【作品#0788】デアデビル(2003) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

デアデビル(原題:Daredevil)

【概要】

2003年のアメリカ/スイス合作映画
上映時間は103分
※ディレクターズ・カット版は133分

【あらすじ】

少年時代に事故で失明したマットは同時に超人的な能力を持つことになっていた。成人したマットは昼に弁護士業を、そして夜にはデアデビルに扮して正義の裁きを下していた。

【スタッフ】

監督/脚本はマーク・スティーヴン・ジョンソン
音楽はグレーム・レヴェル
撮影はエリクソン・コア

【キャスト】

ベン・アフレック(マット・マードック/デアデビル)
ジェニファー・ガーナー(エレクトラ・ナチオス)
マイケル・クラーク・ダンカン(ウィルソン・フィスク/キングピン)
コリン・ファレル(ブルズアイ)
ジョン・ファヴロー(フォギー)
ジョー・パントリアーノ(ベン・ユーリック)

【感想】

マーベル・コミック「デアデビル」の映画化。7,800万ドルの製作費に対し、全世界で1億7千万ドルしか売り上げることができず、批評家からの評価も芳しくなかった。ベン・アフレックは本作ならびに「ジーリ(2003)」「ペイチェック 失われた記憶(2003)」の演技と合わせてラジー賞の最低主演男優賞を受賞した。

また、ベン・アフレックが主役の再演を望まず同じ20世紀フォックスでのリブートも検討されたが、2012年に映画化権はマーベル・スタジオに戻った。なお、ジェニファー・ガーナー演じるエレクトラを主人公にした「エレクトラ(2005)」が後に製作されている(ベン・アフレック演じるデアデビルのカメオ出演シーンは撮影されたがカットされている)。

本作が失敗したのは、失明したのに実質ほぼ見えているというプロット(もしくはそうなる過程の省略)が原因だろう。たとえば、デアデビルの格好をした時だけ覚醒して見えるようになるとか、怒りという感情を抱いた時だけ見えるようになるとか、特殊な薬を使って短い時間だけ見えるようになるとか…。そういう制限を課さないと失明したという序盤の設定に何の意味があるのかという話である。しかもデアデビルの見える世界はどこか「マトリックス レボリューションズ(2003)」で失明したネオを思わせ、その世界観の中心カラーだった緑色も本作で幾度か目にする。

主人公のマットは昼間に弁護士をしており、彼が裁判に臨む場面は本作に1箇所だけ用意されている。そこでは容疑者の男の鼓動を超人的な能力で確認し、この容疑者が嘘をついていることを見抜く。ところが、裁判では敗れてしまいこの容疑者は無罪放免となる。確かにこの容疑者は有罪になるべき人物なのだろう。そしてマットは精一杯やったけど裁判に負けたのだろう。それは映画を観ていれば分かる。だが、なぜ裁判には負けてしまったのか。この場面はものすごく安易で、まるでデアデビルの姿で処刑をするためだけに敢えて裁判で負けているようにさえ見えてくる。

正義のために弁護士になったのだとしても、「裁判で負けたら夜に処刑したらいいや」と思ってしまったら弁護士になった意味は何なのかという話になってくる。彼が弁護士をやっている設定が逆効果になってしまっているように思ってしまう。これなら視覚障害を抱えているために自分の望む職業に就けず、やむなくデアデビルとして活動しているという方がよっぽど説得力があると思う。しかも弁護士として活動している場面はこの場面以外に一切ないので、本作においてこの設定はマイナス面しか生み出していない(ディレクターズ・カット版では弁護士の場面は肉付けされている)。

さらに主人公は正義のための処刑現場に「DD(デアデビル)」と自分がやったと印を残している。これに何の意味があるのか。これを観た市民がデアデビルに処刑されてしまうことを恐れて犯罪率が低下するとかそれくらいの状況にまでならないと意味がないし、本作の取り扱い方を見るに記者のユーリック向けの演出にしかなっていないように思う。

そして、マットは本作のヒロインであるエレクトラに出会い彼らは恋に落ちる。そのエレクトラは父親ニコラスが本作の黒幕キングピンの右腕であるのだが、かなり都合の良い設定に見える。ニコラスがキングピンとの関係を絶とうとすると、キングピンはブルズアイを雇ってニコラスを殺すように命じる。ここでブルズアイの暗殺を阻止しようと現れたデアデビルは、その暗殺に失敗し、さらにはその暗殺がデアデビルの仕業だとエレクトラに思われてしまう結果となった。ここでは、意図的にデアデビルの仕業に見せかけたように演出されているが、どう見ても偶然にしか見えないぞ。横転した車から先にエレクトラが出てきていたらブルズアイの仕業であることは目撃されていたはずだ。

父親が殺されたのはデアデビルの仕業だと思ったエレクトラはデアデビルに復讐へ向かう。デアデビルの主張に耳を貸さないエレクトラは、デアデビルの肩を刺してマスクを取るとそれがマットであると気付き涙する。マットであることに気付いてから涙するまでが早すぎるかな。そして、エレクトラはブルズアイにあっさり殺されてしまう(ラストでエレクトラが生きていることを示唆する描写があるにはあるが)。この手の映画でヒロインが死んでしまうのは、ちょうど同年の作品「ヴァン・ヘルシング(2003)」を思い出す。

そして、その復讐としてデアデビルはキングピンとの一騎打ちに臨んで勝利を収めて映画は終わる。見終えて感じるのは詰め込み過ぎである点だ。少年時代のエピソードも悪くはないのだが、尊敬していた父親が善人ではなかったこと、息子が失明したことを機に気持ちを入れ替えたは良いが殺されてしまったことが大人になってからのデアデビルの物語にあまり関連していないのは気にかかる。

明らかに続編を見越して、悪役二人は生きているし、死んだと思われたエレクトラも生きていることが示唆される描写がある。

【エクステンデッド版】

本作公開の翌年に劇場公開版に30分追加したディレクターズ・カット版が発表され、劇場公開版よりも好評を博した。ソフト化もされているので視聴可能である。また、U-NEXTでは本作の視聴はディレクターズ・カット版のみとなっている(2024年2月現在)。

詰め込み過ぎを感じた劇場公開版に比べると物語の運び方は少し丁寧になっており、こちらの方が印象は良い。だが、だからといって称賛するほど良いわけでもない。

【音声解説】

参加者
├マーク・スティーヴン・ジョンソン(監督)
├ゲイリー・フォスター(製作)

上記2名による対話形式の音声解説。製作時の苦労話、香港のスタントチームとの話、ベン・アフレックとジェニファー・ガーナーがほとんどすべて演じたアクションシーン、当初はカットされる予定だったが何とか残した場面の話、コリン・ファレルが日焼けしてクランクインしてきた話、原作では白人のキングピン役に黒人のマイケル・クラーク・ダンカンを起用した経緯などについて話してくれる。

【関連作品】


「デアデビル(2003)」
「エレクトラ(2005)」…エレクトラを主人公にした上記作品のスピンオフ



取り上げた作品の一覧はこちら



【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語/ギリシャ語/イタリア語)

 

<Amazon Prime Video>

言語
├日本語吹き替え


【ソフト関連】

<DVD(アルティメット・エディション)>

本編
├劇場公開版
├超感覚VFXモード(8つのマルチ・アングル映像付)
言語
├オリジナル(英語/ギリシャ語/イタリア語)
├日本語吹き替え
字幕特典
├映画の製作過程、ストーリー、キャラクター、マーヴェルに関する字幕解説
音声特典
├マーク・S・ジョンソン(監督/脚本)とゲイリー・フォスター(製作)による音声解説
映像特典
├メイキング・オブ・『デアデビル』
├"デアデビル"コミックから映画へ
├"デアデビル"を生んだ恐れを知らぬ男たち
├シャドウ・ワールド・ツアー
├キングピンの魅力:マイケル・C・ダンカン
├キャラクター・プロフィール
├Daredevil :HBO 1st Look Special 
├格闘シーン集(6シーン/マルチアングル対応)
├トム・サリバン(視覚コンサルタント)のインタビュー
├ジェニファー・ガーナーのスクリーンテスト
├Easter Egg: Gag Reel
├スティル・ギャラリー
├オリジナル劇場予告編集
├ミュージックビデオ(3種)


<BD(ディレクターズ・カット)>

本編
├ディレクターズ・カット版
├超感覚VFXモード(8つのマルチ・アングル映像付)
言語
├オリジナル(英語/ギリシャ語/イタリア語)
├日本語吹き替え
映像特典
├メイキング・オブ・『デアデビル』
├"デアデビル"コミックから映画へ
├"デアデビル"を生んだ恐れを知らぬ男たち
├シャドウ・ワールド・ツアー
├キングピンの魅力:マイケル・C・ダンカン
├キャラクター・プロフィール
├格闘シーン集(6シーン/マルチアングル対応)
├トム・サリバン(視覚コンサルタント)のインタビュー
├ジェニファー・ガーナーのスクリーンテスト
├スティル・ギャラリー
├オリジナル劇場予告編集
├ミュージックビデオ(3種)
├メイキング・オブ・「デアデビル ディレクターズ・カット」