【作品#0852】猿の惑星(1968) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

猿の惑星(原題:Planet of the Apes)

【概要】

1968年のアメリカ映画
上映時間は112分

【あらすじ】

4人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船は地球への帰還を目指していたが、トラブルによりとある惑星の湖上に不時着してしまう。死んでしまったスチュアート以外の3人の宇宙飛行士は当てもなく彷徨っていると、原始人のような人間の群れに遭遇する。すると、その人間を捕まえようと馬に乗った猿たちが襲い掛かってくる。

【スタッフ】

監督はフランクリン・J・シャフナー
音楽はジェリー・ゴールドスミス
撮影はレオン・シャムロイ

【キャスト】

チャールトン・ヘストン(ジョージ・テイラー)
ロディ・マクドウォール(コーネリアス)
キム・ハンター(ジーラ)
ジェームズ・ホイットモア(議長)

【感想】

ピエール・ブールによる同名小説の映画化。アカデミー賞では特殊メイクを担当したジョン・チェンバースが名誉賞を受賞している(当時はメイクアップ賞はなく、設立されたのは1981年である)。ちなみに、イングリッド・バーグマンはジーラ役を断ったことを公開する発言をしている。

猿が英語を話しているんだから地球だろうなんていう野暮なツッコミはさておいて、中学生当時にテレビで見たのはいまだに記憶している。

脚本家マイケル・ウィルソンが赤狩りによって一時はハリウッドを追われた経験、当時のカウンターカルチャー、人種差別問題など多くの解釈の余地が残されている作品である。喉を怪我したことで話せなくなった主人公こそ、言いたいことがあるのに言えないという状況を示している(喉の怪我というのはややご都合主義的だが)。そして捕まったテイラーがついに放つ一言。「汚い猿め!さわるな!(Get your stinking paws off me, you damned dirty ape.)」(日本語訳は「臭い手をどけるんだ。この忌々しい猿め!」とも)。これに「人間が喋った」と驚く猿たち。迫害されてきた人たちの叫びを初めて聞いた瞬間。

それから情報統制。議長は禁断の地域に自分たち以上の文明がかつてあったことを知っているが誰にも話していない。彼らも宗教を信じているが、宗教は科学の登場によって今までと同じように信じられなくなった。宗教でがんじがらめにしておけば管理も楽である。そして、宗教という存在を理由に管理できていたものもできなくなってしまう。また同時に議長はテイラーによってすべてバラされたことを受けて、「いつかこの日が来ると思っていた」と言っている。いつまでも長老である自分たちの時代が続くわけではないと思っていたのだ。そう思いながらも情報統制をするしかなく、こうなる日を待つしかないのもこのある意味人間の象徴ともいえる議長がいかに無策であるかを思わせる。

そして喋れる人間が現れると人体実験のモデルにされてしまう。テイラーとともに捕まった二人は脳を手術され言葉を失ってしまった。都合の悪い存在は捕まえて言葉を発しない状態にすればいいという、まさにマイケル・ウィルソンら多くの映画人が経験した赤狩りを思わせる。

究極の行って帰ってくる話。地球を飛び立つ場面こそないが、テイラーら4人の宇宙飛行士は地球を宇宙船で出発し、地球に戻る予定だった。ところが、どこか別の惑星に着陸したと思っていた。そしたら、そこが地球でしたというオチ。しかも偶然にもアメリカの象徴でもある自由の女神のある場所。ただ、このオチにしたことで、結局はアメリカが中心地であると言わんばかりになってしまったように思う。これを見たみんなが分かる場所という意味合いにおいて条件を満たす場所には十分だと思うが。

テイラーは自分の生きていた時代以降に何らかの理由で人類が退化して、猿やオランウータンなどの類人猿が進化したことを知る。人間にしても類人猿にしてもいつ、何がきっかけでどうなるかは分からない。生態系にしても人類における環境にしてもどこか不安定なものの上に何となく成立しているものだ。人類だって自分たちがまるでピラミッドの頂点にいるかのような気持ちになりがちだが決してそうでもないだろう。まさに人間界でその上位にいる宇宙飛行士が囚われの身となってしまうのだ。その危うさみたいなものも表現されていたように思う。

最終的には暴力という手段に頼らざるを得なくなる。情報統制しながら必要に応じて暴力でねじ伏せる。力を持つ者が支配し、そうでない者が支配される。地球では人類が退化し、類人猿が進化したとしても同じ道を歩んでいる。少なくとも本作製作から50年以上経過した現在も人類は良くも悪くもそんなに変わっていない。人類に進化の余地はないのか。そう信じたいところだが、きっとそういうことなのだろう。

ジョン・チェンバースによる特殊メイクは後の時代から振り返っても何ら遜色なく馴染んでおり、ここではないどこかだと思っていたらそれがやはり地球だったというこのロケーションの妙、ジェリー・ゴールドスミスによる素晴らしいスコア、そして演者の魅力。すべてがかみ合った素晴らしきSF映画の傑作。

【関連作品】


「猿の惑星(1968)」…シリーズ1作目
続・猿の惑星(1970)」…シリーズ2作目
新・猿の惑星(1971)」…シリーズ3作目
「猿の惑星・征服(1972)」…シリーズ4作目
「最後の猿の惑星(1973)」…シリーズ5作目
「PLANET OF THE APES/猿の惑星(2001)」…リ・イマジネーション
「猿の惑星:創世記(2011)」…リブートシリーズ1作目
「猿の惑星:新世紀(2014)」…リブートシリーズ2作目
「猿の惑星:聖戦記(2017)」…リブートシリーズ3作目
「猿の惑星/キングダム(2024)」…リブートシリーズ4作目



取り上げた作品の一覧はこちら



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├ジェリー・ゴールドスミス(音楽)による音声解説
├エリック・グリーン(『猿の惑星 隠された真実』の著者)による字幕解説
映像特典
├『猿の惑星』の科学
├“リバティー計画"/ANSA資料フィルム
├逆転世界からのメッセージ
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├猿の惑星の軌跡
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