日本では、LGBTQの人々に対する差別に関する法案が、自民党の多くの議員の反対に合って先送りにされた。 ゲイやトランスジェンダーの人々の人権侵害にあたる発言も、国会議員から発せられ、「まだそんなレベルか」とがっかりさせられたのである。
「道徳的に認められない」「ゲイやトランスを認めれば、少子化が進む」「あちらこちらで裁判を起こされる」とはなんというあいまいで科学的根拠に乏しく、本末転倒な意見だろうか。
しかし、そういう人々がいるのは、日本だけではない。
2013年、同じようにLGBTQの人々の権利を守る法案がニュージーランドで議論されていた。
その時、モーリス・ウイリアムソン議員が、同性婚を認める法案に賛成を唱えて議会で行った演説が、「ビッグ・ゲイ・レインボー演説」と呼ばれているそうである。 日本の政治現場の現状を受けて、この2013年のウイリアムソン元議員の演説が日本で話題になっているそうです。
その内容は以下。(バズフィード・ジャパン)
「私の地元選挙区の聖職者は、「この法案が可決された日には、ゲイが猛襲してくる」と言いました。私たちはその「ゲイの猛襲」がどんな感じなのか、全く想像がつきません。それは、軍隊がパカランガ高速道路を攻めてくるようなものなのか、あるいは私たちを選挙区に閉じ込めてしまうようなガスを撒き散らすのか、分からないのです。
あるカトリックの司祭は、私が不自然な行為を支持していると言いました。一生禁欲の独身主義を誓った人がそんなこと言っているなんて、興味深いと思いました。独身の誓い…私はやったことがないから、それがなんだか全く分かりません。
さらに、私が地獄の火で永遠に焼かれると言った人もいましたが、それは大きな間違いです。私は物理学の学位を持っています。自分の体重と水分量などを熱力学の式で計算しました。地獄の火が5000度だと仮定すると、私はたったの2.1秒で灰になってしまうことになる。これでは永遠なんて言えない。そうじゃないでしょうか?
他にも、養子縁組についての嫌味な主張も聞きました。私には素晴らしい養子が3人います。私は養子を受け入れることがどれだけ良いことかよく知っていますから、そういった意見が悪意あるものであることもわかります。本当にひどいいじめですよ。私は小学生の時に、いじめっ子を怖がることをやめましたけどね。
しかし、反対意見の多くは、この法案が我々の社会にどう影響するかを心配している節度のある人たちからのものでした。私は彼らの懸念や心配を尊重するつもりです。彼らはこの法案が、自分の家族にどんな影響があるか、とても心配しているのです。
でも、そんな人々に繰り返して言わせてください。私たちはこの法案を通して、愛し合う2人の愛を、結婚というかたちで認める。ただそれだけなんです。私たちは、外国と核戦争を始めるのでも、農業を脅かすウイルスを撒き散らそうとしているのでもないんです。
私たちは、愛し合う2人の結婚を承認するだけなんです。それのどこが悪いというのか、私には全く分かりません。どうしてこれに反対するのか私には理解できません。他人がすることが気に食わない事は、誰にだってあります。でもそれはお互い様だから、別に構わないでしょう。
今この法案に反対している人に約束しましょう。水も漏らさぬ約束を。
太陽は明日も登ります。あなたのティーンエイジャーの娘さんは、なんでも分かってるような態度で反抗してくるでしょう。明日急に住宅ローンが増えることはありません。突然に皮膚病を患うこともなければ、湿疹もできないし、ベッドの中からカエルが出てくることもありません。ただいつも通りの日常が続くのです。
だから、あまり大騒ぎしないでください。この法案は、関係のある人にとっては素晴らしいものです。一方、そうでない人にとっては、いつも通りの生活が続くだけなのです。
最後に、この法案が干ばつの原因になってるというメッセージに言及させてください。私のTwitterをフォローしていたら知ってると思いますが、今朝パクランガではどしゃ降りの雨が降っていました。そこには、私たちが今までに見たことのないような、とても大きな虹「ゲイ・レインボー」がかかっていたんです。これはなにかの兆しに違いありません。あなたが信じるなら、これは確かに何かのしるしなのです...。
この法案に関係する全ての人に向けて、聖書からの引用で締め括ります。申命記(デュトロノミー)はミュージカル『キャッツ』のネコかと思っていたのだが…それは置いといて。申命記1章29節からご紹介します。
「懼(おそ)るることなかれ」。
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ユーモアの効いた素晴らしいスピーチだと思う。
日本にもこのぐらいスカッとしたことを言ってくれる政治家が現れてくれないだろうか。
2013年から8年経った今、5月21日のウイリアムソンさんのツイッターには、以下の文言があった。
So many new followers from Japan who liked my Gay Marriage speech in parliament back in 2013. What’s really interesting is several MP’s who campaigned and voted against it then, now say they would vote YES. Interesting not one MP who voted YES have said they’d now change to a NO.
— Hon. Maurice Williamson 🇳🇿🐶🐈 (@williamson_nz) May 20, 2021
「日本人のフォロワーが急に沢山増えた!私の2013年の議会での同性婚演説を気に入ってくれたようです。面白いことに、同性婚に当時、反対していた議員たちは、今では賛成している。そして、当時から賛成している人は、その意見をずっと変えていないんですよ。」
だいたい、中年すぎると人間性って、顔にでるものである。 ウイリアムソンさんは優しそうないい顔をしている。
LGBTQの人たちに「生産性がない」などと批判する日本の政治家たちの人相を見ると、ああ、人間性って本当に顔に出るんだな・・・と思うのである。
イギリスでは家庭に恵まれない子供を預かる里親さんや、特別養子縁組で親になる人たちがゲイであろうと、ゲイのカップルであろうと認められる。 大事なのは、その人たちがゲイかゲイでないかというポイントではなく、彼らが子どもを大切にできる人たちかどうか、子どもの育つに適した環境を提供できるか、そこなのである。
里親や養育親がゲイかどうかより、他人に暴力をふるう人かどうか、子どもを養うだけの経済力があるかどうかの方が重要なポイントだ。
例えば男子➡女子になったトランスジェンダーが女性トイレを使うことに抵抗がある、という一般女性の気持ちはわかる。
しかし、公衆トイレで痴漢に及ぶのは変態性のある男性が99.9999%だろう。 それよりも、以下のようにどうみても女性の姿をしたトランスの女性が男子トイレを使わされる危険の方が高いのではないか。
彼女たちに男子トイレを使え、とは私は言えない。彼女たちが犯罪のターゲットになる確率の方が高いと思うからだ。 (ちなみに私の夫は若い時、ロックバンドをやっていて細くて髪を腰のあたりまで伸ばしていた時、女性と間違えられて下品なことを通りすがりに何度も言われたので、女性の気持ちはわかると言っている…)
ゲイやトランスジェンダーの人がいる社会が当たり前になって、彼らが幸せに生きること、結婚できること、そして子どもを育てたければそれもできるような社会に日本がなってほしいと思うが、夫婦別姓すら反対する与党議員がいまだ多いことを見ると、かなり暗澹たる気持ちになるのである…。
が、黙っていては何も変わっていかない。ソーシャル・ノーム、社会規範を変えていくのは私たちひとりひとりだ。 そして社会規範が変わって行けば、マイノリティの人権を守るための法案も通りやすくなっていくものだと信じている。