★1954年 東京都交通局5500形路面電車 PCCカー ~ 鉄道車輛カタログ棚から 003 | ポルシェ356Aカレラ

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東京都交通局5500形電車は、東京都交通局の路面電車車両。1954年(昭和29年)5月の営業運転開始当初は「防振防音電車」と公式に呼ばれていたが、車両設計のベースとなったアメリカの団体名「Electric Railway Presidents’ Conference Committee(ERPCC)」から一般的には「PCCカー」と呼ばれた。
PCCカーとは快速・快適・無音・経済の4つのポイントを高次元で満たすことを目的として開発された車両。独特な流線型の車体と低騒音・高加速の高性能を誇り都電の花形車両となった。
7両製造された5500形のうち純正のPCCカーはトップナンバーの5501の1両のみ。しかし、5501はその先進的なメカニズムが災いして故障も多く、自動車のような足踏み式ペダルなど特殊な操作方法が都交通局の都電乗務員からは不評で増備車ではPCCカーのライセンスを使用しなかった。アクセルペダルとブレーキペダルのある運転席は日常的に電車を運転することのない自動車免許しか持たないような一般人からみると唯一簡単に運転が出来そうな路面電車に見えるのだが。

★それまでの緑系塗装ではなくクリーム色に赤帯の1959年(昭和34年)からは都バスにも採用されて広く都民に親しまれた新塗装をいち早く1954年に初めて採用したのも5500形であった。
純正PCCカーである5501は下周りすべてをスカートで覆い窓周りは補強帯の露出しないノーヘッダー構造により数ある都電の形式中で最もスマートで美しい外観を持った車両であり、それは現在の目で見ても非常に魅力的でもあり古臭くも感じられない。一般的なピューゲルでなくパンタグラフにより集電をおこなっていたのも特徴。

★5500形は幅広かつ全長の長い都電としては大型の車体であったため運用可能路路線が限られてしまい、都内有数の繁華街である銀座を経由する1系統(品川駅前-三田-銀座四丁目-日本橋-須田町-上野駅前)のみで運用された。
1954年(昭和29年)5月から1系統廃止の1967年(昭和42年)12月10日まで運行され、その後は廃車となった。13年余りの短い生涯であった。
廃止となった1967年の12月というと私は小2の2学期でちょうど東大病院に入院していた頃なのだけれど、銀座松屋や先日惜しくも閉店した銀座松坂屋などのデパートには子供の頃によく両親に連れられて行ったので、あるいは5501を目では見ていたのに幼すぎて何も解らなかった可能性も高い。まだ3歳だった1962年から東京モーターショーに連れて行ってもらっていた自動車については、買い物帰りに乗るタクシーの車種について両親に「今日はクラウンに乗りたい」「今日はグロリアに乗りたい」などとリクエストしていた覚えがあるのだが、路面電車の形式となると幼い私にはまるで判らなかった。

★都電1系統廃止後の5501は上野公園にて保存・展示されていたが、屋根もなしの屋外展示で塗装の塗り替えなどのメンテも行われなかったため劣化が進み、1系統廃止から22年後の1989年(平成元年)に上野公園から荒川電車営業所に移送されて1991年(平成3年)にいったん修復を行った。しかし、その後もいたずらに歳月が経過し交通局の倉庫代わりとなって吊り手などの部品を鉄道愛好者向けに売却、荒川車庫の片隅に雨ざらしで放置されて車体の劣化が相当に進んでいたが、近年になって東京都交通局で再度修復の上、荒川車庫内に専用スペースを設けて静態保存することとなった。荒川車庫内から2007年(平成9年)3月に搬送され、車体を更に修復の上、同年4月に荒川車庫横の展示用空き地に移動、同年5月26日より「都電おもいで広場」として7500形7504号とともに現在も土日祝日および振替休日のみ午前10時より午後4時まで一般公開されている。(問い合わせ先: 東京都交通局荒川電車営業所)


【主要スペック】 1954年 東京都交通局 5501 P.C.C.カー
全長14300mm・全幅2440mm・全高3873.5mm・自重16.5t・全金属製低床ボギー電動客車・制御電源32V・主電動機300V,55HP×4・台車型式B-3カルダン軸駆動方式・出入口:自動ドア・座席:ロングシート40名,立席56名(計96名)・軌間1372mm・最高速度60km/h


●1954年 東京都交通局 PCCカー5501 車輛カタログ(A4判・32頁)
鉄道車輛カタログには復刻品が多いが、これにも復刻版があるらしい。都電専門研究家の方に御教示戴いたところではオリジナルと復刻を見分けるポイントは製造会社名の印字だそうで、復刻版では現在の社名に改められているのが、オリジナルでは当然ながら当時の社名が印字されているそうだ。私の手許のカタログ棚にあった1冊は最近印刷された復刻版とは考えにくい傷みや経年劣化もあり社名の印字も昔のままなので(5501の車体を製造したナニワ工機は現在はアルナ車両であるなど)、幸いにして1954年のオリジナルのようだ。
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スペック
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裏表紙に印字された旧社名
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★3連休最終日の2013年7月15日(海の日)は久々に都電荒川車庫横の「都電おもいで広場」に5501PCCカーを見にいってきました。広場で展示されている5501と7504の車内は夏季はエアコンが入っているので、シートも撤去されずにある7504の方は車内で涼んでいる家族連れが数組。広場横の車庫にはイベント用貸切車?9002が旗日なので日の丸を付けて止まっていました。私が何より驚いたのは9002の横に止まっていたやたらと地上高の高い古びたワンボックス車両。交通局で尋ねたら何でも職員が通勤に使っているクルマだとのこと。私如きの乏しい自動車知識では車名すら判らず謎は深まるばかり。1960年デビューの日野コンマースとどことなく似ていますが、左ハンドルのようだったので日本車でないことは間違いなさそうです。

都電おもいで広場の5501
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5501の運転席にはPCCカー特有の電車の運転方法を知らなくても自動車が運転出来れば簡単に動かせそうなアクセルとブレーキ
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5501前に設置されたPCCカーの解説
$1959PORSCHE356Aのブログ-展示解説板
5501車内に展示されている1系統銀座松屋前を走行中の現役時代の5501の写真
後方にハチマキグロリアと130セドリックのタクシーが写っているので、撮影は1966年ないし1系統が廃止された1967年でしょう。
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5501を挟んで左の荒川車庫内に9002、右には7504
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9002と謎のワンボックス。
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謎のワンボックス車のアップ。車種は何でしょう?
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タモリのレールフェチは有名ですが、私も鉄道のレールを見ると心トキメキます♪ 
鉄道模型のレイアウトやジオラマを創りたい衝動に駆られます。トキメキながら久々に乗った荒川線の車窓から撮った写真。特にこんな軽便のように草むしたレールや急なS字カーブなどがツボです。草むしたレールは東急世田谷線でも見られますね。
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★オマケ: 1966年 都電ニュース
赤字で経営が行き詰っていた時代のニュース映像。懐かしいクルマも沢山出てきます。