【作品#0205】引っ越し大名!(2019) | シネマーグチャンネル

【タイトル】

 

引っ越し大名!

 

【概要】

 

2019年の日本映画

上映時間は120分

 

【あらすじ】

 

江戸時代前期。姫路藩主の松平直矩は豊後国日田藩への国替えを命じられる。多大な労力とお金を要する緊急事態に、引っ越し奉行まで亡くなったばかりだった。そこへ書物を読むのが好きな春之介が引っ越し奉行に任命される。

 

【スタッフ】

 

監督は犬童一心

音楽は上野耕路

撮影は江原祥二

 

【キャスト】

 

星野源(片桐春之介)

高畑充希(於蘭)

高橋一生(鷹村源右衛門)

及川光博(松平直矩)

松重豊(本村三右衛門)

西村雅彦(藤原修蔵)

濱田岳(中西監物)

富田靖子(春之介の母)

ピエール瀧(北尾俊蔵)

向井理(柳沢吉保)※特別出演

 

【感想】

 

「超高速!参勤交代(2014)」の原作/脚本で知られる土橋章宏による原作「引っ越し大名三千里」の映画化。

 

まず、春之介と於蘭が結ばれる流れが急すぎる。於蘭は引っ越し奉行をしていた父が死に追いやられたことで武士を嫌っていると春之介に言うところが彼らの出会いである。その後、春之介が於蘭の父の墓参りをしているところを於蘭が偶然見かけ、さらに於蘭の父への思いを春之介が話していたところを聞いて於蘭の気持ちは変わるのだが、設定として安っぽすぎる。ここは映画的に大事なところだと思うが、安い連続テレビドラマみたいな演出だ。そもそも人付き合いの苦手で書庫にこもっている春之介がいくら酷い事情を聞いたとはいえ、於蘭の父の墓参りに行くほどの行動力ある人物には思えないんだよね。そして、もし仮に墓参りしたとしても遠く離れて見ている於蘭に聞こえるくらいでかい声で思いを口にしていたとは思えない(声が小さいと散々指摘されていたじゃないか)。その後も於蘭が積極的に春之介にアプローチして強引に結ばれることになるが、本当に強引だわ。どこに惚れたのかさっぱり伝わってこない。

 

春之介は一時は切腹を命じられるまでになるが、於蘭がなぜか急に駆けつけて機転を効かせたことによって春之介は助かる。その後は、春之介は於蘭の父の残した資料を頼りに引っ越しに向けてあらゆるものを切り詰めていく。ここでは具体的に「どれくらい」切り詰めないといけないのかがピンとこないのが問題である。所有物の半分は捨てろと言っていたが、当時の人たちがどれくらいのものを所有していたのかも分からない。江戸時代に姫路から日田まで引っ越すのが大変なのは考えなくても分かるが、「引っ越しする準備のできていない状態」から「引っ越しできる状態」になるまでに何がどう変化したのか、春之介はどう貢献したのかがあまり伝わってこない。これでは於蘭の父の残した資料のおかげということになる。

 

本作では正名僕蔵演じる佐島が悪役として描かれている。引っ越しには非協力的であるが、春之介が機転を利かせたことで、佐島の所有するあらゆるものが「見切り」されていく。これはこれで気持ち良さがあるのだが、そこで映画的に話がある程度終わってしまっているように見える。その後、佐島の皿は後の殺陣のシーンで武器として使われ、佐島が悲しむ場面があるが、はっきり言って余計である。

 

あと、本作のテイストにリアル寄りな戦闘シーンは全くもって合っていない。ちょっと残虐すぎるし、本作のテイストならライトなアクションが合ったはず。殺すんじゃなくて、お仕置きするとかのレベルが妥当。というか、西村雅彦演じた藤原修蔵による裏切りという設定が必要だったと思えないし、見せ場のための見せ場にしかなっていない。

 

また、本作はコメディ映画でもあるが、一部演出に疑問がある。例えば、於蘭が切腹させられそうになっている春之介を助けにやって来るシーン。廊下で止まれず立ったまま滑ってフレームアウトすることがコメディとして演出されている。確かに面白さがあるシーンだが、ここは事前に「フリ」が必要だと思う。例えば、廊下をきれいに磨くシーンがあるとか、このシーンを面白くする準備をしておかないといけない(もちろんその「フリ」にもちゃんと意味のあるシーンになっていないとダメだが)。これなしにただ滑ってフレームアウトするだけだと、いきなり一発ギャグをやるのと同じになってしまうんだよね。

 

ようやく引っ越しが終わったかと思いきや、ラスト20分で一気に10年以上のジャンプカットになる。松平家はその後も国替えを命ぜられ、最後には加増されることになってハッピーエンドとなっている。そもそも冒頭の国替え通達時になぜ減封されたのかも分からなかったので、最後に加増されたところで、また減封される可能性もあるんじゃないのと思ってしまう。映画的には最初の引っ越しが終わるところにエンディングを持って来るべきだろう。最後の20分で急に10年以上経過した世界を見せられても、あの苦労した引っ越しは何だったのかと思えてくる。

 

結局、このデフレの時代にこんな映画が作られると、「貧しくても切り詰めて、場合によっては生活水準を落として生活しても幸せに暮らすことができ、最後には報われますよ」と言っているように聞こえる。確かに工夫も必要だし、幸せも人それぞれ、努力すれば最後には報われるかもしれない。ただ、そうは問屋が卸さないだろうし、新たに雇用を創出するインフレに向かうような話が見たいな。

 

 

 

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