【作品#0849】ターゲット・ブルー(1994) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ターゲット・ブルー(原題:中南海保縹/英題:The Bodyguard From Beijing)

【概要】

1994年の香港映画
上映時間は93分

【あらすじ】

ある殺人を目撃したことで命を狙われることになったミシェルのボディガードを担うチンは悪の組織と対峙する。

【スタッフ】

監督はコリー・チョウ
音楽はウン・ワイ・ラップ
撮影はトム・ラウ

【キャスト】

ジェット・リー(チン)
クリスティ・チョン(ミシェル)
コリン・チョウ(ウォン)
ケント・チェン(ポー)

【感想】

「格闘飛龍・方世玉(1992)」シリーズでタッグを組んでいたコリー・チョウ監督とジェット・リーの3度目のタッグ作品。

いかにも「ボディガード(1992)」を香港でリメイクしましたみたいな作品。正直言ってドラマ面では「ボディガード(1992)」以下であると感じる(もちろんアクションは比べるまでもないが)。

ボディガード(1992)」もそれほど評価できる作品であるとは思わないが、それでも「守られるべき」対象であるホイットニー・ヒューストン演じる歌手のレイチェルは命を狙われるかもしれないのに舞台に立つというプロ意識があり、実はシークレットサービスとしても人間としてもいまいちなケヴィン・コスナー演じるフランクと対をなすキャラクターになっていた。

一方、本作は金持ちでかなり年上の恋人がいるミシェルとSPのエキスパートであるチンの二人は、明るい性格と堅物という点でしか対をなしていない。監視される生活に嫌気のさしているミシェルとプロとして徹底しているチン。ミシェルのわがままに観客も飽き飽きしていたところ、ミシェルは本気で命を狙われて態度がコロっと変わる。急にプレゼントを渡したり、わざと倒れるふりをして気を引いたり、用もないのに緊急時の呼び出しボタンを押したりと、ミシェルはチンに好き好きオーラを振りまく。チンもその誘いに乗りそうになるがプロとして仕事を優先することになる(この時に流れる歌謡曲のような楽曲の演出にはこちらも恥ずかしくなる)。

結局、わがままなミシェルが最初は嫌っていたチンを好きになるというだけであって、このミシェルにはチンが惚れる魅力はない。ともに護衛するポーから「あんな美人はいない」と言われる場面があるが、美人であれば誰でも良いわけではない。実はミシェルが背伸びしていただけだとか、嫌いという態度を最初に出した手前素直になれないとかそんな小さな演出でも良かった。「望んでこの顔に生まれてきたわけではない」という場面があっただけに、もう少しそこら辺を広げられなかったか。

また、そんなロマンスを用意したもんだからアクションシーンはジェット・リー主演映画にしてはやや控えめだ。チンがミシェルの護衛をすることになってから、「人数が多いと護衛しにくい」という理由でかなりの人員を削減している。するとポーは毛沢東の「数は力なり」という言葉を引用する。そして、中盤のデパートでの襲撃シーンでは敵がこれでもかとあちこちからミシェルの命を狙ってくる。おそらく15~20人くらいをチンがやっつけたことになるだろう。まさに「数」で勝負を仕掛けてくるのだからチンと対を成す要素になっていると思うが、少ない精鋭との激闘の方が良かったかな。

そんなことを思っていると、終盤にかけて現れるのはコリン・チョウ演じるウォンという凄腕殺し屋が登場する。ジェット・リー演じるチンとまともに戦えるのはコリン・チョウ演じるウォンくらいである。であれば、チン対ウォンの激闘をメインに据えても良かったように思う。確かに中盤のデパートのアクションシーンは見ごたえ十分ではあるが、いかんせん敵が弱すぎる。

そして、クライマックスはミシェルの邸宅で繰り広げられるチン対ウォンら大勢の戦いである。ここでもウォンの手下たちは中盤のデパートのシーンと同様に基本的には雑魚キャラばかりである。この雑魚キャラがひとまずやっつけられると、チン対ウォンの一騎打ちとなる。ガスが充満する中で繰り広げられる水の奪い合い。これは緊張と緩和という意味合いになっていると思うが、どこかジャッキー・チェンのアクションコメディを思わせる。また、ワイヤーアクションも使われているが本作のテイストに合うギリギリのラインで使っているように思う。

ラストは主人公が体を盾にして銃弾から守るというお約束。「ボディガード(1992)」のケヴィン・コスナーも、「ザ・シークレット・サービス(1993)」のクリント・イーストウッドも、そして本作のジェット・リーもやるのだから、このジャンル映画にはなくてはならないものなのだろう。ところが、上記2作品の王道に比べて本作は少し工夫を加えている。一発目を食らったチンを見たミシェルが二発目を今度は自分がと体を盾にしようとするが、チンが再び体を盾にすることで二発目の銃弾も浴びて倒れることになる。ミシェルが体を盾にしようとした時点で銃弾は発射されているので、チンの動きはまさに高速移動である。オーソドックスよりも工夫を加えてオリジナリティを出そうとしたのだと思うが、ここはオーソドックスで良いと思うわ。さすがにこれはやりすぎに見えてしまう。

ジェット・リーにとっては新境地開拓を狙った作品だったのだろうか。寡黙なキャラクターは合っていると思うが、ロマンス要素のある映画における主演となるとちょっと弱いかな。いかんせんヒロインの設定が微妙すぎた。映画全体におけるアクションの比率は少ないが、クライマックスにかけてのアクションなどはジェット・リーの体がキレッキレなので見ごたえ十分。ファンなら押さえておきたい1本。




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