【作品#0296】ボディガード(1992) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ボディガード(原題:The Bodyguard)


【概要】

1992年のアメリカ映画
上映時間は130分

【あらすじ】

ボディガードとして評価の高いフランクは、人気歌手レイチェルのボディガードを彼女の付き人から頼まれる。

【スタッフ】

監督はミック・ジャクソン
脚本はローレンス・カスダン
音楽はアラン・シルヴェストリ
撮影はアンドリュー・ダン

【キャスト】

ケヴィン・コスナー(フランク・ファーマー)
ホイットニー・ヒューストン(レイチェル・マロン)

【感想】

2大スターが共演した本作が全世界で稼いだ4億1千万ドルは、「アラジン(1992)」に次ぐ同年2番目の興行成績であり、本作のサントラは映画史上最大のヒット記録を保持している。本作はアカデミー賞で主題歌賞(「I have Nothing」と「Run to You」)にノミネートされたが、「アラジン(1992)」の「Whole New World」に敗れ、ラジー賞では6部門でノミネートされたが受賞は免れた。

ちなみに本作の翌年には、ボディガードを主役にした「ザ・シークレット・サービス(1993)」が公開されており、過去に大統領狙撃事件で守れなかった過去を持つ主人公という点では共通していたし、その「ザ・シークレット・サービス(1993)」で主演したクリント・イーストウッドが監督した「パーフェクト・ワールド(1993)」にケヴィン・コスナーは主演している。

本作は1970年代にスティーヴ・マックィーンとダイアナ・ロス共演での企画が実現せず、長い時を経て1992年に実現する形となった。これによりケヴィン・コスナーはスティーヴ・マックィーンを思わせる短髪にしている。また、本作ラストで流れる「I Will Always Love You」はドリー・パートンが1974年に発表したカントリーの楽曲をカバーしたものである。

誰もが知るあの主題歌。やはりあの曲が流れ始めると鳥肌が立つ。楽曲の持つ力がとてつもなく大きいし、歌っている時のホイットニー・ヒューストンの魅力はそれなりに表現されていたと思う。また、アラン・シルヴェストリによるいかにも90年代らしい音楽も良い。

本作はは真っ黒の画面に2発の銃声から始まる。ケヴィン・コスナーのアップで映像が動き出し、クレーンカメラが徐々に引きながら事態が明らかになっていくという非常に興味を惹くオープニングになっている。本編を見終えて振り返ると、映画としてのピークはここと、ラストくらいだったな。

かつてシークレットサービスとしてレーガン大統領の警備を担当していた主人公は、彼の母の葬儀で非番だった当日に襲撃事件が発生したことに責任を感じて辞職しているという設定だ。これで責任を感じて辞職っていうのはちょっと無理があるかな。主人公に非があったなら、最高のボディガードという設定にもできないことになるが、母が亡くなった当日で仕事を優先したがいつものように集中できずにミスをしてしまったとかの方が共感しやすかったと思う。

主人公は人気歌手レイチェルのボディガードを彼女の付き人から頼まれるが、「有名人お断り」と言って断っている。なぜ「有名人お断り」なのかはこの場面では説明されない。映画的には彼がシークレット・サービスを辞めた事件が契機となっているように見えるが、実際のところはなぜ「有名人お断り」なのかはよく分からない。そして、「とりあえず会うだけ会ってみる」と言って会いに行ったその日に仕事を引き受けることにしている。彼女の魅力と、後に彼女の1人息子と話したことが仕事を引き受ける動機になっているように見えるが、こんなに情に流されていて本当に最高のボディガードなのかと疑ってしまう。この手の映画なら、主人公が最初に断るのはお約束だと思うが、映画開始10分くらいで仕事を引き受けるのは早すぎる。ここは主人公が止む無く仕事を引き受けざるを得ない状況にしておくべきだった。主人公の人となりは徐々に描いていけば良いと思うが、ここはもう少し丁寧に描いても良いはずだ。

以降、徐々に打ち解けていった2人は男女の仲になる。そして関係を持った翌朝、フランクは「公私混同は良くない」と言ってそっけない態度を取ったことでレイチェルを怒らせてしまう。このフランクの決断も含めてこの辺りから映画的にかなりつまらなくなってくる(序盤が特段面白いわけでもないのだが)。そこからレイチェルが命を狙われる理由のくだらなさ、バレバレの真犯人、殺人事件が起きているのに真犯人は捕まえたとして動かない警察、カメラマンとして潜入するにはどう考えても無理がある展開など、サスペンスとしてはテレビの2時間スペシャルレベルになっていく。

過去に傷を負った最高のボディガード。序盤から周囲との協力関係を築けず、問題ばかり起こしており、どう考えても最高のボディガードとは思えない。「男が女を守る」というボディガードの話ではあるが、過去の傷はレイチェルが癒してくれ、その母性やたとえ危険があってもステージに向かうプロ意識などを見るとどう考えてもレイチェルの方が立派に見える。白人男性と黒人女性というという組み合わせも含めてもっと良いドラマに仕上げられたのではないかとは思う。

主演の2人の物語としても、人気歌手を狙うサスペンスとしても中途半端。あまりにも偉大な主題歌に映画全体が負けちゃっている。

【関連作品】

「用心棒(1961)」…1961年の日本映画。黒澤明が監督し、三船敏郎が主演した時代劇。本作中にフランクとレイチェルが映画館でこの映画を鑑賞する場面がある。アメリカでは、本作の原題にある「The Bodyguard」で公開され、本作の製作/脚本を担当したローレンス・カスダンが黒澤ファンであることからこの作品を使っている。



取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語)

 

【ソフト関連】

<DVD>

言語
├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典

├ドキュメンタリー:ボディガードの思い出

├ミュージック・クリップ: I Will Always Love you

├オリジナル劇場予告編

 

<BD>

収録内容
├上記DVDと同様

 

【音楽関連】

<CD(サウンドトラック)>

収録内容
├13曲/58分

 

 

<主題歌「I Will Always Love You」>