【タイトル】
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(原題:The Lord of the Rings: The Return of the King)
【概要】
2003年のニュージーランド/アメリカ合作映画
上映時間は201分
※スペシャル・エクステンデッド・エディションは250分
【あらすじ】
サルマンの封じ込めに成功したガンダルフたちのもとへ、今度はサウロンがゴンドールに20万もの軍を送り込む。一方、フロドはサムとゴラムとともにモンドールの滅びの山を目指していた。
【スタッフ】
監督はピーター・ジャクソン
音楽はハワード・ショア
撮影はアンドリュー・レスリー
【キャスト】
イライジャ・ウッド(フロド・バギンズ)
ショーン・アスティン(サム)
イアン・マッケラン(ガンダルフ)
ヴィゴ・モーテンセン(アラゴルン)
オーランド・ブルーム(レゴラス)
ジョン・リス=デイヴィス(ギムリ)
アンディ・サーキス(ゴラム/スメアゴル)
ケイト・ブランシェット(ガラドリエル)
ヒューゴ・ウィーヴィング(エルロンド)
リヴ・タイラー(アルウェン)
【感想】
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ3部作の最終章となる本作は、アカデミー賞で作品賞含む11部門を受賞し、「ベン・ハー(1957)」「タイタニック(1997)」に並ぶ最多受賞となった。また、興行収入もシリーズ最多の11億ドルを記録した。
シリーズ最終章は201分という上映時間となり、3部作合計で560分(9時間20分)となる。ちなみにスペシャル・エクステンデッド・エディションなら681分(11時間21分)となる。シリーズ1作目から感じていたが、やはり連続ドラマとして製作した方が良かったのではないかと思う。監督が本来目指したのはスペシャル・エクステンデッド・エディションの方だろうから、3作品で121分、つまり2時間ほどを削って劇場公開版にしていることになる。また、邪推だが、おそらくスペシャル・エクステンデッド・エディションでもやむなく削ったシーンやエピソードもあったことだろう。これだけのキャストや情報をまとめ上げたことは素晴らしいと思うが、本来見せたいものを2時間も削ってまで3作品で映画化するところに無理があるのだろう。仮に映画化するにしても、別に4部作でも5部作でも良かったはずだ。
それから、ラストでフロドは指輪の力に誘惑され、「指輪は僕のものだ」と言って指輪をはめて姿を消してしまう。すると、とどめを刺し損ねたゴラムに襲われ、フロドとゴラムで指輪を奪い合う醜い争いに発展していく。指輪を奪ったゴラムだけが指輪と共に火の中に落ち、フロドは崖に捕まりサムに助けてもらう。指輪の力が凄いことも、何かの暗喩になっていることも十分に分かるのだが、3部作で時間をかけてフロドの成長も描いてきたはずなのに、ラストでは結局自分の力で指輪を葬ることができなかった。もしゴラムにとどめを刺していれば、フロドは指輪の力に負けてしまっていたところだ。こんなにがっくり来る展開もない。成長したフロドが指輪を葬り去るという展開でも良かった気がする。何のために3作品時間をかけてフロドの物語を描いてきたのか。わざわざ結果オーライみたいな話にする意義が見当たらない。
また、主人のフロドと庭師のサムの主従関係も気にはなる。たとえ、ご主人様から付いて来るなと言われても、最終的にはご主人様を守り戦う。強大な力を持つ指輪を持っていたのはフロドだが、サムの方がよっぽど立派に見えてしまう。しかもゴラムが落としたレンバスに気付かなかったらフロドのところに戻らなかったはずだ。思い直してやっぱりフロドのところに戻った方が良かった気もする。
それに、この3人のパーティで見ると、ゴラムの方がよっぽどキャラクターとして魅力的である。ゴラムの中の天使と悪魔が言い合いをする場面こそ説明的すぎるとは思うが、指輪の力に魅せられて苦悩するキャラクターとしては本シリーズで一番魅力的だった。その点、中盤以降からラストにかけての扱いはどうも中途半端に感じてしまった。
戦闘シーンは前作同様に確かに迫力はある。ただ、前作以上に戦い方にまるで戦略がなく、結局は個の頑張りで何とかなりましたという感じになっている。さらに、アラゴルン、レゴラス、ギムリの3人は前作と同様に、大したピンチもなくスーパーな活躍をただただ披露する。結局、本シリーズで死んだメインキャラクターは1作目のボロミアだけである。それ以外の雑魚キャラの死は然るべき犠牲であり、そこにフォーカスを当てることも一切ない。しかも、あれだけ戦ったのに最後にほぼ無敵の亡霊が現れると、それまでの戦いにあまり意義が感じられなくなる。ガンダルフも魔法を使わずに杖で戦っているし。
キャラクター描写も3部作通して一貫しているが、変化がなく乏しい。基本的にどのキャラクターも成長したというよりかは、最初に登場した時とずっと変わっていないように感じる。強いて言うならホビット4人組は多少変わった気もするが。アラゴルン、レゴラス、ギムリの3人に関しては2作目から本作まで基本的にずっと一緒にいるのだが、仲違いすることも意見が対立することも全くなく、キャラクター描写としても起伏に欠ける。
結局、ピーター・ジャクソンはこの3部作で何を伝えたかったのか。指輪が核兵器の暗喩であり、たとえ最も平和を望むホビット族が手にしたとしても核兵器が発射されるかもしれないというところは伝わってくる。でも、ラストくらい成長したフロドが自分の力で指輪を葬る物語で良かったと思うな。
劇場公開版を2回ずつ、それぞれのスペシャル・エクステンデッド・エディションを1階ずつ鑑賞したが、やはりこれほどの高評価が理解しきれないシリーズであった。3部作を改めて振り返っても印象に残る名場面もなかった。私としてはゴラムにもっと焦点を当てた物語は見てみたいと思った。
【スペシャル・エクステンデッド・エディション】
劇場公開版から49分追加されたバージョン。エンドクレジットを除いたとしても約4時間ある長編になる。前3作にも言えることだが、本来公開したいバージョンから49分も削らなければならないボリュームの時点で無理があるだろう。
【関連作品】
「ロード・オブ・ザ・リング(2001)」…シリーズ1作目
「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔(2002)」…シリーズ2作目
「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(2003)」…シリーズ3作目
「ホビット 思いがけない冒険(2012)」…前日章シリーズ1作目
「ホビット 竜に奪われた王国(2013)…前日章シリーズ2作目
「ホビット 決戦のゆくえ(2014)」…前日章シリーズ3作目
取り上げた作品の一覧はこちら
【予告編】
【配信関連】
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├原作から脚本へ
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├ニュージーランド~中つ国誕生の地
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├DVDツアー・ガイド
├“王の帰還”撮影風景
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├ポスト・プロダクション:旅の終焉
├ひとつの時代を過ぎて
├キャメロン・ダンカンに捧ぐ“イントゥ・ザ・ウエスト”
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【音楽関連】
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収録内容
├19曲/72分