★1962年いすゞベレル 栄光の三角テール 長嶋茂雄 ~ 自動車カタログ棚から 162  | ポルシェ356Aカレラ

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アメーバのトラブルなのか、このところ画像のアップロードがどうにも不調です。
以前からサクサクっとアップ出来る程ではなかったのですが、現在は下手をすると1枚アップするのに30分かかるような有様でお手上げの状態です。同じようなことを呟いている人もいるようなのでPCの接続環境とかPC側の問題ではなくてアメーバ側に何らかの問題がありそうです。特に夜間の画像アップに問題があるようです。自動車カタログの記事は画像がなければ意味を為さないのでとても困っています。
4~5時間程度もかかって漸く画像がアップ出来ましたので(疲れた~)、本来8月4日 日曜日の夜早い時間にアップする予定だった記事を遅ればせながらアップします。。。



いすゞベレルは、英国ルーツ・グループとの技術提携契約により完全国産化したヒルマン・ミンクス(本シリーズ155・156回目参照)の技術提携期限切れを前に、ヒルマンの生産によって得た技術を元にいすゞオルジナルの乗用車として開発された。
まず、1961年(昭和36年)10月16日にプレス発表され追って開催された第8回東京モーターショー(当時の名称は全日本自動車ショウ)に展示され、翌1962年(昭和37年)4月11日に発売された。いすゞ(=五十鈴)の社名にちなみ、鈴を意味するベル(BELLl)に五十の意味の(EL)を組み合わせてベレル(BELLEL)と名付けられた。いすゞでは1500以上~2000ccの中型車にするか1500cc以下の小型車にするか検討した結果、まずはタクシー向けの需要が見込める6人乗りの中型車「ベレル」を世に出すこととなり、小型車の方は翌1963年(昭和38年)11月にベレット(BELLETT=ベレルの妹の意味)として登場することとなった。

★ベレルはボディスタイルとエンジンを除けばシャシー設計は基本的にヒルマンのものを踏襲していた。ボディ構造はサイドシルとフロアパンを主な強度メンバーとしたモノコックでサスペンションは前ウイッシュボーン/コイルの独立、後リジット、当初のエンジンは何れも4気筒の1500と2000のガソリンと2000ディーゼルの3種が用意された。ディーゼル乗用車としては1959年のクラウンCS20に次ぐ国産2番手としてタクシー需要を狙った。1500ガソリンと2000ディーゼルはいすゞの小型トラック「エルフ」「エルフィン」に搭載して実績を積んだものが流用され、2000ガソリンは2000ディーゼルのシリンダーブロックを流用してガソリン化したもので、何れも元がトラック用であったため最高出力の高さよりも実用域での使いやすさ(これはルーツ系エンジンの特徴でもあった)が重視されていた。2000ガソリンでは最大トルク発生回転数が1800rpmと異例に低く3速で25km~100kmまで無理なく加速するフレキシビリティーを示した。

★いすゞがコーダ・トロンカの思想を採り入れたと広報したベレルのデザインは当時のプジョー404、オースチン99、ランチア・フラミニア等のピニンファリーナのデザインとも近似した直線基調のサイドビューなどに新鮮味があり、三角形のテールライトがデザイン上のワンポイントとなっていた。しかしデザイン全体としては、中型フルサイズ感を強調したことが裏目に出て逆に鈍重さを感じさせ、ベレルデビューの秋に2代目クラウン、初代後期の横目のセドリック、2代目ハチマキ・グロリアといった同クラスの新車が一斉にデビューするに及んでデザイン面でライバル達に大きく遅れをとった感があり、ベレルは長嶋茂雄氏をイメージキャラクターに採用するなど鳴り物入りでデビューしたにも係わらず早い時期から不人気モデルに陥ってしまった。

★ベレル発売半年後の1962年(昭和37年)10月に2000ccエンジンの圧縮比を上げツインキャブを装着し85psから10psアップの95psエンジンを搭載した最高グレードのベレル2000スペシャルデラックスをシリーズに追加。当時の国産2000ccクラス最強のエンジンは最高速145km/hを誇った(1ps差で2位は94psのグロリアデラックスS40D)。スペシャルデラックスには前後席共にセンター・アームレストが設けられ電動アンテナ等の装備も追加された。翌1963年(昭和38年)4月には同一装備のディーゼル・スペシャルデラックス追加。ベレルのディーゼル車はタクシー用途にはシェア3割程度と売れていた中での一般向けディーゼル車の追加であったが販売は思わしくなかった。同1963年6月にはライトバンタイプの「ベレル・エキスプレス」を追加。その後のベレルは、1963年秋デビューの1964年モデル、1964年秋デビューの1965年モデルとフロント・グリルを中心としたマイナーチェンジを重ねたが販売は不調のままであった。1965年(昭和40年)10月に至り販売不振から脱却すべく起死回生のビッグマイナーチェンジを受けた。縦目デュアル・ヘッドライトにベレルのトレードマークであった三角テールを廃止し横長テールとした外観は前後のボディプレスを変更する大掛かりなもので、機構的にはギアボックスがオールシンクロ化された(そえまでは1速ノンシンクロ)。このベレルの起死回生策もクラウン・セドリック・グロリアという国産中型車御三家のシェアに食い込むことは出来ず次のフルチェンジを迎えることなく1967年(昭和42年)5月に生産が打ち切られた。ベレルの約5年の生涯における生産台数は3万7206台で、最盛期はデビュー翌年の1963年の1万2745台、縦目となった末期の1966年には年産1000台を切る程にまで落ち込んだまま少々悲劇的とも言える生涯を終えた。

★1960年代に子供時代を過ごした私にとっては三角テールのベレルは都内のタクシーで馴染みがあり思い出深い1台。今回のオマケに載せた通り、モデルカーは百花繚乱で当時ベレルを知らないクルマ好きの子供はいなかったと思う。しかし、縦目となった最後のベレルについては私にはリアルタイムの記憶がない。実際、販売台数が少なかった上に、既にディーゼルでなくLPGが主流の時代となっていたので末期のベレルはタクシーとしても見かけることはなかったように思う。


【主要スペック】 1962年いすゞベレル2000デラックス(PS20型)
全長4485㎜・全幅1690㎜・全高1493㎜・ホイールベース2530㎜・車重1220kg・FR・GL201型水冷4サイクル4気筒OHV1991cc・最高出力85ps/4600rpm・最大トルク15.3kgm/1800rpm・変速機4速コラムMT・乗車定員6名・ボディカラー7色・最高速136km/h・販売価格99万8000円


●月刊「自動車」1962年1月号 表紙
発売間近のいすゞベレルと25歳の長嶋茂雄氏(1936年2月20日-)
$1959PORSCHE356Aのブログ-月刊自動車


●1962年4月 いすゞニュース「いすゞベレル特集号」 (B5判・12頁)
カタログ以上に読み易い内容の冊子
$1959PORSCHE356Aのブログ-ニュース表
この三角形のテールライトがベレルのトレードマーク
$1959PORSCHE356Aのブログ-ニュース裏テールライト

●1962年いすゞ自動車 会社案内 (縦25.5×横25.5cm・28頁)
いすゞ工場見学の際などに配布された大判の冊子。表紙の2000DXの白/オレンジツートンが初期のベレルのイメージカラー
$1959PORSCHE356Aのブログ-会社案内

●1962年4月 いすゞベレル 簡易カタログ(B5判・2つ折)
表紙には長嶋茂雄氏
$1959PORSCHE356Aのブログ-簡易表紙
裏面スペック
ベレル・ライトバンとして発売前のエキスプレスのスペックも掲載
$1959PORSCHE356Aのブログ-簡易スペック

●1962年4月 いすゞベレル2000/1500 専用カタログ (A4判・16頁)
2000cc/1500ccスタンダードの専用カタログ。初期のベレルはスタンダード、ディーゼル、デラックスとグレード毎に厚口の専用カタログが発行されており、メーカーのこのクルマに懸ける意気込みを感じる。
$1959PORSCHE356Aのブログ-スタンダード表紙
中頁から
スタンダードにはフェンダーミラーが付かない
$1959PORSCHE356Aのブログ-スタンダード中頁ミラーなし

●1962年4月 いすゞベレル2000ディーゼル 専用カタログ (A4判・16頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-ディーゼル表紙
中頁から
ディーゼルもフェンダーミラーなし
$1959PORSCHE356Aのブログ-ディーゼル中頁

●1962年4月 いすゞベレル2000デラックス 専用カタログ (縦23.5×横24.5cm・20頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-DX表紙
中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-DX1中
51年の時を経ているので、この美女も現在は70代以上のはず
$1959PORSCHE356Aのブログ-DX2中

●1962年10月 いすゞベレル2000スペシャルデラックス 専用カタログ (縦24×横25.5cm・20頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-62S表紙黒
中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-62S1中正面
ベレルは生涯この扇形メーター
$1959PORSCHE356Aのブログ-62S2中扇型メーター
$1959PORSCHE356Aのブログ-62S3犬ハンティング

●1963年5月 いすゞベレル2000スペシャルデラックス 専用カタログ (縦24×横25.5cm・20頁)
1962年10月版のカタログ改訂でクルマ自体には変更なし
$1959PORSCHE356Aのブログ-63S表紙
中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-63S中頁

●1963年10月 いすゞベレル2000ガソリン車総合 本カタログ (縦30×横27cm・24頁)
ベレットの発売によりベレル1500はラインナップから落ちる。東京駅丸の内口駅舎をバックに路上に置かれたシートに座った紳士淑女の表紙は何を意図しているのだろうか
$1959PORSCHE356Aのブログ-63総合表紙
中頁から
1964年型としてフロントグリルを初めて変更
$1959PORSCHE356Aのブログ-63中(1)フロント
リア周りも変更
$1959PORSCHE356Aのブログ-63中(2)リア変更

●1964年10月 いすゞベレル2000スペシャルデラックス/スタンダード 本カタログ (縦27×横25cm・12頁)
1965年型。再度、フロントグリルが変り、「ISUZU」の文字が入った。
$1959PORSCHE356Aのブログ-64表紙
中頁から
フロントサイドマーカーをサイドモールの先に追加
$1959PORSCHE356Aのブログ-64中頁サイドマーカー

●1965年10月 いすゞベレル2000スペシャルデラックス 本カタログ (A4判・16頁)
起死回生のビッグマイナーチェンジ。全長は3cm伸びて4470mmに。
$1959PORSCHE356Aのブログ-65表紙縦目
中頁から
$1959PORSCHE356Aのブログ-65縦1中正面
三角テールを捨て横長テールに変更。乳母車(死語?)を引くお父さんと祖父母の乗ったベレル。よく見るとトランクには新幹線などの大きなオモチャが入っている。
$1959PORSCHE356Aのブログ-65縦目2中リア乳母車


●1963年5月 いすゞベレル・エキスプレス 専用カタログ (縦24.5×横25.5cm・3つ折)
ヒルマン同様、ベレルのバンタイプにはエキスプレスの名が付いた。テールライトはバンではトレードマークの三角に出来ず独自のものが付いている。セダンでさえ現存の少ないベレルのバンに現存車両はあるだろうか。
$1959PORSCHE356Aのブログ-バン(1)

●1963年10月 いすゞベレル・エキスプレス 専用カタログ (縦27×横25cm・8頁)
セダンと同様にフロントグリル変更
$1959PORSCHE356Aのブログ-バン(2)

●1964年10月 いすゞベレル・エキスプレス 専用カタログ (縦27×横25cm・8頁)
セダンと同様にフロントグリルに、「ISUZU」の文字が入った。
$1959PORSCHE356Aのブログ-バン(3)



★オマケ(その1): モデルペット 1/42スケール 1962年いすゞベレル2000デラックス
旭玩具製作所、1962年8月発売。ダイキャスト製。
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★オマケ(その2): 大盛屋 1/40スケール 1962年いすゞベレル2000デラックス
1962年7月発売。アンチモニー製。チェリカフェニックスシリーズ14番。大盛屋からはフリクションシリーズ19番として一回り小ぶりの1/50スケールでもリリースされた(1980年頃にカドー玩具から復刻品も出ている)。
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★オマケ(その3): バンダイ 1/18スケール 1962年いすゞベレル2000デラックス
1962年4月発売。当時定価:全国売価330円。パッケージには長嶋茂雄氏が印刷され、ベレルのミニ・カタログが封入されて実車発売と同時期にリリースされた製品。全長25.5cm。
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★オマケ(その4): バンダイ 1/18スケール 1962年いすゞベレル・タクシー
1964年発売。当時定価: 都内720円・全国売価760円。オマケ3のタクシー仕様。リモコン操作で前後左右に可動。全長25.5cm。
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$1959PORSCHE356Aのブログ-タクシー(2)


★オマケ(その5): イチコー(一宏工業) 1/20スケール1962年いすゞベレル2000デラックス
1962年10月発売。当時定価: 都内240円・全国売価260円。全長23cm。
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★オマケ(その6): 三共ポリマー 1/30スケール1962年いすゞベレル2000デラックス プラモデル
1962年発売。当時定価300円。全長15cm。「プラモデル」はマルサン商店が商標登録していたため、パッケージには「オールプラモバイルキット」と記載。画像はほぼ素組み。オレンジの部分がグリーンの成形色のバリエーションあり。1960年代に優れたカーモデルキットを多数輩出した三共初期の一作。
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★オマケ(その7): 三和模型 1/38スケール 1962年いすゞベレル2000デラックス プラモデル
1962年10月発売。当時定価100円。全長12cm。三和模型キットNo.248番。
$1959PORSCHE356Aのブログ-三和模型


★オマケ(その8): 緑商会1/70スケール程度 1962年いすゞベレル2000デラックス プラモデル
トミカサイズより小さ目の小スケールプラモ。当時定価は30円程度?小さいながら三角テールなど一応ベレルには見える出来。全長6.5cm。
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★オマケ(その9): 国産名車 1/43スケール 1963年いすゞベレル2000デラックス
定価1790円。これは最近の書店売り国産名車シリーズの1台。プロポーションは良くないが、当時物では出ていない63年秋マイナーチェンジ後の1964年型をモデル化しているところが貴重。
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★オマケ(その10): 日本交通株式会社 目黒営業所で稼働中のベレルタクシー写真
いすゞ広報誌1962年より貴重な稼働中のベレルタクシーの写真と取材記事。タクシーに使われたベレル・ディーゼルは振動や騒音が酷かったという話もあるが、これはいすゞの広報誌なので当然ながら悪いことは一つも書かれていない。
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