【作品#0159】おくりびと(2008) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

おくりびと

 

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

2008年の日本映画
上映時間は130分

【あらすじ】

チェロ奏者として楽団で仕事をしていた小林大悟はある日突然楽団が解散し職を失うことになり、妻とともに地元の山形に帰ることにする。広告で見つけた「旅のお手伝い」の募集を見た大悟はその会社に面接に行くと、そこは納棺の仕事であった。

【スタッフ】

監督は滝田洋二郎

音楽は久石譲

撮影は浜田毅

 

【キャスト】

 

本木雅弘(小林大悟)

広末涼子(小林美香)
山崎努(佐々木生栄)
余貴美子(事務の上村)
吉行和子(銭湯のおばちゃん)
笹野高史(銭湯の常連客)
杉本哲太(山下)
峰岸徹(主人公の父)

 

【感想】

 

日本映画がアカデミー賞の外国語映画賞を受賞し大きな話題を呼んだ作品。2021年10月には中国でも公開されヒットされていることもニュースになった。

 

主人公の最初の仕事というと、業界向けDVD用のビデオ撮影である。本作に出演している山崎努が主演した「お葬式(1984)」という映画で、お葬式でのマナーに関するビデオを登場人物が見るシーンがあり、そこからの引用ではないかと感じる。また、その場面で本木雅弘はどうやらお尻を触られており、彼の主演した「ファンシイダンス(1989)」が頭をよぎる。

 

本作の主人公は流れのままに納棺師の仕事を急にやることになる。ところが、この仕事に就いた主人公に対して、同級生の山下も、主人公の妻も、葬儀に参加する大人たちも差別的、偏見の目を向けることになる。そしてこの仕事に就いた主人公を「汚らわしい!」と言って妻は出ていってしまう。その後しばらくして妻は帰って来るのだが、理由は赤ちゃんが出来たからであって、この夫婦における夫の仕事問題は何も解決していない。そうすると、主人公に1本の電話が入り、妻も連れて行った銭湯のおばちゃんが亡くなったというのだ。そして主人公の妻や山下が主人公の納棺師の仕事ぶりを見て感心し、認めていくという展開となっていく。人の死を扱っている映画にしては、夫婦や友人関係の問題を解決させるために誰かを死なせるという脚本はさすがにいかがなものかと思う。

 

また、主人公は父親に捨てられて育ってきたことがコンプレックスで、その話が映画内で幾度となく登場する。あまりにも父親の話が登場するので、途中で主人公の父親が終盤に登場するのが分かってしまう。「なぜか携帯電話を会社に忘れた」主人公は、その父親の死を会社に戻って知ることになる。それを知った主人公は父親に会いに行くつもりはないと言うと、事務の上村が「行ってあげて!」と強い口調で説得を始める。実は彼女は主人公の父親と同じく、昔子供を捨てて地元を飛び出した過去を持っていたという話を長々話し始める。こんな都合の良い話があるだろうか。結局主人公は父親が眠る場所へ出向くことになると、葬儀屋の父親の遺体に対する扱いがあまりにも雑すぎて、主人公が怒り自分でやると言い出すのだ。

 

結局、主人公は映画が始めってからずっと翻弄されっぱなしであり、主体的に行動する場面がほとんどない。妻や山下との問題は銭湯のおばちゃんを死なせることで解決させ、父親との和解(!?)的展開も父親を死なせて、かつ携帯電話を会社に忘れるという設定にすることで解決させ、葬儀屋に父親の遺体を雑に扱わせることによって納棺師の仕事をすることになる。主人公が何かを解決させるために動いたのではなく、周りで勝手に何かが起こって勝手に解決したようにしか見えないのだ。妻が出ていったのに畦道にわざわざチェロを持ち出して呑気に演奏している様子を見て何を感じればよかったのか。

 

主人公は父親を捨てられた過去を持っているのだから、自分が父親のような人間になるかもしれない、あるいは出ていった妻から父親と同じように見捨てられるかもしれないという不安があってしかるべきだが、主人公はそのようなことを感じている場面もない。何かに翻弄されて次第にイキイキしていく主人公を見るのは個人的に好きだが、本作の主人公はあまりにも受け身で、来るもの拒まず去る者追わずにしては、出ていった妻に電話することも、仕事を休んで迎えに行こうともしないのはどう考えてもおかしい。

 

今まで妻に話していなかった父との思い出話を徐々に打ち明ける後半のような展開にもっと主人公の主体性が欲しかった。納棺師というあまり知られていない仕事を世に広める契機となり、主人公の所作などがとても美しいだけに、主人公の行動や「死」に対するあまりにも雑な扱いにはがっかりとしか言いようがない。世間で評価されているほどの作品には感じず。

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(日本語)

 

【ソフト関連】

<DVD>

言語
├オリジナル(日本語)

映像特典

├メイキング「おくりびとの、おくりびと。」
├未公開映像「納棺の儀」
├予告編集

 

【書籍関連】

 

<納棺夫日記>

 

形式

├電子

├紙

出版社

├文春文庫

著者

├青木新門

長さ

├227ページ