テレビ朝日さんが中継をしてくれたので、FoIの後半のプログラムを観ることができた。
オープニングとフィナーレの群舞の部分のプログラム、そして羽生選手を含め、多くのスケーターさんの新たなプロを観ることができて、とても良かった。宮原知子さんやジェイソン・ブラウン選手など、新たな選手の参加も楽しかった。彼の繋ぎ部分の繊細な体の動きなども改めて観ることができた。 久しぶりにカッペリーニ・ラノッティ組を観られたのも楽しかった。
プロに転向した宮原さんも、荒川静香さんと同様、引退した後も美しい滑りの技術を保ち続けるような気がする。保つだけでなく、さらに進化する覚悟と努力がある人だと思うから。ゆるぎない技術力をもって、表現力をさらに自由に開放して、素晴らしいプロスケーターになる予感しかない。
それにしても、これだけ短期間に新たなプロを次から次へと頭に入れ、人々を感動させるだけの演技をして見せることは本当にすごいな、と思うのである。
夫と一緒に見たのだが、もうオープニングから羽生選手の気持ちのこめかたが群を抜いている…。いつも思うのだが、本当に与えられた振り付けをなぞるだけでなく、動きを自分のものにしたうえで、自分なりの解釈を観る側に伝えてこようとする意志がすごい。
現役選手のエキシビションプロを見ている、というよりは、バレエなど、プロのパフォーミングアーティストの芸術作品を見ているような、滑り手、踊り手のプロ意識が伝わってくる。それも、自分が何を求められているかをよく知っていて、それを提供しようとするプロ意識だ。決して自己満足の押し付けではない。 そして求められていることのさらに上を提供し、うれしい驚きを与えてくれる。
静岡の公演の前のインタビューはこちら。
「ここが夢だって思ってもらえるような滑りを僕たちもしたいと思います。僕も一生懸命滑りますし、僕の体力気力全て賭けて、ここに一つ一つ、プログラム一つ一つに気持ちをつめていきたいと思います。是非楽しみにしてください!」
「レゾン」を観たが、デヴィッド・ウイルソン氏の振り付けと言うことで、歌詞の大体の意味は伝わっているだろうが、細かい動きで歌詞を表現している部分は、日本語を解する羽生選手のアドリブというか付け加えた部分ではないかな、と思う。 骨組みを振付師に依頼したとしても、それだけでは伝え足りないディテイルを、きっと足しているのだろう。
歌詞の内容からも、孤独感の表現や葛藤と共に、自分の存在意義を問うような深いメッセージを伝えていることが見ているものにはわかる。
新妻聖子さんによるノートルダム・ド・パリで再び現れて滑った羽生選手。2012年、初めてフィンランディア杯で羽生選手を観た時のプログラムだ。さらに深い表現力と共に見せてくれたのはうれしい驚き。
白を基調にした衣装の腰の部分は回転するとスカートのように動いて美しかった。彼のプロポーションの良さが引き立ち、演技にも動きを添える衣装。 バレエと同じく、フィギュアスケートの衣装は大事な表現の一部である。
そして、新妻聖子さんの歌はさすがに圧巻。フィナーレで、彼女の美しい歌声で、You Raise Me Upからトウーランドットの「誰も寝てはならぬ」。 男性は白のシンプルなシャツに黒のリボンで現れる。 羽生選手の見事なY字のフォアスパイラル。
羽生選手、アスリートであることは確かだが、アーティストとしての矜持をもって、オーディエンスを意識したパフォーマンスができる現役の競技選手。そういう選手は稀有だ。 アイスショーはちょっと力を抜いて楽しもう、というスケーターが多い中、彼はここでも全力疾走である。集まった観客の心をがっちりと掴んで離さない。彼のファンでなかった人も、このパワーとカリスマ性に、ファンになってしまうだろう。
(追記部分)以下、FoIを観た夫の感想。
「ほら、ここでもスピンに難しいエントリーで入っている…。すべてがピタリと音に乗ってる。
PCSをますます抽象的なものにしてしまって、これからエンプティなプログラムを滑った「勝たせたい」スケーターに高い得点を与えても、ハニュウのこういう演技を見た観客は、ますますそのギャップに気が付くことになるだろうよ。
繋ぎの薄いスカスカなプログラムを滑っても高いPCSがもらえると思っているスケーターと、スコアがどうだろうとおのれの道を変わらず極めていくとうハニュウの演技の間の差はますます広がっていくだろうし、観客は馬鹿じゃない。ISU…は、恥ずかしいと思うだろうよ…。」
これに対して私は、
Hanyu will be including full transitions and difficult entries anyway, just because he can do it...., no matter whether they would be reflected in the score or not. (ハニュウは濃い繋ぎも難しいエントリーもこれからも入れていくと思うよ、だってそれができるんだから。それがスコアに反映されるされないにかかわらず…。)
Different level.....技術も表現も、スケーターとして他とは格が違う、というのは見ていればわかる。
静岡公演の楽日を最後まで盛り上げて、しっかり座長としての仕事を全うした羽生選手。 リンクを何周もしてファンに手をふる彼の顔は、充実した笑顔のように見えた。やっぱり、こうやって観客の前で滑り、フィードバックを感じることがスケーターさんには大事なんだろうなあ、
「本当に幸せでした!またファンタジーに来てください! では、せいの! ありがとうございましたッ!!!」
もし2022-2023季にも競技生活を続けるというのなら、アイスショーが終わった後はあっというまに切り替えて自己の限界に挑戦し続けるトレーニングを始めることだろう。
怪我無く健康で、自身の思う道を究めてほしい、と思う。
それにしても、日本でのアイスショーを海外のスケーターたちが楽しむのは理由がわかる。まず、広い会場の天井桟敷までいっぱいにぎっしり入った観客。 そしてどのスケーターさんにも温かい拍手の嵐。 それぞれの国の国旗を出して応援する。 演技を終わった後のスケーターたちの笑顔が本当にうれしそうだ。
会場で楽しまれた皆さん、良かったですね、そしてスケーターさんたちをサポートしつづけてくださり、ありがとうございました!
Shizuoka show 2! Let’s go! @Fantasy_on_Ice #FaOI静岡 #FaOI2022 Yuzu, Gilly & bonus Brenda. 🤍🤍🤍 pic.twitter.com/X07DXBKJuG
— Johnny Weir (@JohnnyGWeir) June 25, 2022