米の値段がこの一年間に2倍以上となり、政局にも影響してきた。今回の米の高騰が何故起ったのか不明だが、この異常な価格高騰を数か月間放置し、何の有効に対策を施せなかった自民党政権の無能さには呆れる。

ずっと前から農水省はコメが余るので輸出すべきだと考えていた。そして相当量のコメが外国に売られていたので、数年前から過剰輸出や中国人などの日本国内での買占めなどによりコメ不足発生の危険性が指摘されていた。以下の産業経済研究所の研究員の記事は、5年前に発表されている。https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/fuji-kazuhiko/178.html

それにも関わらず、自民党国会議員たちは、コメは余るものという素人以上の理解をこれまで持たなかったのだろう。そしてコメ不足の危険性を無視し減反政策を維持してきたのは、農林族議員や農協などの既得権益層のエゴイズムの結果である。(補足1)

政府自民党は、その無能さを隠ぺいするかのように農水大臣を小泉進次郎氏に替えて米の価格を下げさせるのだろう。そして、次期総裁に彼を据えることで自民党の人気奪回をして、次期参議院議員選挙を乗り切ることを考えているのかもしれない。

小泉進次郎というポピュリスト政治家(補足2)なら、自民党農林族の反対を押し切り、強引な手法で米価格を下げることができるだろう。実際彼は、大手小売業者に直接備蓄米を随意契約で販売して、価格を下げようとしている。https://www.youtube.com/watch?v=FQzucfLINUU

 


その方法なら価格は下がるだろうし、小泉氏の政治家としての人気が一層高まる可能性が高い。しかし、特定の小売業者に随意契約で国家の備蓄米を売り、それで市場価格を下げることは法律上問題ないのだろうか? 

小泉氏は自民党にとっては劇薬的政治家であり、教科書的に強引に農政改革まで実行する可能性もある。それが回り回って日本経済の構造改革に繋がれば、日本国にとってもは良いことかもしれない。多少期待したい気持ちもある。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12870307815.html


1)日本での食料安全保障政策の在り方

日本の食料自給率はカロリーベースで40%を下回っている。そのことは、如何に理想的な農政を行ったとしても食料自給が不可能な国であることを示している。(補足3)

日本列島の人口は、明治の始めでも4000万にも満たなかった。その人口を決めていたのが食料生産量であり、それが満州や樺太に進出(侵略)した近代史の原点でもある。(補足4)

19世紀にアジアでいち早く西欧と密接な相互関係を持つことが出来た日本は、科学と工業の振興と経済のグローバル化という西欧の知恵を習得してこの弱点を克服し、日本列島での可住人口を増大させた。

それと平行して、西洋をはじめとする外国の食習慣の流入による食の多様化が日本人の一人あたりのコメ消費量を減少させた。この工業生産の発展に伴う農村からの労働力の流出、国民の所得増、そして食習慣の変化によるコメ離れは、相互補完的に進行した。

また、農業の機械化は導入されたものの、就業者は兼業農家や老人が主であり、生産性向上の努力が中途半端に放置された。消費量が減少するのでコメ生産農業に将来性を見出すことが困難だったことと、国の農業に対する法規制が近代大規模農業への改革を阻害したからである。

農村の在り方など、日本の伝統文化の維持は日本人の心の問題であり、その変化は十分緩やかでなければならない。しかし、国民経済においては国際取引に高度に依存する国であるから、その制度や構造は迅速にグローバル標準の効率化を進めなければならない。

つまり、農業の機械化はその経営の大規模化と同時に行わなければならなかった。農業だけを近代化を中途半端に残せば、日本の一般民は高いコメを食わなければならないし、農家は低い収入と高い機械化のコストを支払わなければならないからである。

そのようなフルバージョンの農業改革を行った上で、それでも発生する外国産米と国内米との価格差を関税で埋め合わせ、その関税で得た資金で農家の所得補償をするのが、本来の食料安全保障のあり方だったと思う。

 

2)国家の不安定化にはその国の主食の価格を高騰させる手法が有効である

発展途上国では、主食の価格高騰が政治不安に発展したケースが歴史上多く存在するという。youtubeのモハPチャンネルはこのことを指摘している。https://www.youtube.com/watch?v=YbJwtcLf-Rc

 

 

上の動画では、中東でのアラブの春も、主食の価格高騰が大きな役割を演じたという話が紹介されている。エジプトのムバラク政権が崩壊したことの一つの原因として小麦価格の高騰があったというのである。

主食の価格高騰は、僅かの供給量不足で起こりえる。何故なら、多少高くなっても国民は買わざるを得ないからである。一般に生活必需品は価格弾力性が低く、中でも主食の価格弾力性は最低ランクに入るのである。

これらのことから、どこかの誰かによる政治的思惑が、今回のコメ価格高騰に絡んでいる可能性は無いとは言い切れないのではないだろうか。金融経済が実物経済よりも遥かに大きくなり、金融資本が世界の政治を動かしていると考える人も多い21世紀においては、この観点からも今回のコメ価格の高騰は調査されるべきである。

因みに、2010年ころのアラブの春は、米国とイスラエルの企みであったとコロンビア大のジェフリー・サックス教授がヨーロッパ議会での演説で話した。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12894476649.html

エジプト・ムバラク政権の不安定化には、主食の小さい価格弾力性と内政介入国家の豊富な金融資本が絡んでいる可能性があるかもしれない。つまりエジプトの主食価格を高騰させて政情を不安定化するなど、米国のUSAIDとCIAが組めば可能かもしれないのだ。

終わりに:

日本の農業を中国資本の参加を防止する形で大規模化することが非常に重要である。農協や自民党農林族の妨害を排除し、知性ある人物の参加を得て、小泉氏がそれを実行するのなら良い機会だろう。


補足:

1)工業化によって若手が町に出て、農業は老齢の親世代が兼業で行う。それでは生産性の高い農業など不可能である。トラクターの購入などで、仲介の農協などは儲かるが、農家はもうからない。そのように農村を従来の形に補助金などで維持することで、農水族の票田となるのである。

2)日本では人気だけで衆愚政治の方向に政治を引っ張る人達をポピュリストと呼ぶが、英語ではMob politicianというようだ。英語のpopulistは人民主義の政治家が正しい訳である。

3)宮沢賢治の詩を思い出せばわかるように、米中心の食生活で生きるには、一人一日五合の玄米が必要である。それは1年間で約0.5トン(一億2000万人なら、約年間6000万トン)にもなる。もし、食生活が改善されて一日2合で良いとしても、年間2400万トンである。現在、日本の米の生産量は年間750万トンにも満たない。そもそも日本で米の生産量を高く維持する努力をしても、外国から小麦や大豆などの輸入がなければ全人口の半分も生きていけないのである。
因みに、江戸時代の米の生産量は500万トン程度だったようだ。https://www.mbsnet.info/gc/dyn/member/gc/lohas/0701/index.html


訂正:日本人一人が一日五合のコメを365日消費すると仮定すると、日本全体での年間コメ消費量は約3240万トンになります。一人一日2合の消費だと、年間約1300万トンになります。単純な計算間違いでした。(5/28早朝)

4)そのような論理で明治の日本を牽引した薩長の背後に、同じく東アジアを勢力圏に収めたい西欧の勢力があったことはもっと議論されるべきである。それは本題ではないので、ここではスキップする。

 

(18:30編集あり;;26日夕刻2か所修正)

 

トルコで行われていたウクライナ戦争の停戦交渉は結局まとまらなかった。その後、トランプ米大統領とプーチン露大統領が電話会談を行ったものの、やはり停戦合意には至らなかった。更に、トランプは停戦交渉の仲介を今後行わない意向を示した。


この停戦交渉決裂は見えていた。(補足1)ヨーロッパ諸国を背後に持つゼレンスキーがあまりにも傲慢であり、それは今年3月1日のホワイトハウスでの会見でも明確になっている。トランプの明確な決断が何を意味するかをこの戦争の真実を基礎に考えてみる。

 

以下は素人である筆者の想像も加えた文章であることを予めお断りしておきます。

 

 

1)ウクライナ戦争の真実と国務長官の発言

 

この戦争の真実は、ネオコン(隠れネオコン?)のマルコ・ルビオ国務長官が既に公言している。(補足2)つまり、ウクライナ戦争は、ウクライナを米国の代理とする米露間の戦争である。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12899323502.html

 

この米国務長官の言葉で重要なのは、米国はウクライナ戦争の当事国であることを認めたことである。一般に、戦争で負けた側は講和の際に領土を奪われ、賠償金を支払うなどの不利な条件で条約に調印しなければならない。その当事国が米国であると、米国外交のトップが公の電波の中で言ったのである。

 

代理戦争と明言したからには、ウクライナ国民の働きと犠牲など全ての負担に対してそれを埋め合わせる義務を米国は持つ。これまで米国が出した数十兆円以上を今後支出する覚悟も必要だろう。ゼレンスキーが傲慢な姿勢で米国に対するのは、このような論理を国務長官が認めたことが背後にある。

 

ロシアに完全勝利すれば、それらの債務や賠償の話が無くなると考えるのが、米国ネオコンたちと米国とともにウクライナ代理戦争を戦ったNATO諸国の首脳たちである。

 

 

その様に考えると、マルコ・ルビオ国務長官は完全なネオコンであり、トランプ政権を対露戦争に本格参戦させるか、トランプを早期に退陣させる意図でこのような発言をした筈である。これが3月15日に書いたブログ記事の内容である。

 

ここで、簡単にウクライナ戦争を復習する。ウクライナ戦争は、歴史的にはソ連崩壊に始まるロシアと米国との新冷戦に始まる。米国によるロシア弱体化あるいは分割(或いは分解)政策であり、この紛争は2014年から大きく報じられるようになった。そして、20222月から軍隊による直接戦闘となったのである。これは一貫して米国ネオコン政権のロシア潰し戦略であり、トランプはそれへの協力を否定してきた。

2014年とは、米国務省(ビクトリア・ヌーランドの活躍が著名)やCIA、そしてネオコンのバックにいるジョージソロスなどユダヤ系資本家がウクライナを内戦状態に導き、当時のウクライナ大統領のヤヌコビッチを国外に追い出した年である。所謂マイダン革命である。

 

 

マルコ・ルビオは、トランプ政権もこの代理戦争の当事国としてこの戦争を継承する義務があると公言したつもりかもしれないが、トランプには元々そんな気は無かった。繰り返すが、代理戦争をウクライナに発注し、その結果ウクライナ人が数百万人外国に避難し、百万人が家を失い命を失ったのなら、米国がウクライナに負う債務は膨大だろう。


更に、その戦争に負けたのなら、ロシアにも賠償金を支払う必要があるだろう。そんなことはできそうにない。トランプは、恐らくマルコ・ルビオを首にしたいだろう。ただもし首にしたら、背後のネオコンたちと釣るんで何を言い出すか分からないのでそうしないのだろう。

 

トランプの取り得る戦略としては、それは過去の米国の犯罪であり、新生米国の我々にはその責任全部は負いかねるという風に居直る作戦のみだろう。つまり、現在の米国は過去の米国から決別した新生米国であると主張する作戦ある。

 

ただ、プーチンならその白を切る作戦が通用するかもしれないと考えたとしたら、二人は人間を金や財産よりも大事にするキリスト教的道徳を残していると考えたているからだろう。

 

 

2)トランプの“新生米国を印象付ける戦略”は戦後ドイツがモデル?

 

このトランプの作戦は、2025120日にこれまでの米国は終わり、自分の第二期政権から新しい米国が始まったとする姿勢を貫くことである。トランプは徹底的にこれまでのネオコン政治を否定するのは、これまでの米国の政治的遺産も債務も併せて放棄することの表明なのだろう。(補足3)

 

尚、米国ネオコン政権のこれまでの戦争については、コロンビア大学のジェフリー・サックス教授がヨーロッパ議会での演説において解説している。https://www.youtube.com/watch?v=hA9qmOIUYJA


要約すれば、ソ連崩壊後の東欧でのカラー革命(ウクライナのオレンジ革命を含む)、イラク、シリアを含む中東の戦争、スーダン、ソマリア、リビアを含むアフリカの戦争はすべてアメリカが主導して引き起こしたという悍ましい内容の話である。(補足4)


これだけの戦争を行う根拠は、米国による世界覇権の継続にある。この継続の延長上にグローバルエリートたちが密かに企む世界帝国の建設が存在する。その大きな目的がなければ、世界中から憎まれる侵略行為を続ける筈はないと考えるのが普通だろう。

 

トランプは、そんな残酷な世界戦争の果てに世界帝国を築いて何になると考えたのかもしれない。彼はこの企み(グローバリストの考える新世界秩序へのグレートリセット)に明確に反対する意思を示して来た。ただ、これまで政権内のネオコン勢力に足を引っ張られるように、彼らの主張にも一定の配慮を示してきたのである。しかし、ここで明確な仕切り直しをしたようだ。(補足5)

 

トランプは、このプーチンとの電話会談後の会見で、ウクライナ戦争に対する彼の政権の姿勢を覚悟を持って明確にし、それに念を押すかのように、今後のロシアと米国の経済協力の話にまで言及している。

 

このロシアとの経済協力の話だが、これには以下の意味があると思う。つまり、これまでのロシア潰しを世界戦略の一つとしてきたネオコン米国はもう存在しない。そこで新生米国はロシアとも新たな関係を築きたいという意思の表明である。

 

そんな勝手な理屈はあるかとロシア側には言いたい人が多いだろう。ただ、知的なプーチンなら報復に次ぐ報復ではいつまでたっても平和な世界は来ないと考えて、この作戦を受け入れてくれるだろうとトランプは考えたと思う。

 

この作戦のモデルは、戦後のドイツである。現ドイツはナチスを徹底的に批判し否定することで、過去の戦争に対し賠償要求する相手は今のドイツには居ないと主張している。それ故百歳に近いユダヤ人収容施設の門番も、探し出して無慈悲に刑務所に入れるのである。

 

 

 

 

終わりに

 

戦後ドイツの姿勢は、日本の戦後とは大きく異なる。来日したドイツのメルケル首相が安倍総理に進言したのもこの“しらを切る作戦”(或いは内外に過去と決別を印象づける戦術)だと思われる。(補足6)その意味を日本人は理解しなかった。

 

つまり、過去の日本を徹底的に批判し新生日本を明確にすることで、中国や半島からの戦争責任論とその背後に控える将来の戦争や賠償要求を封じる戦略である。しかしそれは現状の日本には相当難しい。現在の天皇制を維持する限り無理であるが、それを克服することは可能である。

 

過去何度も書いているが、日本の天皇と伊勢神道は明治の富国強兵策の中で利用された。その天皇の面影が政治の中に残る限り、新生日本の演出は無理である。例えば、戦後没収された天皇家の財産を一定程度返却して、江戸時代までのように京都に皇居を移し、伊勢神道のトップとなって日本国民との関係を元に戻すという考え方はないだろうか? 

 

このまま米国が東アジアから手を引けば、日本は中国の支配下にはいる可能性が極めて高いと思う。何もしなければ、武家(国家公務員や政治家)が中国人で町人が日本人のような江戸時代の社会構成が、再び日本を支配するようになる可能性がある。

 

また、米国がネオコン支配のままなら、今のウクライナのように米国の潜在的敵国である中国潰しのために代理戦争を強いられ、数百万人が命を落とすことになるかもしれない。このまま日本人が政治音痴を続ければ、それら何れかの恐怖が日本を襲う時が来る可能性が高い。


 

補足

 

1)クリミヤまでも返せというゼレンスキーの姿勢は無知なのか馬鹿なのか? シカゴ大のミアシャイマー教授はヤケクソだと言っているようだが。。。https://www.youtube.com/watch?v=uQaMnOrKrIo

 

2)最初この話を聞いたとき、信じられなかった。何故なら、ウクライナを代理にして米国がロシアと戦争していることは本来の保守側には常識だが、それを言えばグローバリスト・ネオコン側から陰謀論のレッテルを貼られて、現在のポジションから放り出される可能性が高いからである。マルコ・ルビオがそれを言っても断罪されないのは、その背後にトランプをウクライナ戦争に巻き込むためという了解がネオコン側にあるからだろう。トランプは、マルコ・ルビオを抱き込んだのは兎に角政権を作り上げるためだろう。

 

3)ここでの義務や債務などの話は法的な話ではない。国際関係は野生の原則が支配するので、法治の原則からは程遠い世界である。しかし、歴史を動かすのは人間の感覚であり、それはこれら法的用語を用いることでより詳細に記述可能となる。

 

4)この動画での講演内容は、長周新聞により日本語に翻訳されているので、私は主にそちらで読んだ。https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/34317
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/34414

 

5)ここで5月2日の記事でトランプは単なるポピュリストであると書いたのは間違いであり訂正させていただく。https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12899323502.html

 

6)過去の記憶で書いているので、この理解だけでは不十分かもしれない。また文献は存在するが、その思想を日本に具現化する方法とその可能性などについては触れられていない。以下の文献については評価していないが、一応今後の思考のために引用のみしておく。

 

(11:40 改題)

コメ価格の高騰が続き、低所得者の食生活は危機に瀕している。政府は備蓄米を放出したと言っても、安いコメは一般庶民の手の届くところには来ない。そこで大手スーパーのイオンは一キロ341円の関税を支払ってカリフォルニア米を輸入し、4キロ税込み2894円で売り出すと発表した。今回の発表は、米国大使館においてジョージ・グラス大使が同席して行われた。

https://www.youtube.com/watch?v=X4gdBXIbUM4

 

 

この価格は、通常の5キロのパックでは3618円となり、現在のスーパーでの日本米の価格よりも10%以上安い。もし関税がなければ、4キロ1530円(5キロ1913円)で販売できた筈である。この関税も現在の13程度にすべきだと思う。もしこの関税が多額になれば、農政の改革に役立てることもできるだろう。農地の大規模化や農業法人としてコメ農家を再編するための資金とすればよい。

 

このイオンの英断に対して、日本の食料安全保障にとって取り返しのつかない一歩になりかねないとの意見がJBpress というビジネス関連のネット新聞に掲載された。この記事は、青沼 陽一郎氏という元テレビ記者の文章である。 https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/88351

 

青沼氏は「食料植民地ニッポン」という本を出版するなど、食料政策について詳しい方のようで、今回のイオンによるコメの輸入販売を「日本の食料安全保障」の崩壊の引き金になると憂いているようだが、この方は食料安全保障という言葉を誤解している。

 

経済停滞の30年間を経験し、国民の平均給与が上昇しない中で貧富の差が拡大し、日本人全てがコメを三食食えなくなって、何が日本の食料安全保障か? そんなものはとっくに崩壊しているか、或いはそんなものは最初から存在しない。単に自民党農林族や日本全国の農協という既得権益者の打ち出の小槌を使うときの掛け声にすぎないのだ。

 

 

2)食料安全保障という思想と日本国

 

食料安全保障について外務省は、「全ての人が、いかなる時にも、活動的で健康的な生活に必要な食生活上のニーズと嗜好を満たすために、十分で安全かつ栄養ある食料を、物理的、社会的及び経済的にも入手可能であるときに達成される状況。」と定義している。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000022442.pdf

 

例えば東シナ海などで紛争が起こり、物資の供給が滞ることになった場合、国民の食の安全は数か月の間に崩れる。日本は、米国やロシアのような食料自給が可能な国ではないのだから、食料安全保障はそれらの国々と比較して相当困難な国である。

 

その達成には、優秀な機械等の輸出品を持つことなどで外貨を稼ぐ手段を確保するとともに、円滑な貿易が可能なように国際関係を維持しなければならない。上記文章をHPに掲載しているのが外務省であり農水省でないことが、その現実を如実に語っている。
 

日本においては、食料安全保障は総合的な戦略で達成すべきことであり、単に米くらいは輸入に頼らない体制を守るべきだという簡単なことではない。そのように考えれば、米国との安定で相互に大きな不満を残さない貿易関係維持は日本の食料安全保障の要諦である。

 

今回のトランプ関税はWTO(世界貿易機構)のルールから考えれば暴挙だが、米国との貿易及び外交関係維持のためにも、日本はその暴挙を農政改革の引き金にすべきである。


 

3)日本の農政改革

 

日本のコメ生産に従事する人たちの平均年齢は70歳にもなろうと言われている。

https://losszero.jp/blogs/column/col_268

https://nechiotokoyama.jp/blog/517

 

また、2020年度の農林水産省のデータによると、専業農家の平均年収は約250万円から300万円のようだ。https://agrijob.jp/contents/myagri/rice-farmer

 

このコメ生産農家の状況を見れば、日本政府は食料安全保障に対して全く無策であったことは明らかだろう。それでありながら、コメ価格が倍になっても高関税を放置し、国民の一部に十分食べられない状況を作り出しているのだ。

 

この問題を解くことは簡単である。それは農家の経営規模の拡大であり、若い人たちが農業で将来設計が可能なように農政を改革すべきである。今こそ、農協と自民党農林族という既得権益者を日本の農政から追い出すべき時なのだ。
 

自民党議員たちには難題であるなら、参議院選挙で自民党に投票しないことが何よりの食の安全確保の手段である。

=== おわり ===