【タイトル】
シービスケット(原題:Seabiscuit)
【概要】
2003年のアメリカ映画
上映時間は141分
【あらすじ】
1930年代から1940年代にかけて活躍した競走馬シービスケットと3人の男たちの姿を描く。
【スタッフ】
監督/脚本はゲイリー・ロス
音楽はランディ・ニューマン
撮影はジョン・シュワルツマン
【キャスト】
トビー・マグワイア(レッド)
ジェフ・ブリッジス(ハワード)
クリス・クーパー(スミス)
エリザベス・バンクス(マーセラ)
ウィリアム・H・メイシー(ティックトック)
【感想】
2001年にローラ・ヒレンブランドが発表した「シービスケット あるアメリカ競走馬の伝説」の映画化。トビー・マグワイアは「カラー・オブ・ハート(1998)」に続いてゲイリー・ロスの監督作品に出演することになった。アカデミー賞では作品賞含む7部門ノミネートされたが受賞はならなかった。
タイトルが馬の名前「シービスケット」なのに、馬の「シービスケット」がほとんど目立っておらず、所詮は人間ドラマの添え物という印象さえ受ける。また、かといって人間ドラマの中心を担う3人のドラマも決して重厚に、そしてスマートに描かれた印象はない。
主人公のレッドがシービスケットに出会うまでに50分近くかかっている。これが映画的には第2幕の始まりということだろう。つまり、それまでの50分近くでメインキャラクターの3人(レッド、ハワード、スミス)と舞台背景を紹介しているのだ。
映画の始まりは自動車事業に手を出したハワードが世界大恐慌で職を失うところがメインである。また、この世界大恐慌の煽りを受けてレッドは両親から養えないとして調教師の家に出されてしまう。特にこの二人は落ちぶれたところから這い上がってくるキャラクターである。また、世界大恐慌という暗い世の中に登場したのがシービスケットであるという描かれ方のようである。ところが、世界大恐慌の煽りを受けたと分かる描写は前半ですっかり終わってしまっており、世界大恐慌から復活していく象徴として大衆の人気者になるという意味合いにはあまりにも見えづらいものがある。
また、特にこの二人と世間の描写は淡泊であり、とても苦労した感はない。レッドに関しては、両親が止む無く息子のレッドを手放す場面こそ感傷的な演出がなされているものの、シービスケットの旗手として有名になったレッドが両親と再会する場面がないのは違和感がある(事実だったんだろうか)。家族のいないレッドだからこそ、シービスケットという相棒に出会ったという感じには見えない(そう見せる気もなかったんだろうか)。
そして、このレッドとシービスケットを繋ぐのはスミスである。暴れ馬だったシービスケットが暴れてしまい、騎手になる予定だった男が立ち去ると、その近くでスミスが男たちと喧嘩しており、その様子を見たスミスがレッドを騎手にしようという流れである。どこか嘘みたいな話に見えるし、彼らの出会いにしてはあまりにもショートカットをした展開に見えてしまう。
そんな暴れ馬だったシービスケットをレッドが手懐けるのに苦労する場面もあまりない。というか何年もの間、パートナーともいえる関係を結ぶレッドとシービスケットの絆もほとんど描かれた印象はない。印象的なカットもなかったな。この程度の描き方だと、3人のドラマにシービスケットがおまけくらいの描き方に見える。
ちなみに、レッドについて調べてみると、彼の過程が困窮したのは世界大恐慌のせいではなく、1915年にレッドの家族が働くレンガ工場が近隣の河の氾濫で崩壊したからであるそうだ。また、レッドはボクシング経験もあるようで、映画ではこのボクシングが原因で右目を負傷したとされるが、実際には調教中の負傷により右目を失明しているそうだ。そして、順調だった騎手としてのキャリアも右目の失明を機に低迷していったらしい。なので、レッドが落ちぶれてから復活する様子を描くなら、時代こそ違えどレッドが失明によりキャリアが低迷し、スミスに出会ったことでキャリアが上向きになっていくことを描いた方がよっぽど説得力のある物語になったように思う。
結局、レッドとハワードを落ちぶれた二人の人間として強引に結びつけたことでドラマの相乗効果が得られずむしろ薄まってしまった感がある。さらにそこへスミスも同格の扱いにしたことでより薄まってしまった。右目の失明により落ちぶれたレッドがシービスケット、ハワード、スミスに出会ったことで復活していくという、レッドをはっきりとした主人公にした物語にすべきだったんじゃないだろうか。人間3人を中心とした物語に徹したことで、終始ぼやっと焦点の合わない作品になってしまったように思う。少なくともハワード、スミスは脇役に徹するべきだった。
【音声解説】
参加者
├スティーヴン・ソダーバーグ(映画監督)
├ゲイリー・ロス(監督/脚本)
本作の監督をしたゲイリー・ロスと本作の製作には携わっていない映画監督のスティーヴン・ソダーバーグによる音声解説。こういった組み合わせはあまりないので貴重な音声解説と言えるだろう。基本的にはスティーヴン・ソダーバーグが疑問に思ったことをゲイリー・ロスに質問して彼が答えるという感じである。
ともに脚本と監督を担う彼らの監督と脚本の位置づけ(特に脚本通りに監督しようとしたら失敗する話)などの話は大変興味深かった。
取り上げた作品の一覧はこちら
【ソフト関連】
<DVD>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
映像特典
├メイキング
<BD>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ゲイリー・ロス(監督/脚本)、スティーヴン・ソダーバーグ(映画監督)による音声解説
映像特典
├メイキング
├監督の演出メモ
├実録・シービスケット
├ジェフ・ブリッジスの撮影現場アルバム
├1938年マッチレース
├HBO特番(シービスケット伝説の誕生)
├ドキュメンタリー(真実のシービスケット)
├キャスト インタビュー
├劇場予告・TVスポット集