【作品#0858】ボーン・コレクター(1999) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ボーン・コレクター(原題:The Bone Collector)

【概要】

1999年のアメリカ/カナダ合作映画
上映時間は118分

【あらすじ】

科学捜査官のリンカーン・ライムは捜査中の事故により左手の人差し指と首から上しか動かない体になってしまった。ある日、ニューヨーク市警のドナヒー巡査が貨物鉄道の線路沿いに埋められた遺体を発見する。殺人課の刑事がリンカーンに助言を求めにやって来ると、初動対応の良さからドナヒー巡査はリンカーンが解明した手がかりの元、現場に向かうことになる。

【スタッフ】

監督はフィリップ・ノイス
音楽はクレイグ・アームストロング
撮影はディーン・セムラー

【キャスト】

デンゼル・ワシントン(リンカーン・ライム)
アンジェリーナ・ジョリー(アメリア・ドナヒー)
クイーン・ラティファ(セルマ)
マイケル・ルーカー(チェイニー)
ルイス・ガスマン(エディ)

【感想】

1990年代のサスペンス映画は「羊たちの沈黙(1991)」や「セブン(1995)」といった大成功例があるため、それらの作品っぽいサスペンス映画が多数製作され、本作もその例に漏れることはないだろう。

セブン(1995)」のヒットを受けてどの映画会社も連続殺人の怪奇映画の製作を企画していた。フィリップ・ノイス監督はデヴィッド・フィンチャーの功績に匹敵することはできないことを十分に承知しながら本作の仕事を引き受けた。この事実がすべてを物語っているような気がする。もう監督する時点で腰が引けている。

「羊たちの沈黙(1991)」にしても「セブン(1995)」にしても怪奇殺人の描写を売りにはしているが、あくまでドラマの側面がしっかりしていたからヒットして評価も得たのだと思う。その点、本作も目指したところは正しかったとは思う。ただ、そのドラマ面をしっかり描けたのかと言われればそうではない。

警官として優秀だったが身体のほとんどを動かすことのできなくなったリンカーンと、身体は健康だがまだ若手の警官であるアメリア。そんな二人の関係はうまく描かれたとは言い難いし、ラストにかけてロマンス関係を示唆するところまでいくのはいかがなものか。未解決の事件なら現場検証がどれだけ大事なのかは素人でも分かる。ただ、少年課の警官が現場保存をしっかりしていたというだけで、リンカーンの目に留まり、以降はリンカーンの目となっていく。

いきなり最初の現場に向かったアメリアに対してリンカーンは何の訓練も受けていない者がいきなりやるにはかなり難しいこと(遺体の手首の切断)まで要求する。できないと言うアメリアに対してリンカーンは「やればできる」の繰り返し。気合と根性の話になっている。それが原因で二人の関係は険悪になるが、どうやら本気でお互いにぶつかり合ったことで絆が生まれた様な描かれ方になっている。そんなことは起こりえないとは思わないが、あまり納得感はない。

そんな中でこの二人の関係がより強固になる手伝いをしてくれるのがチェイニー警部である。彼は体の動かせないリンカーンと若者のアメリアに手柄を取られたくないとして彼らの邪魔をしてくる映画的な悪役に徹している。リンカーンとアメリアにとって共通の敵を登場させることで彼らを結束させるのだ。このチェイニー警部というキャラクターがいなくても物語は進められたはずだし、このキャラクターがいることで映画がものすごくチープになってしまった印象である。

そんな感じでどうも納得感のないまま二人の関係は完成されていってしまう。そしてまた本作の問題の一つは犯人である。映画の終盤になって悪役が判明して登場するのだが、終盤までに二回しか登場しなかった男である(冒頭と中盤に少しだけ)。特に伏線があったわけでもない。リンカーンの家を出入りしていた業者の男が実は犯人でしたというお話である。実は過去にリンカーンのせいで刑務所行きになってしまった男である。アメリカでの出所後の社会復帰の事情には明るくないが、命にかかわるような仕事に携わることができるのかね。そしてこの男は自分がなぜリンカーンを殺そうとしているのかまですべてセリフで説明してくれるのだ。というかちゃんと説明しなければ観客に理解させることはできなかっただろう(理解はできっても納得はできないが)。

また、映画的には看護師のセルマは殺される必要があっただろうか。殺されたチェイニーと一緒に倒れる場面があることで、映画的な悪役と一緒にされた印象もある。しかも、エピローグでは彼女の死について触れられることはない。仮にセルマが殺される展開を用意するなら、エピローグで彼女の死を悼んだり、彼女を思い出したりする場面はあっても良かったんじゃないか。この終わらせ方にしたことで、リンカーンやアメリアが冷たい人間に見えてしまう弊害もあるし、製作者側にも同様の感情を抱いてしまう。

オスカー俳優を二人も起用して、それっぽい雰囲気を醸したまま映画は進んでいくが、ドラマ面も怪奇殺人も犯人もそのどれもが中途半端である。設定だけ見れば印象に残るものではあるが、内容に関してはさっぱり記憶に残らない凡作。

【音声解説】


参加者
├フィリップ・ノイス(監督)

監督のフィリップ・ノイスによる単独の音声解説。フィリップ・ノイス監督作品の冒頭で描き続けてきたこと、主役を選ぶうえで最終的に勘を頼りにしている話、真犯人を4人の俳優で演じ分けた話、必要に応じてCGを使った話などについて話してくれる。



取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語)


【ソフト関連】

<BD>

言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├フィリップ・ノイス(監督)による音声解説
映像特典
├メイキング・ドキュメンタリー:「戦慄の裏側」
├予告編集