【作品#0804】12ラウンド(2009) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

12ラウンド(原題:12 Rounds)

【概要】

2009年のアメリカ映画
上映時間は108分

【あらすじ】

ニューオリンズ市警のダニー・フィッシャーは強盗犯マイルズを逮捕するが、その際に逃げようとした彼の恋人が事故死してしまう。それから1年後。マイルズは脱獄し、恋人を死に追いやったダニー・フィッシャーに復讐のゲームを仕掛けてくる。

【スタッフ】

監督はレニー・ハーリン
音楽はトレヴァー・ラビン
撮影はデヴィッド・ボイド

【キャスト】

ジョン・シナ(ダニー・フィッシャー)
エイダン・ギレン(マイルズ・ジャクソン)
アシュレイ・スコット(モリー)
スティーヴ・ハリス(ジョージ・エイキン)

【感想】

WWEの映画部門であるWWEスタジオがジョン・シナを主演に据えて製作した映画第2弾。

本作は見ていると過去のアクション映画を色々と思い出すのだが、特に「ダイ・ハード3(1995)」の名前を出さない訳にはいかない。過去の因縁で主人公の刑事にゲームを仕掛け、主人公が街中を駆けずり回り、緊急車両を利用し、難しいゲームもクリアして「簡単すぎたからもっと難しいのを出せ」と強気に出て、最終的には過去の因縁を利用した強盗だったことが分かることなどは「ダイ・ハード3(1995)」とそっくりである。ちなみに本作の監督レニー・ハーリンは「ダイ・ハード2(1990)」の監督であり、もしかしてシリーズに未練でもあったんだろうかと勘ぐるほどである。また、FBIが市警を小馬鹿にしたような設定は「ダイ・ハード(1988)」でも見られたものである。

それ以外では「スピード(1994)」も思い出す。バス、エレベーター、電車といった舞台が用意されているところは一緒である。家を爆破された後にダッシュする姿も、「スピード(1994)」で爆破後にダッシュするキアヌ・リーヴスの姿と重なる。また、主人公の相棒が主人公と全く別の現場で爆死するところも同じである。何と言っても主人公の服装が「スピード(1994)」で主演したキアヌ・リーヴスの服装とそっくりである。

そういう90年代っぽさばかりかと思えば、冒頭のチェイスシーンでは洗濯物を掴んでそれを手に巻いて柵を乗り越えるという、どう見ても「ボーン・アルティメイタム(2007)」の丸パクリみたいなシーンもある。レニー・ハーリン監督による90年代から00年代のアクション映画の寄せ集めという印象である。

タイトルは原題と同様に「12ラウンド」である。これは当然ボクシングのラウンド数を表しているのだろうが、まるでWWEに所属しながら出演したジョン・シナへの当てつけにも思えるほどである。12ラウンドありきで物語を作ったかのようにチャプターぶつ切りで物語は進んでいく。なので周辺の細かい設定などについては軽く説明を済ませるか、もしくは説明すらしていない場面もある。

たとえば、犯人のマイルズが脱獄した経緯は簡単に済ませている。というか、脱獄事件が発生すれば普通はテレビや新聞ニュースが出回るはずだし、まして警官にこの情報が共有されていないなんてあり得ない。しかも、主人公はこの脱獄犯を捕まえた張本人であり、捕まえた時に復讐を匂わせる発言までしているのだから尚更だ。ちなみに、FBIはマイルズの脱獄を知っていたがダニーにはこの事実を話していない。非協力的だったFBIが後になって主人公に協力的になる流れも必然性を感じず、FBIがダニーに状況をあらかじめ説明しないことに対する後付けの設定にも感じてしまう。

また、ラストで主人公の妻モリーがヘリコプターの操縦をできることに対しても説明がない。過去にヘリコプターの操縦を訓練したなんて設定だったっけ(私が見逃したのか!?)。これについてはあまりに当たり前に事が運んでいくので困惑してしまった。

それ以外にも主人公の弟が出てくる場面にも必然性を感じない。後に主人公が弟に母親のところに行って離れないように言うセリフが回収される場面もない。こんな感じで思い付きをそのまま映画内に取り入れ、1ラウンド終わると前のラウンドのことはすっかり忘れて突き進むという感じである。

というか、犯人のマイルズが恋人を失った悲しみをダニーにも味合わせるという当初の目論見があまりにも薄く、ゲームに付き合わせること自体が目的にも見えてしまうのは残念である。仮にダニーの恋人を誘拐してダニーを苦しめるのが陽動作戦だったとしても、ダニーを苦しめようという意図はもう少し見せるべきだったように思う。というか、結局は金目当ての犯行だったわけだから、もう少しライトな作風でも良かったんじゃないだろうか。アクションコメディになったらそれこそ「ダイ・ハード3(1995)」に近付くか。

【関連作品】


「12ラウンド(2009)」…シリーズ1作目
「12ラウンド/リローデッド(2013)」…シリーズ2作目



取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語)


【ソフト関連】

<BD>

言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ダニエル・クンカ(脚本)、ジョン・シナ(出演)による音声解説
映像特典
├路面電車シーン撮影秘話
├アクション・シーンの裏側
├楽しい撮影現場のルール
├対談:レニー・ハーリン監督とジョン・シナ
├ボーナス・ラウンド
├別エンディング集※ダニエル・クンカ(脚本)とジョン・シナ(出演)による音声解説付き
├ネット流出映像集!?