FaOI, 印象に残った演技 | ロンドンつれづれ

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CS朝日で、FaOI幕張公演を見た。

 





今回は歌手の方たちも歌唱力が高くて、音が外れてこちらの気が散る、と言ったことがなかったことは良かった。

 

現役の選手だけでなく、もう競技生活を引退したスケーターさんたちも、ストイックに練習を積んでいる人が多くて見ごたえのある演技が多かった。

 

その中でも特に印象に残った演技がいくつかあった。

 

まず、欧州選手権チャンピオン、アダム・シャオイムファ選手の競技プロ。そもそも大好きなプロなのだが、狭くて暗いアイスショーという環境の中で、クワドジャンプもみんな競技プロと同じようにやろうとしていたのには驚いた。


彼は、競技スケーターの中で、私が今一番面白いと思って見ている選手である。 ジャンプの出来にはばらつきがあって、競技会によってハラハラすることもあるが、ジャンプだけではない芸術性の高い演技を見せてくれるからだ。

 

 

そして出てきた羽生結弦氏。彼の演技には裏切られることはまずない。ひときわ大きな声援が上がる。 暗闇の中、白い衣装が浮かび上がる。もちろん、ダニーボーイ、氷の上には迷彩柄のようなパターンが浮かび、それは戦場に向かう戦士たちの軍服のようにも見える。

 

前にもこのブログで書いたが、「ダニー・ボーイ」はアイルランド民謡に歌詞をつけ、第一次大戦直前の1913年に発表されたもの。 

 

歌詞では、出兵する子供を想う母親の切ない心境が描写されている。歌詞冒頭の「バグパイプ」は兵の召集を意味している。

 

O Danny boy, the pipes, (ああ、私のダニーよ)
the pipes are calling (バグパイプが呼んでいるよ…)
From glen to glen (谷から谷へ)
and down the mountainside (そして山の斜面を降りて)

The summer's gone (夏はもう過ぎて)
and all the roses falling (バラも枯れてしまった)
'Tis you, 'tis you (あなたは、ああ、あなたは)
must go and I must bide. (行ってしまう…}

 

But come ye back (でも、必ず戻ってきて)
when summer's in the meadow (夏の草原に)
Or when the valley's hushed (白い雪に)
and white with snow (静かに沈む谷に)

'Tis I'll be here (私はここにいるから)
in sunshine or in shadow (太陽の中に、あるいは影の中に)
O Danny boy, O Danny boy, (ダニー坊や、私のダニー)
I love you so. (愛しているよ)

 

But if ye come (でももしあなたが帰ってきて)
and all the flowers are dying (花がみんな枯れていても)
If I am dead, (私がもうすでに)
as dead I well may be,(亡くなっていたとしても)

You'll come and find (きっと見つけて)
the place where I am lying(私が眠る場所を)
And kneel and say(そしてひざまづいて)
an Ave there for me.(お別れの言葉を言って)

 

And I shall hear(私には聞こえるでしょう)
though soft, your tread above me (あなたがどんなに静かに歩いても)
And all my grave (私はお墓の中で)
shall warmer, sweeter be (暖かく、やさしい気持ちになる)

For you will bend(あなたはしゃがみこみ)
and tell me that you love me (私を愛している、と言ってくれるでしょうから)
And I will sleep in peace(そして私は静かな気持ちで眠るのです)
until you come to me.(あなたが私の元にくるまで…)


 

もう何年も続くロシアによるウクライナ侵攻も、なんら良い兆しが見えない。パレスチナ問題では、アメリカはイスラエルを支援し、国連やICJによるネタニエフ大統領批判にも反対している。 ウクライナでもガザでも、多くの無実の市民が殺され、子どもたちが命を落としたり、手足を失ったり、孤児になったりしている。

 

人類は何度大きな戦争をすれば学ぶのだろうか。たとえ自分が生き残っても、大切な人が殺されてしまい、自分一人がこの世に残されたら、人は幸せになれるのだろうか。否である。

 

スケーターの中には、ロシア人もウクライナ人もいる。多国籍の人たちが集まってアイスショーを作る時、国境を超えた友情で彼らは結ばれているはずだ。

 

今回の羽生さんの「ダニー・ボーイ」には、静かな哀しみと反戦の気持ちが込められていたように感じた。

 





青木祐奈選手の、Glimpse of Us, とても良かった。 彼女はこれまで怪我に泣く時間が長かったけれど、昨年の秋からとてもマチュアな大人の表現力が光る演技を見せてくれる場面が多い。引退を伸ばしたと言うが、来季が楽しみ。この日はジャンプがどうもうまくいかない感じだったが、アラジンのお姫様もとても柔らかくて良かった。

 

 

宮原知子さんは、いつでも良い。競技生活を引退しても、練習を全く怠っていないことがわかる。それどころか、特に最近ますます良いと思う。 アーティストさんの生歌での演技もすごく良かったけれども、Minor Blueという曲で滑った宮原さんには惹き付けられた。 ミニマルな装飾の衣装を着て、動きと表現だけで魅せていた。

 

Ms. Perfectから、Ms Artistに変貌した、というナレーションがあったが、選手としても、最後の3-4年は表現力に著しい成長がみられて、プロになってからはますます洗練された演技になってきている。これこそが、芸術としての作品と言えるレベルの演技だった。

 

草太君のモーツアルトも良かった。「僕こそ音楽」を、城田優さんが上手に歌い上げて、草太くんが情感を込めて滑った。夫が、城田さんの歌を褒めていたなあ。ミュージカルとフィギュアスケートは音と動きに親和性があるのかも。

 

田中刑事君の2番目のプログラム、HEROはなかなか良かった。彼は昔から、競技会よりもアイスショーの方が伸び伸びと良い演技をする。ガンダムの演技も良かった。夫は彼の「エバンゲリオン」や、「ジョジョの不思議な冒険」のプログラムが好き。アニメ好きの刑事君の良さを引き出すのかもしれない。

 

そして、アダムのSenses、やはり今一番面白いスケーターだと思う。彼は、ブノア・リショー氏の奇妙な振り付けのプログラムをきちんと消化し、自分のものにして踊り切ることができる。あとは、ジャンプさえ安定すれば、オリンピックで優勝することだって不可能ではない選手だと思うのだ。つまり、TESとPCSをどちらも高いスコアで揃えることができるはずなのだ。ジャッジ陣に「思惑」さえなければ。 

 

彼のプログラムを見た後は、短編映画を見た後のような気持がするのだが、私はこういうスケーターさんが好きである。スケーターの個性が作品にはっきりと出ていて、楽曲や振り付けのストーリーを伝える力がある、そんなスケーターさんの数は多くはない。

 

 

さて、そして大トリのコラボでは羽生さんがTM.Revolutionの西川さんと「機動戦士ガンダムSEED」の挿入歌「ミーティア」を共演。 誰の振り付けでしょう、なかなかユニーク。 やはり、戦いにでていくガンダムのイメージを強く想起させる動き。 羽生さんのすっきりした体躯を見せるのには、衣装の肩のところのフリルはない方がいいのに、と思ったのだが、ガンダムの翼を表しているそうですね。





西川さんも歌唱力があるので、良く通る声で勇壮なテーマ曲を歌い上げ、羽生さんが一つ一つの音符を指先、頭の動きなどで丁寧に表現しつくしていく。彼は簡単そうにやっているけれども、一つ一つの音を体の動きでなぞりながら、同時に大きなテーマを表現するって、誰にでもできることじゃない。ツイズルのスピードと言ったら…。

 

静と動のけじめというか、動きのメリハリが、やっぱりレベル違いです。スケートのコントロールが100%以上できているからこその緩急の表現なんですね。

 

今回のFaOIでは、羽生さんが二つのプログラムを滑って、会場で見ることのできた皆さんはラッキーでした。「ダニー・ボーイ」と「ミーティア」というタイプの違う二つのプログラムを見られて、良かったですね!

 

昨年私が見に行ったFaOIでは、羽生さんのプロは一つしか見ることができなかった。「あの夏へ」を切望していたんですが、その日は「阿修羅ちゃん」でした。あの時、両方滑ってくれていたら、思い残すことは何もなかったんだがな~。

 

羽生さん、額にまだ絆創膏は貼っていますが、フィナーレでのキレの良い動きを見ていると、おそらくもう傷はあまり気にならないぐらいのアドレナリンで楽しんでいるように見えました。

 

他のスケーターさんたち、そして田中刑事君や、アーティストさんたちと楽しそうにコミュニケーションをとっている様子が見られて、やっぱり羽生さんはFaOIが好きなんじゃないかな、という感想を持ちました。

 

ソロショーを何から何まで自分で責任もって行うのに比べれば、FaOIは、羽生さんも気楽に参加することができるでしょうし、ファンはたとえ1本でも2本でも羽生さんの新しいプロを見ることができますので、やっぱりこういったショーに参加してくれることも嬉しい、そういう思いです。

 

航空運賃の高騰を思えば、簡単に日本に戻ってアイスショーを見に行くことは、私のような年金生活者にはできませんが、FaOIも、テレビ放映をしてくれたので(しかもライブ!)、我が家でも見ることができました。

 

ありがたいことです。

 

 

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5月14日の大人スケーターのための国際試合、ドイツはオーバーズドルフ(ネーベルホルン杯が開催されているリンクです)への出場をチャレンジとする、チャリティ・チャレンジを行いました。応援しているのは、東京の子ども食堂、「ピノッキオ」さんです。

 

 

 

ピノッキオの主催をしているのは、元早稲田大学の川名はつ子教授、里親さんを支援する会を長年サポートしてきた方。 

 

ピノッキオでは一回につき、70食以上を子どもたちに無料で提供しています。需要が増えてきたのでキッチンの改装を行うということでその費用をクラウドファンディングで募っています。

 

(厨房で調理手伝い中)

 

 

 

以下のサイトに飛んで、ご支援ください!

 

なお、今回のクラファンの寄付には17%ほどの手数料がかかるようです。例えば、3000円の寄付を選んだ場合、500円ほどが手数料として加算されるようです。そのつもりで金額を選んでください。

 

その分、ピノッキオの方で手数料として寄付から引かれることがないのでピノッキオは助かるのですが、皆さんのご負担が17%増えてしまうようです。よろしくお願いいたします。

 

笑顔はじけるみんなの居場所に!『子ども食堂』拡張工事にご支援をお願いいたします。 - CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (camp-fire.jp)

 

これまで78人の方から、699,000円のご支援をいただいています! 応援、ご支援、ありがとうございます! 締め切りまで、あと6日です。まだ目標額にはかなり足りません…。

 

海外からの寄付も受け付けられるはずですので、日本以外にお住まいの方も、奮ってご支援ください。

 

また、クラファンはどうも、という方は、ピノッキオの郵便貯金の口座に直接お振込みください。前回も、郵貯の方に寄付をくださった方が、かなりの数いらっしゃいました。

 

以下のサイトに、振込先が載っています。

 

一般社団法人ピノッキオとは (studio.site)