【作品#0805】9デイズ(2002) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

9デイズ(原題:Bad Company)

【概要】

2002年のアメリカ/チェコ合作映画
上映時間は116分

【あらすじ】

チェコで核爆弾の仲介人マイケル・ターナーに成りすましたCIAケヴィンはその作戦中に殺されてしまう。CIAは取引期限が迫る中ケヴィンの双子の弟ジェイクの存在を知り、ジェイクにケヴィンへ成りすまして捜査に参加するよう要請する。

【スタッフ】

監督はジョエル・シューマカー
音楽はトレヴァー・ラビン
撮影はダリウス・ウォルスキー

【キャスト】

アンソニー・ホプキンス(オークス)
クリス・ロック(ジェイク/ケヴィン)
ピーター・ストーメア(ヴァス)
ガブリエル・マクト(シール)
ケリー・ワシントン(ジュリー)

【感想】

元々は「ブルーストリーク(1999)」の続編として執筆された脚本を転用して製作された本作は、当初2001年11月に公開予定だったが、アメリカ同時多発テロを受けて2002年6月公開になった。

双子の兄弟のうち片方が死んでしまい、もう片方が死んだ兄弟に成りすまさなければならないといったプロットはそれなりにお見かけする。そんな作品群に埋もれた一本になってしまったのではないだろうか。また、クリス・ロック主演作品でもあるが、当時の黒人がまくしたてるコメディ映画の中に埋もれていると言える。

双子の兄がいたことと亡くなっていることを同時に知らされたジェイクだが、金を積まれるとあっさりCIAの諜報作戦に参加することを決意する。本作はやはりコメディ映画だが、冒頭のケヴィンが殺されるまでのシークエンスは決してふざけてはいない。コメディ映画で通したいのなら、ケヴィンが殺されるという設定は排除すべきじゃないか。ケヴィンが負傷したために取引場所に出向けないから双子の弟のジェイクが引っ張り出されるとかそれくらいでも十分だろうに。

また、冒頭でヴァスとの取引を終えたケヴィンは敵に殺されてしまうのだが、これは後にヴァスを裏切る組織の男である。確かにヴァスとの取引を終えたケヴィンが10日後に会う予定のヴァスの手下に殺されるのはおかしいが、かといってヴァスを裏切る組織の男がケヴィンを殺すことで得られるメリットは何なのか。ここまで描くならその組織の男がケヴィンを殺す明確な理由は提示すべきじゃないだろうか。この描き方だと「なんとなく殺された」という感じにしか見えない。

無理矢理にもCIAの危険な作戦に参加させられたジェイクとどこか堅物っぽいオークス。嫌々参加したふざけたジェイクと堅物のオークスが徐々にお互いを認めていくような物語にはなっていない。ちなみに、アンソニー・ホプキンスは後に本作を酷評しており、エージェントが大ヒット作に出演すべきだと考えたために出演しただけだと語っている(残念ながらヒットどころか大コケ)。通りで違和感を覚えたのだろう。アンソニー・ホプキンスがアクション映画に出演して格闘シーンを演じるという新鮮さは確かにある。だが、彼の堅物感がクリス・ロックとの絡みでコメディとしての役割を担っているとは言い難い。

結局のところ、本作はアクション映画としてもコメディ映画としても微妙な出来。どういった作品を目指したのかがあまり見えてこない。アクションシーンも印象に残る場面はほぼ皆無だった。これを職人監督のジョエル・シューマカーに任せたのも失敗に思う。せめてちゃんとコメディを撮れる監督がやらなければならない題材だった。

そして、邦題の「9デイズ」。冒頭の場面で次の取引までなぜか10日の猶予が与えられ、CIAは残り9日の時点でジェイクをリクルートすることに成功する。そして取引当日までにジェイクをマイケルに仕立て上げるわけだ。このプロットありきで取引猶予が10日もあるように思うし、邦題の「9デイズ」ってジェイクをリクルートしてから取引当日までの日数でしかないから、映画の1/3が終わった時点でタイトルの「9デイズ」は経過していることになる。もう少し良い邦題が思いつかなかったものか。




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