民主主義は英語デモクラシー(democracy)の訳語で、大衆(demos=common people)の意志で政治を決める体制である。発祥の地古代ギリシャで、民主主義は衆愚政治に堕落するとの結論を得ていた筈だが、その後、近代文明の恩恵の下で再び世界中で高い地位を得た様に見えた。
 
戦後の近代技術文明を背景にした経済発展が進行中には、民主主義は政治システムとしてまともに機能しているかの様に見えたが、経済発展が停滞期に入った現代では、再び民主主義は衆愚政治という本質を表わす様になったのだろう。昨日のギリシャでの国民投票の結果は、それを象徴しているように思う。あらゆる国家で、民主主義政治=衆愚政治の確認が今後行なわれるだろう。その様な変化が現れない国があれば、そこには陰の権力(注釈1)が存在する筈であると思う。
 
我国の政治にも、衆愚政治の兆候が現れていると思う。大衆の政治への期待と政治家の実力のズレは大きい。日本の政治家で高い地位を占める人の殆どは政治家の家系に産まれた政治貴族、つまり政治屋である。昨日の世界遺産登録の際の韓国とのやり取りについて書いた様に、政治屋は二枚舌を駆使して誤摩化すことが政治の技だと思っている。このままでは衆愚政治の弊害が財政問題においても顕在化し、ギリシャの二の舞になる可能性大である。
 
政治家でも何でも、社会の第一線で働く者は選りすぐられたプロフェッショナルでなければならない。しかし、大衆には骨董品の評価がまともに出来ない様に、政治家の本物と偽物の区別も出来ないから、大衆迎合的なことを言う政治屋を選挙で選んでしまう。日本にも三権以外の政治的権力として、霞ヶ関の官僚機構があるらしいが、行政と密着している関係で、高い見通しの良い視点からの分析や思考が出来ない為、まともな智慧を出さないだろう(再度注釈1)。
 
ギリシャ問題として現在話題になっている財政問題などは(注釈2)、(上記のように)経済発展しているときには、棚上げや据え置きで一時しのぎが出来る。何故なら、棚上げした財政問題は、経済発展や通常同時に起こるインフレにより、相対的に小さくなるからである。その様な情況下では、幸せや金のバラマキで大衆迎合的に振る舞えるので、政治屋と謂えども、それなりの成果を演出できるだろう。
 
現在、米国が中心になって押し進めた経済のグローバル化により、先進諸国のものだった経済発展は発展途上国に移動してしまった。そして、研究開発能力や新しい発想を産む文化を持たない自称先進国は、所謂“先進国病”という、デフレ経済に悩むことになる。中央銀行が、利下げや債権購入という形で量的緩和という点滴治療をしても、それは単に時間稼ぎに過ぎない(注釈3)。
 
時間が経過すれば、輸入品の価格上昇などから始まる悪性インフレにより、国民は自分の預金の価値の低下を実感することになる。一定の資産をもっていて株などに投資していた層は、量的緩和の金が株式市場に流れ込んだために、株高という形である程度の配分を得ているだろうが、それも恐らく半分程度は世界的金融機関や投資ファンドが手に入れている筈である(注釈4)。そして、日本国民の大半である労働者の収入は決して増えないだろう。
 
財政の健全化は、節約か新たに稼ぐ方法を探して国家の経済を拡大するか、方法は二つしかない。ギリシャの首相は他のユーロ圏諸国を脅迫する方法をとっているが、それはまともな方法ではない。収入以上の暮らしを維持するという夢からさめず、財政再建案を受け入れない方に票をいれるのは、大衆は衆愚であることの証明である。
 
注釈:
1)マスコミを第4の権力ということがあるが、それは他国の戦略の下請けになるか、衆愚政治の旗振役になるか明確ではない。ここでは政権と密接に関係した民間シンクタンクなど、或いは、政府内機関を含めて広い意味での官僚機構などである。(当方素人につき、コメント歓迎します。)
2)財政問題が深刻なのは、先進国の中で日本が筆頭である。国民の貯金を全て召し上げて解決するしか方法がなくなるだろう。
3)通貨安にして、国内の人件費やエネルギーコストをドル換算で下げて、競争力を回復するという捨て身の手法である。それは国民の老後の頼みの綱である預金の額をドル換算で下げることにつながる。当座は気付かないかもしれないが、最終的には悪性の物価上昇、そして(又は)実質賃金低下と言う形で、全ての国民の経済力低下を招くことになる。しかし、この国にはi-padgoogleなどを産み出す力がないのだから仕方がない。それは大学教育の健全化、経済における規制緩和、更に、個人の自立や健全な競争の文化の発生(導入などの手を打たなければ)を待たなければ、米国のような力は生じない。資源小国である日本は、”世界に類を見ない何か”がなければ生きていけない。それは伝統的な職人の技術かも知れないし、日本の美的感覚などかもしれない。それを生かし育てるは政治の役割である。本物の政治家を何とか育てなければ、現状維持も難しいだろう。
4)日本の代表的企業の株主を見ると、トヨタ自動車の30%、日立製作所の45%、ソフトバンクの46%(昨年後期)は外国人の所有である。全体でも日本株の35%程度は外国人が持つ。更に、日本の個人投資家には素人が多いが、外国人機関投資家は将にプロである。多量の信用取引で、巧みに株価操作を合法的に行なっている様だ。
維新の党は、橋下徹現大阪市長と松井府知事などの大阪府一部議員の間で2009年に結党された維新の会が出発点である。その後中央政界との合併で現在の政党となったが、大阪都構想の住民投票における否決とそれに伴う橋下氏の政治家引退発言でその中核を失った様に見える。
 
橋下氏らが当初目指した政治改革は、既存の政治屋では出来ない。何故なら、選挙民にも応分の負担を強いる改革であり、それは大衆に迎合する姿勢だけでは為し得ないからである。一方、現在国会で多数を占める政治屋は、主に疑似世襲制の政治貴族であり、彼らが最優先するのは国会などにおける議席と地位であるから、本質的に大衆迎合的である。国民にも応分の負担を強いる可能性の高い国家の政治改革は、精々二枚舌を用いて出来る範囲に限られ、決して正面から取り組むことはできないからである。
 
維新という名が、幕末の薩長の下級武士を中心とする勢力により達成された“明治維新”に由来するのなら、最終的に従来の権力組織の江戸幕府に相当する霞ヶ関の政治貴族達は、排除すべき対象である筈だと思う。
 
勢力を拡大して改革に至る時間を短縮するべく、既存政治屋達との連携をするには、相応の実力があってのことであり、実力不足の維新の会としては完全なミスだったのではないだろうか。

本来の連携すべき相手は、社会に広く分布している政治に関心を持つ一般市民だと思う。彼らは、政治貴族が創った政治と一般市民との間の壁が障害になって、政治に参加出来ないでいると思う。彼らの現職は、例えば、商社、証券金融会社、製造業界などで、世界を舞台に広く活躍している社員や、大学等研究機関の研究者などだろう。時間はかかるが、もう一廻り大きな台風の目を育てて欲しかった。台風は、大気圏の広大な範囲、つまり大衆、の中に充満したエネルギーを吸い込むメカニズムである。既存のあらゆる組織は、一部の利益を代表したものであり、大衆のエネルギーを逸らしはするが、それを吸収することは出来ない。
 
もちろん、それは非常に困難な作業である。現在は幕末期と違って、命をかけてまで社会改革に身を投じることが、一度しかない人生において価値あることと判断する人など極めて稀だからである。橋下氏はその数少ない一人であるが、日本の中には10人や20人は居るだろう。それらの人を発見するまで、地方の維新の会で活動した方が良かったのかもしれない。
 
全国規模へと連合する時期は、他の数カ所の地域に維新の会と似た組織が出来た時である。現在でも、そのような組織は本物かどうか解らないが名古屋にしかない。橋下氏が全国展開するのは、都構想という看板政策を実現するためだったのだろうが、早すぎたと思う。橋下氏も十分そのことには気付いておられ、関西維新の会としての立て直しを考えておられるようである。
昨日、軍艦島などの明治日本の産業革命遺産として世界遺産に申請した諸施設が、ユネスコの審査委員会で認められて、世界遺産に登録されることになった。この件、韓国が「戦時中に朝鮮半島からの数万人が強制労働に従事させられ、94人が死亡した」と主張し、その登録に反対していた。
 
その審査を有利にするため、ユネスコ日本代表部の大使が「多くの朝鮮半島出身者が意思に反し、厳しい環境で働かされた」と発言し、韓国の反対をそらせる事に成功し、登録が決定した。その後、外務大臣は日本国内に向けて「上記発言は、強制労働があったと言った訳ではない」と注釈している。このようなグレイ領域に話を持ち込んで誤摩化すのは、政治屋の常套手段である。
 
もっとも大切なポイントであり、且つ、ほとんど無知な西欧人(注釈1)が見落とすだろうこととして、当時韓国は日本国の一部であったことがある。つまり、ここでの朝鮮半島出身者は当時日本国民だったのである。そして、政府の命令で(つまり合法的に)半島から軍艦島のある九州へ移動させられたことを、意に反してと表現して良いのか?という点を日本政府は誤摩化しているのだ。

あの戦争の際、法令に従って徴兵され、南方の島で無惨な死をとげた多くの軍人に対して、“意に反して”兵役につかされたとは言わないのだ(注釈2)。上記ユネスコ大使の発言の“意に反して”とはどういう意味なのか、それに関与した日本政府は深く考えていないのか、誤摩化しているかのどちらかである。
 
つまり、“意に反して”は、私的な感情のレベルでの“意に反して”なのか、それとも“違法に”というレベルなのかという大きな幅がある言葉なのだ。あの発言を聞いた西欧諸国の人は、“異国の人間を違法に働かせた”つまり、シベリアで日本兵が経験したような”強制労働に従事させた”ととるだろう。それが韓国の狙いであり、その俎板の上にまざまざと乗ってしまったのである。俎板に乗った鯉が、そんな筈ではないと言っても、何の力にもならない。
 
また、特別に「朝鮮半島出身者」と限定して、「厳しい環境で働かされた」と発言したことで、同じ環境で働いていた日本人とは、労働環境も条件も全く異なるとの印象を強くあたえ、朝鮮半島出身者にだけ特別に厳しい差別的労働が与えられたと解される。軍艦島には普通の街中と同じように学校から種々の店があり、竹田恒泰さんの言葉によると、韓国人用の遊郭まであったということである。http://blog.livedoor.jp/doorkaz/archives/1030715518.html
それでもあのような発言をして世界に誤解を与えてまで、世界遺産指定が欲しいのか?本当に愚かな人々だ。

注釈:
1)ドイツのメルケル首相がドイツがナチスの罪を認めた様に、日本も韓国人に対して犯した従軍慰安婦などの罪を潔く認めて謝罪する方が良いと安倍総理に言ったと記憶している。その際、日本では相当批判が沸いた。
2)韓国もそのあたりは解っているので、徴兵された兵士の待遇に関しては何も言ってこなかった。