★1960年(昭和35年)5月28日、東洋工業(現マツダ)初の乗用車「マツダR360クーペ」が発売された。
R360クーペは新技術の採用や量産化によって製造効率を徹底的に高め、4速マニュアル(KRBB型)30万円、2速オートマ(KRBC型)32万円という同時期のスバル360よりも10万円近くも安い価格で発売された。発売前の5月20日までに4,500台の大量受注を記録し、1960年8月には月販2,000台、同年12月には月販4,090台を達成した。発売された1960年のR360の生産台数23,417台は、当時の軽乗用車のシェア64.8％に達する大ヒットとなった。実に1960年の軽乗用車の3分の2はR360クーペだったのである。
★マツダR360クーペ はスバル360のように大人4人が乗れることは目指さず、大人2人＋小さな子供2人の2＋2とした潔さによりシンプルかつ美しいデザインと低価格を実現し、日本人のマイカー所有の夢を叶えた。
1950年代前半より東洋工業の数々のオート三輪や小型トラック「ロンパー」のデザインを手がけたインダストリアル・デザイナー小杉二郎氏(1915–1981)によるR360のデザインはキュートな魅力に溢れ、細部に至るまで完成されたデザインは半世紀以上を経た現在の目で見てもけっして古くはない。R360には1967年(昭和42年)に東洋工業が発売した国産初のロータリー車コスモ・スポーツとのデザイン的な近似も感じられる。
★マツダR360クーペ は価格とデザインのみならず、国産量産車としては初めて採用されたオートマ(岡村製作所製トルコン)や軽乗用車初の4サイクルでマグネシウム合金を多用したエンジン、モノコックボディ・軽合金ボンネット・アクリル製のサイドおよびリアウインドウの採用による同時期のスバル360よりも軽い車重による低燃費といったセールス・ポイントもあった。
発売翌年の1961年(昭和36年)2月にスライド式だったサイドウインドウを三角窓と巻き上げ式に変更しツートンカラーと白タイヤにメッキパーツを増やしたデラックス・グレードを追加発売した後は目立つ変更もないまま1966年(昭和41年)に生産を終えた。なお、手動スロットル＋ブレーキを装備した日本初の軽の身障者用も早い時期から生産され、身障者用のみは1969年(昭和44年)まで生産が継続された。R360クーペの生涯の生産台数65737台のうちの大部分はマツダ自身が1962年(昭和37年)に発売したキャロル360の登場前後までに販売され、キャロル登場後のR360クーペは細々と生産が継続された。
【主要スペック】
全長2980 mm・全幅1290 mm・全高1290 mm・ホイールベース1760 mm・車重380kg・駆動方式RR・強制空冷 V型2気筒OHV 4ストローク356 cc・最高出力16 ps/5300 rpm・最大トルク2.2 kgm/4000 rpm・最高速90km/h/・燃費32km/L・販売価格MT30万円/AT32万円
★マツダR360クーペ は上記の三角窓とデラックスグレードの追加以外の目立つ変更はされなかったにもかかわらず、カタログは本カタログだけで17種類、簡易カタログも含めると相当な種類が発行されており、今回は資料性を考慮して多数あるR360カタログの表紙画像を可能な限り掲載することとしたい。
なお、R360クーペのカタログの大半には発行年月等の印字がない上に上記の通り車両自体には殆ど変更がなかったため発行時期の特定が難しいものが多い。
●1960年5月発行 マツダR360クーペ ポストカード（2種類）
●1960年5月 新車発表会案内状 (定形郵便サイズ・3つ折)
●本カタログ【1】1960年5月発行 デビュー版 （10インチレコード近似サイズ・12頁）
●本カタログ【2】1960年発行 （A4判・12頁）
●本カタログ【3】1960年発行 （Ａ4判・12頁）
●本カタログ【4】1961年2月発行 マニュアル専用（Ａ4判・8頁）
●本カタログ【5】1961年2月発行 トルコン専用（Ａ4判・8頁）
●本カタログ【6】1961年2月発行 デラックス専用（Ａ4判・12頁）
●本カタログ【7】発行年月不明 スタンダード＆デラックス（Ａ4判・12頁）
●本カタログ【8】発行年月不明 スタンダード＆デラックス（Ａ4判・12頁）
●本カタログ【9】発行年月不明 マニュアル専用（Ａ4判・10頁）
●本カタログ【10】発行年月不明 トルコン専用（Ａ4判・10頁）
由美かおるさんの表紙と言われるカタログだが、1950年生まれの由美さんは当時12歳前後のはずなので別人ではないだろうか。
●本カタログ【11】発行年月不明 デラックス専用（Ａ4判・12頁）
※中頁から： 広島市内を走るＲ360クーペ デラックス
●本カタログ【12】発行年月不明 マニュアル専用（Ａ4判・10頁）
●本カタログ【13】発行年月不明 トルコン専用（Ａ4判・10頁）
●本カタログ【14】発行年月不明 デラックス専用（Ａ4判・14頁）
※中頁から： 家族とマイカー「クーペ デラックス」
●本カタログ【15】1963年5月発行 スタンダード専用（Ａ4判・8頁）
上位車種マツダキャロルのデビューの影響かデラックスは廃止となっている。
●本カタログ【16】1964年10月発行 スタンダード専用（Ａ4判・8頁）
●本カタログ【17】1965年11月発行 スタンダード専用（EPレコード近似サイズ・6つ折）
R360最後のカタログはホチキス留めではない折カタログとなってしまった。
●身障者用カタログ 発行年月不明 （Ａ4判・1枚物）
●輸出向け英文カタログ 1960年発行（Ａ4判・12頁）
輸出向けカタログは当時のメーカー各社で申し合わせたように表紙には和装の女性。
●簡易カタログ【1】1960年5月発行 デビュー時（Ａ5判・3つ折）
●簡易カタログ【2】1960年発行 4人家族とクーペ（Ａ5判・3つ折）
●簡易カタログ【3】1960年10月東京モーターショー配布用（EPレコード近似サイズ・8頁）
●簡易カタログ【4】発行年月不明 文化住宅前のデラックス（A5判・3つ折）
●簡易カタログ【5】1961年10月東京モーターショー配布用（EPレコード近似サイズ・4つ折）
●簡易カタログ【6】発行年月不明 デラックスとスタンダードのランデブー（A5判・3つ折）
●簡易カタログ【7】発行年月不明 横断歩道と新色アルペンホワイト（A5判・3つ折）
●簡易カタログ【8】発行年月不明 あれこれ迷ったがやっぱりマツダクーペ（A5判・3つ折）
●簡易カタログ【9】1963年5月発行 スタンダード専用（A5判・3つ折）
●簡易カタログ【10】1963年11月発行 スタンダード専用（A5判縦・3つ折）
★オマケ（その１）：大盛屋フリクション 1/35スケール マツダR360クーペ
デラックス風のツートンカラーだがサイドウインドは初期のスライド式をモデルにしている。
★オマケ（その２）：萬代屋(現バンダイ)製 1/17スケール
マツダR360クーペ 1960年型(マルーン)と3角窓の付いた1961年型(淡青)
★オマケ（その３）：大滝製作所(オータキ) 1/24スケール程度 マツダR360クーペ プラモデル
当時定価：都内180円・地方210円
※初版・・・・・モーターまでR360クーペの描かれた専用箱に入っている。
※再販(上）・再々版(下)
★オマケ（その４）：東芝音楽工業JPO1073「森山加代子ヒット・パレード」(10インチレコード)
洋楽POPSカバー集。R360クーペが登場するレコードジャケットはこれのみ？
★オマケ（その５）：1960年マツダR360クーペ TVコマーシャル
★オマケ（その６）：1961年マツダR360クーペ TVコマーシャル