【タイトル】
デッドマン・ウォーキング(原題:Dead Man Walking)
【Podcast】
Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。
Apple Podcastsはこちら
Google Podcastsはこちら
Spotifyはこちら
Anchorはこちら
【概要】
1995年のアメリカ/イギリス合作映画
上映時間は122分
【あらすじ】
尼僧のヘレンは、自分に助けの手紙を書いてきた死刑囚のマシューのもとへ面会に向かう。マシューは無罪を主張するのだが…。
【スタッフ】
監督/脚本はティム・ロビンス
音楽はヴィッド・ロビンス
撮影はロジャー・ディーキンス
【キャスト】
スーザン・サランドン(ヘレン)
ショーン・ペン(マシュー・ポンスレット)
ロバート・プロスキー(ヒルトン)
レイモンド・J・バリー(アール・デラクロア)
R・リー・アーメイ(クライド・パーシー)
スコット・ウィルソン(ファーリー牧師)
ジャック・ブラック(クレイグ)
ピーター・サースガード(ウォルター)
【感想】
ティム・ロビンスが「ボブ★ロバーツ/陰謀が生んだ英雄(1992)」に続いて撮った監督2作目。主演した当時の妻スーザン・サランドンはアカデミー賞主演女優賞を獲得した。
アメリカ国内では死刑制度は州単位で見ると残置と廃止が二分している。日本でも死刑制度は残置しているが、世界的には死刑制度のある国の方が少ない。ただ、人口度合いで見ると死刑制度のある国の方が多くなる計算である。
そして本作は、死刑廃止論者の原作者の小説を死刑廃止に賛成するティム・ロビンスが監督したのだから、最後にマシューが言う「人を殺すのは良くない」というのがこの映画の主張だろう。ただ、マシューが最後に罪を認めて謝罪するのは、奇しくも死刑制度があったからのようにも見える。映画的にはヘレンの祈りが通じたように描かれているが、果たしてそうだろうか。マシューの眼前に死が迫ったことが一番の要因だったように見える。そう考えると、シスターのヘレンが祈ったり、聖書の言葉を読み上げたりしてもそれが叶わない結末とも取れる。
そして本作にはキリスト教に関する言葉がたくさん出てきて、聖書からの引用で問答が繰り広げられる。キリスト教にも解釈が山のようにある。それと同じように死刑制度に対する考えもたくさんあるということだろう。ただ、いくら聖書をめくったってそこに答えがあるとは限らない。あまりにもキリスト教の聖書や教義から答えや考えを引き出そうとしている場面が多くあるように思うが、キリスト教に馴染みのない他国の人間から見ると結果的にそれには限界があると言っているようにも見える(もちろんそんなことは意図していないと思うが)。
死刑廃止論者の書いた小説の映画化とは言え、本作には被害者遺族も登場し、彼らの感情や考えも映画内に表現されているので、必ずしも死刑廃止一辺倒という映画ではないだろう。ただ、本作は主人公のマシューがレイシストで1人の男性の命を奪った極悪人であることには変わりなく、その主人公に少し寄りすぎているようにも感じる。
また、マシューが本当に殺人を犯したのかは彼が告白する最後まで映画的には伏せられている。映画内の緊張を保つ意図はあったと思うが、できれば殺人を犯した事実は認めているが、死刑囚としての人権を主張するという、どう考えても擁護できない男として登場した方がより分かりやすい映画にはなったのではなかろうか。これも犯罪者側に寄りすぎていると感じる要素ではある。
殺人という自分の身の回りに滅多に起こりえない状況であれば冷静な議論はできるかもしれないが、それが自分や自分の身の回りに起こったとして感情抜きに議論することはできないだろう。いくら死刑囚にも人権があるからと言って、被害者遺族以上に厚遇されていて何も思わない人はいないだろう。
結果論かもしれないが、映画の主張とは違う意図しない結果も本作は招いていると思う。死刑廃止論者だった人がやっぱり死刑は必要かもしれないと思うような。議論を巻き起こすという意味では良い作品かもしれない。
【関連作品】
「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ(2015)」…マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー。アメリカの課題を解決すべく他国に出向いてその国の文化や法律を知っていくというもの。中でもノルウェーのハルデン刑務所という世界的に最も人道的と言われる刑務所が登場する。
取り上げた作品の一覧はこちら
【ソフト関連】
<DVD>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
映像特典
├予告編
<BD>
言語
├オリジナル(英語)
├日本語吹き替え
音声特典
├ティム・ロビンス(監督)による音声解説
※日本語字幕は付いていません。
映像特典
├予告編