【作品#0416】ショーシャンクの空に(1994) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ショーシャンクの空に(原題:The Shawshank Redemption)


【Podcast】 

 

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

1994年のアメリカ映画
上映時間は142分

【あらすじ】

無実の罪で終身刑になったアンディはショーシャンク刑務所に収監されることになる。誰とも交流しないアンディであったが、趣味の鉱物採集を再開させるために、調達屋のレッドに小さなハンマーを注文するために声をかける。

【スタッフ】

監督/脚本はフランク・ダラボン
音楽はトーマス・ニューマン
撮影はロジャー・ディーキンス


【キャスト】

ティム・ロビンス(アンディ・デュフレーン)
モーガン・フリーマン(レッド・レディング)
ウィリアム・サドラー(ヘイウッド)
クランシー・ブラウン(ハドリー)
ジェームズ・ホイットモア(ブルックス)

【感想】

アカデミー賞では作品賞を含む計7部門でノミネートされたが1部門も受賞できず、作品賞を含む計6部門を受賞した「フォレスト・ガンプ/一期一会(1994)」が一躍話題となった。また、本作はアメリカ劇場公開時にはヒットせず、アカデミー賞のノミネートを受けて公開された海外で収益を伸ばし、さらにはアメリカのレンタルビデオ貸し出しランキングでは1995年トップになるなど、徐々に評判を高めていった作品である。ちなみに本作はホラー作家として知られるスティーヴン・キングの中編「恐怖の四季」の一編「刑務所のリタ・ヘイワース」をフランク・ダラボンが映画化し、本作が彼の監督デビュー作となった。

私は映画が好きになり、親からこれは見ておいたほうが良いと言われて見たのが最初である。以降の幾度となく本作を鑑賞し、「午前十時の映画祭」では映画館でも鑑賞する機会に恵まれた。そして、2022年6月には4Kレストア版が全国の一部劇場で公開されたことに伴い再鑑賞することができた。

今いる場所から新たな場所への一歩を踏み出す上で後押ししてくれる、勇気を与えてくれる一本。何かを始めたり、別の道へ歩み始めたりするのに周囲の目なんて関係ないんだと感じさせてくれる。ブルックスやレッドが感じていたように、一度どこかの世界の中に入るとそれが当たり前になり外に飛び出す勇気がなく、何なら恐怖さえ覚えてしまう。また、年齢を重ねれば重ねるほど外の世界に飛び出す勇気もなくなってくるが、そんな行動を起こすのに遅すぎることはないんだというメッセージはどのタイミングで見ても何度見ても感じるものである。柔らかな語り口の映画ながらそのメッセージは力強いものがあるし、何と言っても本作を見終えると、友人や大切な人に会いたいと思わせられる。

4Kレストア版が公開されることに伴い、初めて原作小説を読んでみたが、170ページほどなのであっという間に読破できた。原作小説では、レッドがショーシャンク刑務所内での出来事を回想する形式で、その回想が終わると、アンディに会いに行くために現在進行形で動いていくという感じである。なので、映画ではアンディ主演、もしくはアンディとレッドのダブル主演という形に改変されている。あと、映画との大きな違いは、原作でのアンディが小柄な男である点だろう。アンディを演じたティム・ロビンスは身長196センチとアメリカ人の中でも長身である。ちなみにモーガン・フリーマンが188センチ、ボブ・ガントンが187センチなので大男揃いの映画とも言える。あと、原作でのレッドはアイルランド系の白人だが、フランク・ダラボンの希望通り黒人のモーガン・フリーマンが演じている。それ以外にも細かい改変箇所はたくさんある。170ページと言えど、細かい描写などは原作の方が充実している箇所もたくさんあるので、映画との違いを比べる意味でも読んでみることをお勧めしたい。

舞台となるのはメイン州である。メイン州では死刑制度は廃止されているのでアンディは終身刑となる。ちなみにティム・ロビンスは翌年、死刑制度廃止を訴える「デッドマン・ウォーキング(1995)」を監督している。

本編が始まるとアンディの裁判と犯行をしたのではないかとに匂わせるシーンが交互に描かれ、その流れの中でオープニングクレジットも表示される。刑の執行を言い渡されるまでの間にクレジットを表示し終えるというと、本作の前年に製作された「逃亡者(1993)」のオープニングを思い出させる。

その後、アンディがショーシャンク刑務所に護送されてくる場面での空撮が非常に素晴らしい。バスを追いながらカメラが上昇していき、ショーシャンク刑務所の上空から建物全体と広場の囚人たちを映してグルッと回り、バスが刑務所内に到着するところまでを一気に見せてくれる。本作は刑務所映画であり、刑務所内の閉鎖的な映像を中心に描き、その中でこの場面のような空撮が何度か入ると大きなインパクトに繋がる。

アンディは刑務所に来てから周囲と距離を置いていたこともあってか、シスターという男たちに散々狙われることになる。ここでアンディは徹底的に抵抗する。もしそれを受け入れていたら、それこそシスターに犯される当たり前の世界で暮らしていくことになる(この辺りの描写は原作の方が充実している)。以降も彼は戦い続け、図書館で大量に本を仕入れて読書の楽しさ、レコードを仕入れて音楽を聞くことの素晴らしさ、勉強することの意義を囚人たちに気付かせていく。また、屋上で仲間にビールを飲ませる場面も味わい深いものがある。

アンディは図書館の係を務めることになるが、そこではブルックスという年老いた囚人が長らく係を務めている。ブルックスは原作では1ページくらいしか登場しなかったキャラクターであり、映画化に向けて大きく膨らませたキャラクターである。ブルックスは半世紀もの間、刑務所の中で暮らしており、年老いた今になって外の世界に出ることを恐れている。これは後にレッドがブルックスの気持ちを案ずる場面があるように、レッドも同様の感情を抱いている。冒頭の面接の場面でレッドが「更生しました。もう社会復帰できます」と前のめりで言っているのも演技だと分かる。レッドだって何十年と刑務所暮らしをした後に外の世界に出たくない。このテーマを掘り下げるためにブルックスというキャラクターを肉付けしたのは良い改変だと感じる。

そして、アンディがフィガロの結婚のレコードを刑務所中のマイクから流す場面は映画オリジナルのエピソードである。ちなみに所長の警告をよそにアンディがマイクのボリュームを大きくするのはティム・ロビンスのアイデアらしい。後にレッドが語るように、「何を歌った曲なのかは分からないがとても美しいものを聞いた」という気持ちを囚人たちに味合わせることに成功している。今まで聞いたことのない音楽で外の世界に連れて行くことができるのだ。この場面も広場にいる囚人たちを比較的ロングショットで見せるのはそういった意味合いからであろう。

自由や希望を他の囚人に根付かせていたアンディは、知らぬ間に穴を掘り始めていたのだった。ある朝突然いなくなり、アンディが脱獄しているのが分かることになる。穴の存在に気付く流れは原作とは違うが、所長がアンディの磨いた石を投げてポスターを通り抜けるというアイデアは映画らしい見事な改変である。また、アンディが脱獄した後に所長らがアンディの房にやってくる場面で、アンディの部屋の壁にアインシュタインが舌を出す有名な写真が飾ってあるのはなんとも微笑ましい。

脱獄に成功したアンディが雨の降る中両手を広げる場面はポスターイメージにもなっており、非常に有名な場面である。多くの指摘があるように、この場面は刑務所映画の傑作の1つである「暴力脱獄(1967)」のポール・ニューマンの姿に重ね合わせられている。以降、アンディが金を手にする手段や所長の結末などは原作とは異なっている。

本作はアンディが刑務所に収監されてから脱獄までに30年の時が経過しているのだが、その割にはどのキャラクターも30年経った感じはしないのは確かである。ただ、時代の移り変わりを感じさせる場面こそ、レッドが面接を受ける合計3回の場面であろう。最初の面接での面接官は年齢層が高めの男性だけであるのに対し、最後の面接での面接官は年齢層も若くなり、1人女性も加わっている。さりげない時代を反映した描写である。

その最後の面接でのモーガン・フリーマンの演技が素晴らしい(面接官を見ながら話す時に瞬きすらしていない)。その面接で本音を語ったことからようやく仮釈放の許可が下りることになる。本作で仮釈放で刑務所から出る場面はブルックスとこのレッドの2回あるのだが、ブルックスの仮釈放を刑務所の外から描いていたのに対し、このレッドの仮釈放は刑務所の外から描いている。同じ仮釈放の場面でもカメラをどこに置くかで意味合いが変わり、その違いを感じさせるには十分に意義のある描写となっている。そして、この場面で改めて感じるモーガン・フリーマンのかっこよさ。それまでのモーガン・フリーマンが囚人服だったということもあってか、スーツ姿になり、帽子を被ってカバンを持つその姿だけでカッコいい。

その後、レッドは外の社会への適応に苦しみながらもアンディの話を思い出し、あの樫の木を探しに行くことになる。レッドが乗せてもらう車が赤色なのはレッドだからという意図で撮影したわけではないらしいが、あの割と無機質な色合いの背景に赤色の車は非常に映える。また、ラストでレッドが乗っているバスの色も赤色なので、さすがにレッドだから赤色にしたのだろうと思うだろう。そして、レッドが樫の木を見つけることになるのだが、このロケーションが非常に素晴らしい(石畳はなかったので作ったらしいが)。レッドが樫の木のところへ歩き出すところで流れる音楽は、本作で繰り返し使われている音楽だが、少しするとハーモニカの音色も加わってくる。刑務所でアンディがレッドにハーモニカにプレゼントする場面も映画オリジナルのエピソードだが、映画ならではの改変に音楽を重ね合わせるのも素晴らしい。また、この一連の場面でのモーガン・フリーマンの1人演技も素晴らしい。船が書かれた箱を開ける時に周囲を確認する様子なんかも良い。原作ではその場で手紙を読まないが、さすがにこの場で読んだ方が自然には感じる。手紙を読み終えたレッドがその樫の木からバッタが飛び交う中を歩いていく姿も幻想的で美しい。

終盤になってから映像的にも徐々に開けてくる。ただ、車に乗るアンディの先に広がる海を少し映しているのだが、海に関してはラストまで待っても良かったかな。そして、レッドは意を決して親友のアンディに会いに行くラストシーンになる。当初、フランク・ダラボン監督は原作通り、レッドがアンディに会いに行く途中で終わらせるつもりだったが、映画会社から観客を満足させるためにも撮影してほしいと言われて撮影したらしい。なのでラストシーンは本当に最小限で、セリフもなく彼らの再会をロングショットで捉えるだけである。想像に任せる原作の終わり方もしみじみして良いが、閉ざされた世界から解放された2人を映すロングショットと、今まで控えめだったトーマス・ニューマンの音楽が盛り上がるところはこれほど気持ちいものかと思わせる。

レッドは仮釈放の身でありながら州外に出るという違反を犯した。こんな老いぼれをわざわざ追いかけてこないだろう。もちろん犯罪とか迷惑をかけるのはダメだが、何かを始めたり行動したりするときに周囲のことを気にする必要なんてないだろう。何度見ても感動させられ、胸に刺さるものがある。これからの人生、何度となく鑑賞することになるであろう名作中の名作。

【音声解説】

参加者

├フランク・ダラボン(監督/脚本)


監督/脚本のフランク・ダラボンによる単独の音声解説。この音声解説が収録されたのは2004年なので、約10年前のことを振り返りながら話している。制作に至るまでの経緯、原作からの改変箇所、ロケ地、主演クラスからエキストラに至るまでの俳優の印象、撮影や美術スタッフからのアイデア、映画公開後にファンから頂いた手紙など、本作に関する話を万遍なくしてくれる。本作の裏話に詳しい人なら知っている話もあるかもしれないが、監督本人の語りに魅了される部分もある。

【関連作品】

「ギルダ(1946)」…本作の中で囚人が見ている場面がある。ちなみに、原作ではビリー・ワイルダー監督の「失われた週末(1945)」を鑑賞しているが、映画化の際に他社の映画を使うと使用料が高くつくため、同社の映画でかつ本作の原題にもなっているリタ・ヘイワースが主演した「ギルダ(1946)」が選ばれた。
 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【予告編】

 

 

【配信関連】

 

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├オリジナル(英語)

 

 

<Amazon Prime Video>

 

言語

├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

 

<DVD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典

├オリジナル劇場予告編

 

<DVD(2枚組/スペシャル・エディション)>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├フランク・ダラボン(監督/脚本)による音声解説

映像特典(Disc1)

├オリジナル劇場予告編

映像特典(Disc2)

├メイキング
├ドキュメンタリー
├インタビュー:チャーリー・ローズ・ショウ
├短編:The SharkTank Redemption

 

<DVD(2枚組/公開10周年メモリアル・ボックス>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├フランク・ダラボン(監督/脚本)による音声解説

映像特典(Disc1)

├オリジナル劇場予告編

映像特典(Disc2)

├メイキング
├ドキュメンタリー
├インタビュー:チャーリー・ローズ・ショウ
├短編:The SharkTank Redemption

封入特典

├特殊パッケージ「アンディの缶箱」
├「ゴールデンボーイ -恐怖の四季 春夏編」新潮文庫
├『ショーシャンクの空に』映画本
├オリジナル・ポストカード3枚セット


<BD>

 

言語

├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

音声特典

├フランク・ダラボン(監督/脚本)による音声解説

映像特典

├オリジナル劇場予告編

├メイキング
├ドキュメンタリー
├インタビュー:チャーリー・ローズ・ショウ
├短編:The SharkTank Redemption

├スチール・ギャラリー(ティム・ロビンス/モーガン・フリーマン/その他のキャスト/ティム&モーガン/撮影現場にて)

├ストーリーボード
├ショーシャンク・コレクション

 

 

<4K ULTRA HD+BD>

 

収録内容

├上記BDと同様

 

【音楽関連】

 

<サウンドトラック>

 

収録内容

├21曲/54分

 

【書籍関連】

 

<恐怖の四季 春夏編>

 

収録内容

├「ゴールデンボーイ」

├「刑務所のリタ・ヘイワース」

著者

├スティーヴン・キング

翻訳者

├浅倉久志

出版社

├新潮文庫

長さ

├507ページ