★1958年スバル360 初期のてんとう虫　～自動車カタログ棚から 054

★日本の自動車史に永遠に残るであろう名車「スバル360」を富士重工業が発表したのは、今を遡ること54年前の1958年(昭和33年)3月3日のこと。その日の正午過ぎに当時は東京・丸の内にあった富士重工業の本社で記者発表会が行われた。スバル360は空冷2気筒２ストローク360㏄エンジンをリアに置いた大人4人乗り16馬力で車両重量385kg、サイズは全長3ｍ/全幅1.3mの当時の規格による軽自動車でデザインはインダストリアル・デザイナー佐々木達三氏(1906－1998)によるもの。

★スバル360が名車たる所以 については、自動車専門誌CGの初代編集長小林彰太郎氏が次の通り簡潔に記されているので御紹介したい。
「1950年代に登場した日本車の中で世界に誇れる車が1車のみ存在する。軽自動車のスバル360である。それは元中島航空機の技術者たちが航空機設計とまったく同水準の、重量/スペースに関する細心の神経をもって設計したもので、これほど小さく軽量なボディに、大人4人が楽に乗れ、快適でソフトな乗り心地を実現できたクルマは、自動車史上空前にして絶後だろう。一切の無駄を省いた合理的なスタイルも魅力的であり、時代を超えて世界に誇れる日本車である。」

★スバル360の発売当初の価格 は42万5000円。大卒初任給1万3000円程度の時代に月収32ヵ月分程と高価で360CCの軽自動車にもかかわらず当初は庶民には高嶺の花だった。
スバル360が爆発的に売れたのは1960年代、高度経済成長期に入って日本人の所得が飛躍的に増えてからのこと。そのため、所謂、デメキンと言われるスバル360の発売から2～3年までの初期のクルマは生産台数が少なく、また現存車両も少ない。デメキンの中でもフロントバンパーが左右2分割の発売から1年半程の期間だけに生産販売された車両は更に稀少な存在。
スバル360は1970年(昭和45年)5月まで12年余りに亘り39万2,000台も生産された長寿車だったため、改良や年式変更毎にカタログも随時更新されている。その中で今回はスバル360のフロント2分割バンパー時代の初期モデルを御紹介。

【主要スペック】　1958年スバル360　(K111型)
全長2990mm・全幅1300mm・全高1380mm・ホイールベース1800mm・車両重量385kg・空冷直列2気筒２ストローク356cc・最高出力16ps/4500rpm・最大トルク3.0kgm/3000rpm・4人乗り・最高速83km/h・販売価格42万5000円

●1958年(昭和33年) 5月発行　スバル360増加試作型本カタログ
(販売期間1958年5月～6月・販売台数50台)
僅か50台が販売されたのみの増加試作型と言われるスバル360の最初のカタログ。A4判カラー8頁。表紙の女性モデルは女優の馬渕晴子さん(1936年11月2日－2012年10月3日)。馬渕さん21歳の時。中頁には和服姿の写真もあり、半世紀以上を経てさすがに時代を感じさせるものがある。
なお、増加試作型の外観上の大きな識別点は右側後方の吸気用エアダクトグリルが存在しないこと。