【作品#0246】ドリームプラン(2021) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

ドリームプラン(原題:King Richard)

 

【Podcast】

Podcastでは、作品の概要、感想などについて話しています。


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【概要】

 

2021年のアメリカ映画

上映時間は144分

 

【あらすじ】

 

テニス経験のないリチャード・ウィリアムズは、ビーナスとセリーナという2人の娘を生まれる前から世界一の手にスプレイヤーにすべく計画を立てていた。

 

【スタッフ】

 

監督はレイナルド・マーカス・グリーン

製作はウィル・スミス

音楽はクリス・バワーズ

撮影はロバート・エルスウィット

 

【キャスト】

 

ウィル・スミス(リチャード・ウィリアムズ)

アーンジャニュー・エリス(オラシーン・ウィリアムズ)

ナサイヤ・シドニー(ビーナス・ウィリアムズ)

デミ・シングルトン(セリーナ・ウィリアムズ)

ジョン・バーンサル(リック・メイシー)

トニー・ゴールドウィン(ポール・コーエン)

 

【感想】

 

言わずと知れたテニス界のビッグプレイヤーであるビーナスとセリーナ姉妹の父親に当たるリチャード・ウィリアムズを主人公にした伝記映画。邦題は「ドリームプラン」だが、原題は「King Richard」となっている。プロデューサーで主演も兼任したウィル・スミスはゴールデン・グローブで主演男優賞を初受賞している。また、コロナウイルス蔓延による撮影中断で、当初ポールを演じたリーヴ・シュレイバーは降板し、トニー・ゴールドウィンが引き継いでいる。

 

テニスにそれほど興味のない日本人でも知っているビーナスとセリーナ姉妹。彼女たちがどれほどの活躍をしたのかは周知の通りだが、映画の最後の試合で、ビーナスは敗戦を喫することになる。「試合に負けても勝負に勝つ」というスポーツ映画の伝統「ロッキー(1976)」のイズムを引き継いでいる印象だ。

 

たとえどれほどの才能があったとしても黒人というだけで出る杭は打たれる。そうならないようにとリチャードは娘たちを大事に扱う。21世紀になってなお人類に蔓延る人種差別。若くして歌手、俳優として大成功を収めたウィル・スミスも差別を受けたり、嫌な思いをしたりしてきたことだろう。ただ、本作には主人公らが露骨に黒人差別を受ける場面はない。リチャードは序盤何度も暴行を受けるが、暴行するのは彼と同じ黒人である。また、リチャードが黒人差別を受けたとして白人に迫る場面も、どう考えたってリチャードの思い込みであり、言いがかりでしかないように受け取れる。彼には差別を受けた過去があったとしても、映画的には「リチャード、それは差別じゃないよ」と言っているようだ。

 

また一方で、このリチャードは男尊女卑の思想の持ち主でもある。黒人だからと言って嫌な目に遭ってほしくない、強くあってほしいという気持ちの表れが、結果的に妻や娘たちを追い込むことにも繋がっている。彼は黒人差別の被害者であると(思い込んでいるだけだが)同時に、男尊女卑の加害者でもあるのだ。自分の考え以外の物を認めず、排除するというリチャードの考えや態度は、白人以外の人間を排除しようとする白人のようにも見えてしまう。だからこそ原題は「King Richard」なのだろう。家族で「シンデレラ」を見て、「謙虚さ」を学んでほしかったようだが、その本人がその「謙虚さ」を全く持っておらず、さらにそれを自覚していないところはまさに裸の王様である。

 

そんなリチャードの間違いを気付かせてくれるのが彼の妻オラシーンである。何かあると逃げるリチャードへ意見する台所での場面は、今までビーナスの試合を直視できずにいたリチャードが会場に来る場面で回収もされている。

 

映画の最後の試合こそビーナスは敗戦を喫するが、その後の字幕でビーナスとセリーナの活躍が表示される。運、環境、努力、親やコーチなど様々な要因でビーナスもセリーナもテニスプレイヤーとして大成功を収めたことだろう。本作は、自分を黒人差別の被害者だと異常なまでに思い込み、家族の中では王の如く独裁的な父親ではあるが、ビーナスとセリーナが生まれる前から立てていた計画通りに進めたことで、彼女たちを世界的なテニスプレイヤーに育て上げたと言っているようにも見える。要するに、子育ても、テニスの指導も何が正解か分からないということだ。現代では行き過ぎた指導はご法度とされており、線引きをしてある一定以上のことはコンプライアンス的にもできないだろう。ただ一方で、そのある一定以上の指導が実を結ぶ可能性もあるし、それを望んでいる子供たちもいるかもしれない。改めて子育てや教育の難しさを感じるし、そういった画一的な教育へ一石投じる作品にもなっていると感じる。「セッション(2014)」を見終えた時の感想とほんの少しだけ似たものを感じた。

 

本作は本ブログ寄稿時点で予算の5,000万ドルに対し、全世界で3,600万ドルしか売り上げておらず、いわゆるコケた作品である。アフリカ系アメリカ人のウィル・スミスが主人公でありながら、黒人差別を受けていると思い込み、家庭内では独裁者で、そのことに気付かされるという映画になるので、同じ黒人層にも受けなかったのかもしれない。ただ、そんなリチャードの教育の結果、娘たちは大成功を収めたのだから教育とは分からないものだと思わせるものはある。

 

 

 

取り上げた作品の一覧はこちら

 

 

 

【配信関連】

<Amazon Prime Video>

言語
├オリジナル(英語)

 

<Amazon Prime Video>

言語
├日本語吹き替え

 

【ソフト関連】

<BD+DVD>

言語
├オリジナル(英語)

├日本語吹き替え

映像特典

├「ドリームプラン」ができるまで
├ウィル・スミスの役作り
├ビーナスとセリーナ
├未公開シーン集

├「ドリームプラン」ができるまで