【作品#0645】ワンダーウーマン(2017) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

ワンダーウーマン(Wonder Woman)

【概要】

2017年のアメリカ/中国合作映画
上映時間は141分

【あらすじ】

女性だけの島セミッシラで育ったアマゾン族王女のダイアナは、将軍による厳しい訓練により逞しい戦士に育っていた。ある日、海岸に戦闘機が墜落し、パイロットのスティーブを救出すると、彼を追ってきたドイツ軍との戦いになる。

【スタッフ】

監督はパティ・ジェンキンス
音楽はルパート・グレッグソン=ウィリアムズ
撮影はマシュー・ジェンセン

【キャスト】

ガル・ガドット(ダイアナ/ワンダーウーマン)
クリス・パイン(スティーブ・トレバー)
ロビン・ライト(アンティオペ将軍)
ダニー・ヒューストン(エーリヒ・ルーデンドルフ総監)
デヴィッド・シューリス(パトリック・モーガン卿)
コニー・ニールセン(ヒッポリタ女王)

【感想】

「DCエクステンデッド・ユニバース」の4作目となった本作には、「モンスター(2003)」以来となるパティ・ジェンキンスが初監督を務め、アメコミの映画化作品で女性が監督を務めるの初めてとなった。また、全世界で8億2千万ドルを超えるヒットを記録し、批評家からも軒並み高評価を得た。

「DCエクステンデッド・ユニバース」の作品としては4作目にしてようやく成功作品に巡り合ったという印象である。何より主演したガル・ガドットの魅力に寄るところが大きい。ワンダーウーマンが初登場した「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生(2016)」でも物語への絡み方はやや不自然な印象だったため、先に本作を製作しておけば良かったのにと強く感じる。また、幼少期から王女様として育てられた品の良さと人を思う優しさ、そして戦う姿勢はとにかく美しい。

本作の始まりは現代であり、「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生(2016)」と「ジャスティス・リーグ(2017)」の間ということであろう。その現代のダイアナ(ワンダーウーマン)がおよそ100年前の出来事を振り返り、「自分が未熟だった」と語っている。その100年前に遡り、女性だけの島に生まれ育った女性が外の世界を経験して成長していく物語である。この物語のベースは「ローマの休日(1953)」であろう。アイスを食べる場面まであるくらいだし。

突然、外の世界がこの女性だけの島セミッシラ入り込んでくることで物語は急転する。第一次世界大戦中にスパイとして毒ガス兵器の製造の情報を得たスパイの男スティーヴが逃げてきたのだ。幼少期よりアレスが悪であると教え込まれたダイアナは、第一次世界大戦の最大の敵こそアレスだと考え、スティーヴとともにヨーロッパに赴く。

その合間にダイアナはスティーヴと会話し、普通の人間がどんな暮らしをしているのかを知っていく。この会話のやり取りはカルチャーギャップコメディを最低限に抑え、まるで子供から「なんで戦争するの?」と聞かれた大人が頑張って理解してもらえるように答えているような印象である。ただ、ここが本作の重要なポイントであるだろう。子供が大人に上記のような質問をして、「人間ってそういうものだから」と思わせてしまったら子供は希望もなく生きていくことになるだろう。

そして、協力して最前線までやってきたダイアナとスティーヴらは途中までは順調に戦っていくが、直線距離で悪に向かうダイアナと、機が熟すのを待つスティーヴで意見が別れてしまう。そして、そのスティーヴを待ったことで1つの村が毒ガスでやられてしまい、ダイアナは味方だと思ったスティーヴも悪なんだと認識し始めてしまう。

ところが、スティーヴは最後の最後までダイアナに付いていき、理解してもらえるまで諦めることはない。とにかく良い奴である。ついにアレスだと思った敵をやっつけても、毒ガス兵器工場は生産を止めることはない。それを見たダイアナは驚きを隠せない。スティーヴは「人間ってそういうものだ」と言いながらも「全員が悪人ではない」となだめる。ただ、この第一次世界大戦の後にもっと甚大な被害をもたらした第二次世界大戦を人間は起こしてしまうのだが。

さらには、「この戦争の責任は俺にだってある」とまで言い出す。スティーヴが以前どのような生活をしていたかは分かりかねるが、どこかの誰かが初めた戦争に巻き込まれた1人であるはずだ。なのに、ダイアナに対して自身にも戦争の責任があると認めている。この視点にはあらゆる意味で感心させられる。スティーヴもスパイだし、彼の行動次第で戦争の行く末を決める可能性だってある。それでも言ってしまえばたかがスパイの1人なわけで、はっきりと「彼にもこの戦争の責任がある」なんて思えない。ただ、人類が戦争を行っている以上、たとえその戦地が離れた外国だったとしても、同じ人類の責任と考えて行動できればどれほど素晴らしいものかと思うところではある。

そして、そんな本作なりのテーマに対する回答は「愛」である。本当にベタだとは思うが、「愛」を知らない真のヒーローが「愛」を知り、一度は救う価値などないと思った人間を救うようになっていくのは感動的である。スティーヴはダイアナを戦地まで連れてきたが、人間の酷い面ばかりを見せることになり、スティーヴ自身も酷い人間と思われてしまった。そんなスティーヴがこの戦争を止めるために命を犠牲にする。人間のことを救う価値のある存在だと思ってもらうための行動である。命懸けの行動でなければ、戦争は止められないし、救う価値のある存在だと思ってもらえないのだ。

その犠牲になるスティーヴは本当に良い奴である。スパイとして優秀なだけでなく、相手を思いやる優しさも、根気よく説得する粘り強さも兼ね備えている。ただ、そんなスティーヴもダイアナから人間の「普通の」暮らしについて質問されて「わからない」と答える場面がある。おそらくスティーヴはスパイとして長年仕事をしているだろうから、各地を転々としていることだろう。更には、家族の話や恋人、友人の話題が出てこなかったこともあり、そういった「普通の」暮らしは忘れてしまったか、もしくは経験してこなかった可能性が高い。だから、あらゆるダイアナからの質問にちゃんと答えていたスティーヴがここで「わからない」と答えたのだろう。人間が戦争をしていなければスティーヴもスパイになる必要がなく、「普通の」暮らしを送ることが出来ていただろう。そう考えるとものすごく切ないし、また第一次世界大戦が勃発してスティーヴがスパイとして活躍したからこそ彼らは出会えたわけである。非常に複雑な感情を覚える。

スティーヴが犠牲になってしまった事実を受けて、ワンダーウーマンは復讐の鬼となり次々に敵をやっつけ始める。まさに、戦争の被害を受けた国が復讐するかのようである。結局、どれだけ素晴らしい教育を受けてきたとしても、いざ愛する人を亡くせば復讐の鬼にもなるという人間の怖い側面が描かれた作品とも言える。

外の世界を知らぬヒーローがその純真さにより時に成功し、時に失敗する。その過程でめちゃくちゃ良い奴スティーヴと出会い、愛に目覚め、そしてスティーヴを失い、どんどん人間らしくなっていく。ドラマ面も非常によく描けた作品ではあるが、ラストのアクションが毎回夜の暗い場面で行われるのはどうにかならないだろうか。「DCエクステンデッド・ユニバース」らしさなのかもしれないが、「またやってるよ」という印象の方が大きい。とはいえ、「DCエクステンデッド・ユニバース」では最初の成功作品だろう。

【関連作品】

 

マン・オブ・スティール(2013)」…リブート/DCエクステンデッド・ユニバース1作目
バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生(2016)」…DCエクステンデッド・ユニバース2作目

スーサイド・スクワッド(2016)」…DCエクステンデッド・ユニバース3作目

「ワンダーウーマン(2017)」…DCエクステンデッド・ユニバース4作目
ジャスティスリーグ(2017)」…DCエクステンデッド・ユニバース5作目

「アクアマン(2018)」…DCエクステンデッド・ユニバース6作目

「シャザム!(2019)」…DCエクステンデッド・ユニバース7作目

「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY(2020)」…DCエクステンデッド・ユニバース8作目

「ワンダーウーマン1984(2020)」…DCエクステンデッド・ユニバース9作目

ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット(2021)」…DCエクステンデッド・ユニバース5作目のディレクターズ・カット

「ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結(2021)」…DCエクステンデッド・ユニバース10作目

「ブラックアダム(2022)」…DCエクステンデッド・ユニバース11作目

「シャザム!神々の怒り(2023)」…DCエクステンデッド・ユニバース12作目

「ザ・フラッシュ(2023)」…DCエクステンデッド・ユニバース13作目

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら
 

 


【予告編】

 


【配信関連】

 

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言語

├オリジナル(英語/ドイツ語/オランダ語/フラマン語/フランス語/スペイン語/中国語/古代ギリシャ語/北アメリカ大陸先住民の言語)

 

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言語

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<BD>

 

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├日本語吹き替え

映像特典

├エピローグ

├新たな伝説の誕生

├監督のビジョン

├アマゾンの戦士への道

├ワンダーウーマンという存在

├作品を支えた女性たち

├ワンダーウーマンを語る

├エクステンデッド・シーン集

├もう1つのシーン:無人地帯

├NG&オフショット集

 

<4K Ultra HD&3DBD&2DBD>

 

収録内容

├上記BDと同様