ルールチェンジ | ロンドンつれづれ

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フィギュアスケートではしょっちゅうルールの変更が行われているから、スケーターさんもコレオグラファーもコーチも、最新のルールをしっかり把握しておかなくてはならないから大変だ。

 

この間、スケートの番組を見ていたら、ISUジャッジの岡部由紀子さんが今シーズンのルールチェンジを説明していて、なかなか良かった。

 

その中でステップシークエンスのルールが変わった、という説明があった。 簡単にいうと、リンクのカバレージという点で、短いサイドだったら往復、長いサイドだったら、端から端までをカバーしなくてはいけない、というルールである。それが外れて、大きくリンク全体をカバーしてとなった、ということである。 

 

昨シーズン、スケートカナダで3位に終わった宮原知子選手は、このルールにひっかかってステップシークエンスがまるまる「インヴァリッド(無効)」、つまり零点になってしまい、5.3ポイントも失うことになった。なんでも距離が少し足りなかった、という理由だそうである。 演技を見直してみても、無効になるほど距離が足りていないとは思えない。

 

スケートの選手は、プログラムを滑る時、ほぼ同じ距離を移動し、同じところでジャンプをし、同じようなスピードで滑るので、USクラッシックでOKだった振り付けがスケートカナダで無効になるというのはかなり奇妙、もしそうならそれはスケーターのせいではなく、振付師とコーチのミスと言えるだろう。 

 

この時、宮原選手サイドは表立って不服を唱えなかったが、ファンはみんな???という気持ちになり、ファンサイトではかなり問題になったのである。 日本のテクパネルがリビューしてOKを出し、アメリカのISUテクパネルがなにも問題視をしなかったステップシークエンスを、カナダの試合ではなぜ「無効」にしたのか。 そうまでして宮原選手の得点を抑える必要があったのだろう、というわけである。 私は普通、審査員の評価に対して、ほとんど文句のない人間である。だいたい、得点の出る前にほぼ、2,3点差で得点を当てるのが得意ですらあるのだ。 しかし、たまに「え???」と思うジャッジがあることも確かだ。 これは、まさに???と思った例の一つである。

 

フィギュアの採点は、ホームクッキングと言って、開催国の選手にどうしても高い得点が出がちであるが、あまりあからさまな得点操作をすると、ファンの間ではかなり話題になるのである。 ジャンプのエッジバイオレーションや回転不足など、テクパネルの一言でいくらでも操作が可能という印象をファンは持っている。しかも、ジャッジの際のスローモーションでのチェックを禁止したりして、意味がわからない。一つの試合で厳しくするなら、どの選手の回転不足も指摘するならいいが、この選手は見逃して、別の選手の回転不足はとる、というやり方だと、見ている方は納得できない。今は動画でいくらでもスローモーションにしてチェックできるから、ファンはますます納得できないのである。

 

もちろんファンにはひいきの選手がいるから、ひいきの選手が不当に扱われたと思えば、感情的になって騒ぐという面は否めない。しかし、ジャッジはプロで、ファンは素人なのだから黙っていればいい、という態度でいれば、フィギュアスケートの採点はアンフェアなイメージが強くなり、いつしかこのスポーツからファンは離れていくだろう。ファンの多くが持つ???というイメージを過小評価しない方が良いと思う。ジャッジとファンの間の採点のイメージにあまりにも乖離があることはけっしてこのスポーツにとっていいことではないだろう。

 

昨シーズンの宮原選手のステップシークエンスの無効に関しては、多くのファンが腹をたてた。宮原選手のファンでないスケートファンからも批判がでていたはずだ。 だって、誰が見てもおかしい判定だった。アイスカバレージのルールで説明されても、納得はできない判定だった。状況によっていくらでも都合よく使えるルールという感想を否めなかった。 このルールを応用しようと思えば、他にもステップシークエンスを「無効」にされるべき選手はこれまでの試合でたくさん出てきただろう。

 

だからこその、ルール改正なのだろう。宮原サイドが当時表立ってクレームをしなかったにしても、ルールの改正があったということは、スケートカナダでのあのテクニカルパネルの判断は問題だった、という結論が公にでたということである。 ファンはいたずらに怒っていたわけではないのだ。 英語のファンサイトでも、これは大変にアンフェアなジャッジであって、宮原サイドがクレームをつけることができるといい、という意見が出ていた。 

 

ステップシークエンスについてはそのレベル判定はこれまでよりも少し厳しいものになっているが、「短辺フェンスから短辺フェンスへの長さを1回、あるいは長辺フェンスから長辺フェンスへの幅を2回活用しなければならない。」という部分が2017-18年のルールでは削除されている。「リンクのほぼ全体をつかって」という緩めの表現のルールになるのである。これなら、昨シーズンの宮原選手の時のようなルールの使い方はもうできないというわけである。

 

ルール改正は、ステップシークエンスだけでなく、ジャンプやその他の部分にも及んでいる。興味がおありのかたは、こちらをどうぞ。 

http://static.isu.org/media/508716/2089-sptc-comm-goe-sov-2017-18.pdf

 

 

オリンピックに向けて、今から勝たせておきたいスケーターも各国いるだろうが、たくさん練習を積んで、ひたむきに頑張っている選手たちのためにも、それぞれの国のスケート連盟の政治的思惑をなるべくはずして、公明正大な採点をしてほしい、と心から願うのである。 いくら、アンフェアなジャッジがあとから問題になって後日ルールが改正になったとしても、選手にとってみれば終わってしまった試合は取り返しがつかないのだ。 なによりも、厳しい審査をするなら、どの選手にも同じように厳しくフェアに、ということを繰り返しお願いしたいものである。