徴兵制? | ロンドンつれづれ

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イギリスでは7月4日に総選挙が予定されているが、現政権である保守党は負けるだろう、という意見が多い。

 

現職の首相、インド系の大富豪のリシ・スナーク氏の人気がないというのもある。ついこの間も、難民をルワンダに送り付けるというRwanda Billを通して、EUからも人権についてどう考えているのか批判されたばかりだ。(しかもかなりお金がかかる)

 

なのに、スナーク氏、本日「保守党が勝ったら、18歳以上の国民の徴兵制を取り入れる」と公約したのである。選挙に向けて、これは逆効果ではないか…と思うのだが。

 

 

18歳以上、何歳までの国民に義務が発生するのか、BBCの記事でははっきりしない。男性だけなのか、女性も含めるのか、それもはっきりしないが、多くの国民にとって、大変に影響の大きな政策を、”I will..." という単数を主語にして彼は話しているが、保守党の議員すべての賛同を得ているのだろうか?(しかも、かなりお金がかかるらしい)

 

徴兵を行うことで、若い人の間に”national spirit"を醸成することができる、と理由を述べているが、およそ英国人の気質に「国家に何かを押し付けられて強制される」ことを嫌うという傾向が強いこと(優秀な人材ほど)を、彼はよく理解していないように見える。

 

ある程度の教育を受けた人々の間で声高に「愛国心」などを話せば、ほぼ「レイシスト」と同じぐらい用心されるのが英国である。 それほど、民主主義や個人の権利を大事にする国民性がある。 

 

夫など「ファシストの考えだね。いったいどの戦争を想定してこんなことをするんだ?」と早速怒っていた。 我が家の次男は33歳である。 保守党が勝ったら、徴兵に呼び出される可能性はあるのだ。

 

1年のコンパルソリー兵役の他に、チョイスとして、月に1回の週末、あるいは年に25日をボランティアとして「コミュニティワーク」にささげること、という選択肢はあるようだが、これまでコミュニティワークを強制されるのは、軽犯罪を犯した人だけであった。

 

できれば怠けたい、仕事も手抜きばっかり、という若いイギリス人に徴兵制を課してしゃんとさせる、という話はこれまでもジョークのように中高年の間で話題になってはいたが、そして、コミュニティワークは確かに若い人たちに地域への愛着心を高めるかもしれないが…。 

 

実際、英国が大きな戦争に向かうことが分かっていて、国民が一丸となって戦う必要性がある、というならまだしも、そんな未来が今のところ見えないのに徴兵制を戻すというのは、かなり乱暴な話ではある。夫のように、「いったい、政府はどの戦争を想定しているんだ?」となるだろう。きな臭い話である。

 

 

それを選挙公約にして保守党が勝つようなら、私はもうイギリスに住んでいることすら考え直すかもしれない…。 これはトランプに投票して勝たせるアメリカに住む気が全くしないのと、同じ理由である。(もっともバイデンにもガッカリしているが)

 

 

Conservatives plan to bring back mandatory National Service - BBC News