【タイトル】
最高の人生の見つけ方
【概要】
2019年の日本映画
上映時間は115分
【あらすじ】
偶然同じ病室になった幸枝とマ子は、同じ病院で亡くなった12歳の少女が記した「死ぬまでにやりたいことリスト」を共に実行することになる。
【スタッフ】
監督は犬童一心
音楽は上野耕路
撮影は清久素延
【キャスト】
吉永小百合(北原幸枝)
天海祐希(剛田マ子)
ムロツヨシ(高田学)
満島ひかり(北原美春)
賀来賢人(三木輝男)
前川清(北原孝道)
【感想】
ロブ・ライナー監督、ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン出演の「最高の人生の見つけ方(2007)」の日本版リメイクというよりかは翻案。主演の2人は女性に性別が変えられ、オリジナルでモーガン・フリーマンが演じた役どころを吉永小百合が、ジャック・ニコルソンが演じた役どころを天海祐希が演じた。ちなみに吉永小百合と天海祐希は「千年の恋 ひかる源氏物語(2001)」以来、18年ぶりの共演。また、吉永小百合と満島ひかりは「北のカナリアたち(2012)」以来の共演。
上述したようにリメイクというよりかは翻案というのが正しいだろう。大まかな枠だけ借りて後はオリジナルストーリーを作り上げたと言える。同じ病室になった2人が仲良くなっていく過程は、オリジナルではそこまで違和感を感じなかったが、本作ではかなり違和感がある。病院で喫煙して火災報知器が作動しワンフロアを水浸しにしたマ子が幸枝と同室になるのだが、このマ子は不快なことしか口にせず、どうやってこの2人が仲良くなったのかがさっぱり分からない。後に明かされるが、マ子が水浸しにした張本人であることを幸枝は知っていたのだから尚更である。さらに、マ子は主婦としての生き方をつまらないものだと思っており、仲良くなった中盤以降にもそれを幸枝に平気で言う。こんな性根腐り果てた人間と旅に出る神経が分からない。
あと、賀来賢人演じた若い浮気性の夫がいるという設定も疑問だ。「病気の事実を知られたら株価が下がる」とまで会社のことを気にする人間が、男女関係でこんなに脇が甘いと思えないんだよね。夫を悪役にする意図は分かるが、そうじゃないと思う。
というかこの2人が12歳の少女の残したリストを実現していくと言う流れもさっぱりである。幸枝がわざわざマ子に電話してまで一緒に行きたいと思う理由も分からないし、そもそも自分のやりたいことではなく、12歳で亡くなった少女のやりたいことを実現すると言うのもいささか納得しがたい。この12歳の少女と話したのもたったの1回だけじゃないか。しかも、それを2人で一緒に実現するのではなく、「これは無理だからあなたがやって」というように、2人のうちどっちか1人が実現できれば良いという非常に適当なものである。こんな適当なルールでリストを最後までやり遂げようとするモチベーションが見えてこない。スカイダイビングはアメリカに行かずとも日本でもできるし、エジプトに行く理由もさっぱりだわ(合成丸わかりなのも含めて)。
互いの家族問題に口を出すくだりはオリジナルでも疑問に感じたところだったので、本作でも同じく疑問に感じた。まず、幸枝が強引にマ子の父親に会わせる場面。マ子はすぐにその場から立ち去ろうとするのに、乗って来た車に乗らずに走って公園に行く。その公園で鉄棒を偶然見つけて、リストにあった「逆上がりをする」を実現して、親から拍手をもらって仲直りってこれはなかなか酷い脚本だぞ。天海祐希の泣きの演技も酷く見えたが、この脚本だったら無理もないわ。
それから幸枝の家族問題は、夫が無関心で、長男は引きこもってゲーム三昧、長女は母親の結局自分しか考えていないことに苛立っているということだ。自分が癌になっても夫に話せないというのは、夫婦関係として完全に破綻していると言える。それをちょっと話したくらいで、新婚さながらの仲の良さになるってそれはさすがにないだろう。幸枝が娘に結局押しつけがましい感じが、本作の脚本でキャラクターに都合よく動いてもらおうとしているところと皮肉にも重なっているように思える。こんなに簡単に人って動かないと思うんだよね。幸枝が死ぬ代わりに、娘のお腹には新しい命が芽生えている(この突然の展開もどうかと思うが)。幸枝はその娘が妊娠したという事実を長男を部屋から引っ張り出す手段として使い、家族がその場に揃うと全員に「好き!」って言うのは流石に気持ち悪いわ(むしろ今までの行動や言動を謝るべきだ)。ますますこの幸枝が自分のことしか考えていないように見えていく。
そして最後に「実は少女は生きていました」ってのは、はっきり言ってなしだわ。この少女を生かしていたのは製作者側の優しさかもしれないが、そんな映画の土台をひっくり返すようなオチはいらない。こんなオチにするくらいなら、この少女の話をなしにして、主人公2人が自分たちの力で自分たちの人生を見つめ直させるべきだわ。というか、主人公2人の病気設定が必要だったのかすら怪しくなってくる。オリジナルの2人よりもピンピンしてたよね。その後、その少女に幸枝はリストを返そうとすると、「大丈夫。私、生きるから」と言って返却を断られる。確かにあの当時に比べれば「死ぬ」よりも「生きる」可能性は高いが、誰だって明日死ぬかもしれない。このリストのおかげで幸枝は楽しい人生を送れるようになったのだから、このリストは「その思い出とともに」この少女に返すべきだわ。ここで幸枝がこの少女に思い出を楽しそうに語り、夢を実現することの楽しさを少女に感じてもらうべきだろう(YouTubeで楽しそうにする幸枝を見る場面はあるが、あれはあくまで偶然)。この大事な場面で相手のためになれなくてどうするんだ。
マ子は死後に遺産2億円を幸枝に遺すのだが、余命いくばくもない人へこんなことすべきではないわ。結局、そのお金で宇宙船を作ることになり、その宇宙船に彼女たちの名前が付けられているというオチである。エンドクレジットでは、死んだはずの2人が宇宙飛行士の姿で宇宙を笑顔で彷徨っている映像が流れる。もうどうにでもなれって感じ。
振り返ってみると、結局、吉永小百合がウェディングドレスを着たかっただけなんじゃないかとさえ思えてきた。吉永小百合から滲みでてこない生活感のなさが本作のキャラクターを生かしていないし、夫役が前川清ってどういうことだよ。良かった点がほとんど見つけられない。ただ、ムロツヨシが余興で満島ひかりに何度も握手を求める場面は面白かったよ。
【関連作品】
「最高の人生の見つけ方(2007)」…本作のオリジナル
「最高の人生の見つけ方(2019)」…上記作品の日本版リメイク
取り上げた作品の一覧はこちら
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