分けの常套手段でもあった。
1965年(昭和40年)10月、1300クーペ用の圧縮比9.0により65psに出力を上げたエンジンを搭載したコンテッサ1300「S」を追加。外観上はリアサイドとリアグリルに装着された「S」の赤いバッチが付き、室内はバケットシート+フロアシフトとされた。1963年に日本グランプリが始まった影響もあり1965年前後はブルーバード、コロナ、ベレット等の国産小型セダンにスポーツグレードが相次いで追加された時代。そんな時代の風の中でコンテッサのセダンにも羊の皮を被った狼「S」が追加された訳である。

★コンテッサ900ではリアシート背後にあったラジエターが1300では最後部に移され、居住性はよくなったが重量配分は極端なテールヘビーとなった。高速での直進性も悪くオーバーステアも急激というリアエンジン・リアドライブの悪い特性に加えて販売網の弱さもあって国内販売は不振で日野がトヨタ自動車と提携した後の1967年(昭和42年)には生産を中止した。美人薄命とは言うけれど、コンテッサ1300は2年余りというあまりにも短い生涯だった。
なお、1300セダンはニュージーランドのキャンベル・モーター社で1966年8月よりの1年間程、現地生産された。
コンテッサが最も売れた1965年(昭和40年)における日野自動車の国産乗用車市場占有率は3.8%で、同4.4%のいすゞに次ぎ国内8位とシェアは決して高くはなかったが、当時路上でみかける機会は意外に多かった。それに今回のオマケに載せた通り、コンテッサ1300はモデルカーの類が多数発売されていたこともあって1960年代に子供時代を過ごした私にとってはとても懐かしいクルマの1台。


【主要スペック】 1964年 日野コンテッサ1300デラックス (形式: PD100型)
全長4150㎜・全幅1530㎜・全高1390㎜・ホイールベース2280㎜・車重940kg・RR・GR100型水冷直列4気筒OHV 5ベアリングクランクシャフト1251cc・最高出力55ps/5000rpm・最大トルク9.7kgm/3200rpm・変速機コラム3速MT・前後ドラムブレーキ・乗車定員5名・最高速130km/h・販売価格65万3000円


●1964年8月 日野コンテッサ1300 リーフレット (B5判・両面1枚)
$1959PORSCHE356Aのブログ-64リーフ表
$1959PORSCHE356Aのブログ-64リーフ裏


●1964年8月 日野コンテッサ1300 簡易カタログ (縦23×横26cm・12頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-64簡易表紙
中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-64簡易1中
インパクトのあるリアグリル
$1959PORSCHE356Aのブログ-64簡易2中


●1964年8月 日野コンテッサ1300 本カタログ (縦31.5×横26cm・24頁)
上質な紙を使用したメーカーのこのクルマに賭ける意気込みが感じられる大判豪華本カタログ。綺麗な白い表紙は経年により変色・汚れが出やすいので保存が難しい。
$1959PORSCHE356Aのブログ-64本表紙
中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-64本1中
$1959PORSCHE356Aのブログ-64本2中
ダッシュボード
$1959PORSCHE356Aのブログ-64本3中ダッシュボード
$1959PORSCHE356Aのブログ-64本4中外国2台
RRのため室内にはフロアトンネルの突起がなく非常に広々している
$1959PORSCHE356Aのブログ-64本5中室内フロアトンネルなし
55psエンジン
$1959PORSCHE356Aのブログ-64本6中エンジン
スタンダードの2灯ヘッドライトは少々間が抜けて見えるがユーモラスな表情
$1959PORSCHE356Aのブログ-64本7中スタンダード2灯
1300は当初からフロアシフト仕様も選択出来た
$1959PORSCHE356Aのブログ-64本8中2種
スペック&ボディカラー掲載頁
ボディカラーは何と13色も選べた
$1959PORSCHE356Aのブログ-64本9スペック&カラー13色


●1965年10月 日野コンテッサ1300S リーフレット(B5判・両面1枚)
1300クーペと同じ65psエンジンを積んだ羊の皮を被った狼
$1959PORSCHE356Aのブログ-65Sリーフレット


●1965年10月 日野コンテッサ1300S 専用カタログ(縦23×横26cm・12頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-65S本表紙
中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-65S本1中
左下の写真を見るとリアサイドとリアグリルに赤い「S」のバッチ.ダッシュボード周りはノーマルの1300と全く同じでタコメーターはオプション.
$1959PORSCHE356Aのブログ-65S本2中左下写真Sバッチ


●1966年1月 日野コンテッサ1300 本カタログ(縦23.5×横26cm・20頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-66本表紙
中頁から
赤いボディカラーはよく似合っている
$1959PORSCHE356Aのブログ-66本1中
スタンダード(手前)もヘッドライトは4灯となった
$1959PORSCHE356Aのブログ-66本2中スタンダード4灯


●1967年 日野コンテッサ1300 輸出向けカタログ (A4判・英文12頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-67英文表紙
中頁から
右下にミケロッティのサインが印刷されている
$1959PORSCHE356Aのブログ-67英文1中
国際エレガンス・コンクールでの写真
$1959PORSCHE356Aのブログ-67英文2中


●1967年 日野コンテッサ1300 輸出向けカタログ (A4判・仏文3つ折)
表紙のペパーミントグリーンのボディカラーは輸出専用色だが、コンテッサによく似合っている。
$1959PORSCHE356Aのブログ-67仏文表紙ペパーミント
中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-67仏文中頁



★オマケ(その1): モデルペット1/40スケール 日野コンテッサ1300
全長10cm。当時定価350円。アサヒ玩具、1965年2月発売。モデルペット品番26。アンチモニー製。カラーバリエーションは赤・青メタ・紺・茶メタ等。コンテッサ1300のミニカーとしては、近年になってこのモデルペットの味わいの復刻を狙った1/43スケールのアンチモニー製ファインモデルや小スケールのトミカリミテッドビンテージが出ている。
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★オマケ(その2): バンダイ 1/15スケール 日野コンテッサ1300
全長27.5cm。当時定価:都内280円・地方310円。1965年5月発売。フリクション駆動。バンダイは大小2種のコンテッサ1300セダンを発売し、他社からも多数競合商品が発売されており当時の人気度が偲ばれる。このバンダイの大サイズが当時物モデルカーの中では一番出来は良い。
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★オマケ(その3): バンダイ 1/23スケール 日野コンテッサ1300
全長18cm。当時定価:都内500円・地方530円。ポケットリモコンシリーズの1台。ブリスターパック売り。1965年6月発売。後ろに写っているブリスター入りは1967年の再販品でホイールがプラ製に変わり定価も都内600円・地方630円と100円上げられたが、翌1968年には全国統一価格630円となった(国立国会図書館所蔵の「東京玩具商報」より)。
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★オマケ(その4): ヨネザワ 1/15スケール 日野コンテッサ1300
全長28cm。当時定価:全国310円。米澤玩具、品番461。1965年5月発売。フリクション駆動。出来ではバンダイ製には劣るが、ライトブルーメタリックの塗装はなかなか美しい。
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★オマケ(その5): イチコー(一宏工業) 1/18スケール 日野コンテッサ1300
全長23.5cm。当時定価:都内260円・地方最低小売290円。フリクション駆動。サイドモールの有無、リアのアンテナ有無のバリエーションがあり、パーツが少ないもの程、コスト削減のため後に売られたもののようだ。
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★オマケ(その6): 1965年 池袋東武デパート屋上のコンテッサ1300遊具 (広報誌「日野ニュース」1965年8月号より)
1965年の夏に池袋東武の屋上遊園地に忽然と現れた「コンテッサ・ハイウェイ」。ゴーカートではなくガイドレールに沿って自動的に走らせる遊具コンテッサ。コンテッサ・ファンには感涙ものの夢のような情景だが、いつ頃まであったものか不明。このミニ・コンテッサは現存していないだろう。私は子供の頃に池袋西武デパートには連れていってもらっていたが、この東武屋上のコンテッサには乗ったことがなく残念。
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★オマケ(その7): 20世紀の名車たち「日野コンテッサ1300解説動画」