国際法を基準とする限り、今回イランを攻撃した二つの国に対する評価は表題のようになる。それを明確にしているのが、Glenn Diesen氏のチャンネルに出演したスイスのジャックポー大佐である。https://www.youtube.com/watch?v=juVWnBQV6wQ

 

 

日本のyoutuberの及川幸久氏は、イランをテロ支援国家とする米国やイスラエルの評価を前提にして、今回の爆撃に対して賛否両論があるとしている。しかし私は何を今さらと思う。https://www.youtube.com/watch?v=qCtoEvWAaUE

 

 

 

そこで以下の様なコメントをアップした。

 

ウラン濃縮は原子力発電には必要で、それは独立国固有の権利です。それを無視して、米国はイランの民間会社の施設を爆撃した。イランは核拡散防止条約に加盟しているが、イスラエルは加盟していません。イスラエルと米国はテロ国家です。勿論、リアリズム外交は国際法を基準にはしませんが、それでも国際政治の基礎的ポイントを押さえた上で議論するべきです。

 

コメント欄でも賛否両論があるが、このようなときには歴史に学ぶべきである。そのように考えてか、歴史家の渡辺惣樹氏が世界大戦後の米国によるイランへの残酷な対応について教えてくれている。https://www.youtube.com/watch?v=Ti0jcMcMdMY

 

 

2)英米とイランの現代史

 

渡辺氏が引用するのは、「“America and Iran: a History, 1720 to the present” by John Ghazvinian 」という書物である。

 

渡辺氏の解説によると、第二次世界大戦直後、イランのモハンマド・モサデグ政権は民主国家を目指していた。モサデグ政権は、イラクの近代化の予算確保のため、Anglo-Iranian oil company という英国との石油合弁事業の利益配分改善を要求したが、英国に拒絶された。そこで、行き詰ったモサデク首相は、この会社の国有化を宣言した。

 

英国チャーチル首相は、国際司法裁判所(ICJ)に提訴したが、ICJは提訴を受理しなかった。そこでチャーチルは諜報機関MI6を用いて、イランでプロパガンダとテロとデモによる政権転覆を画策したのである。それに協力したのが米国政府とCIAのダレス兄弟だった。
 

その結果、クーデターが発生し親英米のパーレビ国王率いる専制国家の誕生に繋がった。親英米と親イスラエルの政権がイランに誕生したのである。その経緯は、2014年のウクライナでのマイダン革命と酷似している。

 

国王パーレビの主な関心事は、自分の地位安定であり、国民の生活向上ではなかった。石油利権で得た多額の資金をインフラ投資に充てず、米国から戦闘機などの武器購入や諜報機関の設立(CIAやMI6そしてモサドが協力)などに充て、イラン経済は低迷したままであった。

 

1979年、不満のイラン国民はパーレビ政権を転覆させ、宗教国家イランを誕生させたのである。イスラム国家がユダヤ国家のイスラエルと仲良く出来る筈はない。しかし、イランにおける民主国家の誕生を妨害し、イスラム原理主義国家の誕生を助けたのはユダヤ資本の下の英国と米国だったのである。

 

そのイランの初代指導者がホメイニであり、現在は二代目のハメネイである。英国ユダヤ資本により建国され、政権右派・シオニストたちが率いるイスラエルと以上のような歴史を持つイスラム原理主義国家イランが戦争(第5次中東戦争?)になるのは時間の問題だったと思う。

 

 

終わりに:

 

元米国政府顧問のダグラス・マクレガー大佐は、イスラエルのネタニヤフ首相はトランプよりも大きな影響力を米国下院に持っていると発言している。中東の小さな国の首相がそのような影響力を持つことは本来不可能で、AIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)などのロビー活動で得たものと思われる。

 

その活動を支えたのが、政治献金の制限を撤廃したスーパーパックという制度と、金融経済を実質経済よりも遥かに大きくした米国の経済政策である。その米国政治の中心にユダヤ系を含む金融資本家群が存在すると思う。ごく少数の世界の金融エリートたちのエゴイズムがこの世界を危機に陥れている。

(12:00編集)

 

国際政治を解説するyoutuberの及川幸久氏が、トランプがイスラエルの対イラン戦争に米国を参加させるかどうについて米国で行われている議論を紹介している。

 

https://www.youtube.com/watch?v=gMx7929oud4

 

タッカーカールソンがトランプ大統領にストレートに反対意見を贈ったこと、スティーブ・バノン元首席戦略官(第一次トランプ政権)も反対していることなどが示すように、イラン攻撃への加担はこれまでのMAGA(アメリカ第一主義)政策と明らかに矛盾している。

 

及川氏は、トランプは「イランへの米軍の攻撃を承認したが、その開始についての最終命令を保留している」というところをもう少し考えるべきだと考えているようだ。そして、Gilbert Doctorowというロシア史で博士号を取得した人物の意見を参考のため紹介している。

 

ドクトロー氏は、トランプは良い意味での日和見主義者(opportunist)で、イランとの取引のためにこのような際どい方法をとっているのだと話したという。

 

私は、このドクトロー氏という人物をまるで一流の国際政治学者のように仕立ててトランプの戦術を語ることに大きな違和感を感じた。ドクトロー氏は、ロシア関連のビジネスマンとして25年間働いた人物で、単にロシアと未だ問題を起こしていないトランプを応援するために無理な理屈をこねているように見える。彼の国際政治評論も有名なのはロシア関係に限られるように思う。

https://fable.co/author/gilbert-doctorow 

 

そこで、改めてイスラエルの対イラン要求について考えてみる。

 

2)イスラエルそして米国のイランに対する要求とは何だろうか?

 

イスラエルのイランに対する要求とは、イランの核兵器開発の放棄であると言われている。しかし、今年3月の議会証言において、国家情報長官はは現在核兵器を持っていないし、核兵器の開発も行っていないと証言しているので、イランはこの要求に従って久しいことになる。従って、それは国際社会に向けたプロパガンダの一部である。

 

つまり、それが本当の要求なら、そして国家情報長官の証言を信じる限り、イランは既にその要求に応じている。今更、他に何を約束せよというのか? しかし、トランプは国家情報長官のいうこと等気にしないという。これは暴力団が警察や裁判所の言うことなど気にしないという類のセリフであり、これ以上議論することは不可能である。

 

ここでもう少しイスラエルの対イラン要求を深読みすると、それは、今後軍事的不安を全く感じないようなイランになることかもしれない。周りを異教徒に囲まれたユダヤ教の国なら、心情としては分からない訳ではない。しかし、それは近代国際社会にあっては理不尽な要求である。

 

つまり、全く毛色の違う人物に対して「俺が全く不安を抱かないようにしろ」ということは、「お前はこの世界から消えろ」ということに他ならない。

 

主権国家体制(ウェストファリア条約の体制)は、相手国の主権を尊重することで互いの存立を確保する体制であり、中世までの強い国が生き残るという体制下で悲劇を繰り返してきた人類の知恵である。その主権には自国の防衛力確保も含まれ、それは隣接国には幾何かの脅威になるのは当然である。

 

しかもイスラエルは既に核保有国である(6/17の記事参照)。仮にイランが核兵器を手に入れたとしても、核の抑止力で互いが共存可能である。原子力発電所の建設などの核の平和利用も含めて今後の核開発を永久に放棄しろというのは、あまりにも理不尽である。(補足1)

 

従って、イスラエルの要求は、イランが独立国家としての主権までも放棄するということだろう。それは「(この世から)消えろ!」という暴力団の要求である。

 

それでも尚、アメリカ人の大半が反対するイラン参戦に傾くとしたら、トランプは日和見主義であるなら、ネタニヤフのご機嫌を見ているのだろう。これが結局本稿の結論である。この動画について、以下のコメントを書いた。

 

コメント1: トランプの真意は、自分の命を失いたくないということです。トランプは、大統領自身の命の問題は一般軍人と同様プライベートな問題だということを知っているのだろうか?思い出すべきはネタニヤフがトランプに贈ったポケベルの置物です。(イスラエルはヒズボラの戦闘員を彼らのポケベルの中に爆弾を仕組むことで殺害したと言われている。イスラエルも否定していない。)

コメント2:オポチュニストはギルバート・ドクトル博士の方ですよ。ディールは共通の基盤の上で成り立つが、ポケベル(爆発物入り?)の置物を送ってくる人物と共通の基盤は持てない。私は、ジェフリーサックス教授の方が正しいと思う。

 

コメント3:Gilbert Doctorowという人物は国際政治学の方では有名でなく、ロシアの歴史で博士号をとったのち25年間ロシア関係のビジネスマンだったとネットには書かれています。英語版wikipedia にもそんな人物の紹介はありません。

 

補足:

 

1)イランが核施設を建設し、ウラン258の濃縮を行っているのは事実である。ただ、原子力発電のためにもウラン濃縮が必要であることを忘れてはならない。つまり、現在イランが行っているウラン濃縮は原子力発電のためと言える。勿論、原子力発電を行えば、その燃料滓からプルトニウム239を分離することが可能で、それは長崎型原爆の材料となり得る。

 

(15:30 補足1を追加、編集あり)

 

 


Andrew P. Napolitano氏はニュージャージー州最高裁判事やFOXニュースのニュース解説者などを経て、現在著名なyoutubeチャンネル「ナポリターノ判事(Judge Napolitano)」のホストである。今回はコロンビア大学の教授で世界的に著名なジェフリー・サックス氏(Jeffrey D. Sachs)を迎えて、最近のトランプ米大統領の政治姿勢について議論している。https://www.youtube.com/watch?v=EJv1mS6RryI

 

元の動画は:https://www.youtube.com/watch?v=Un-lkAbGyww

 

先ずこの動画の核心部分から話を始める。

 

ナポリターノ判事はトランプ大統領が独善的&独裁的な人物であることを示すために、カナダでのG7から急遽大統領専用機でワシントンに帰る途中での、ある女性記者の質問とそれに対するトランプ大統領の答えを引用した。

 

その記者は、トゥルシー・ギャバ―ド(Tulsi Gabbard国家情報長官)氏が3月に行った宣誓証言「情報機関はイランが核兵器を開発していないと引き続き評価しています」を紹介し、続いて次のような質問をした。

 

「あなたは常にイランが核兵器を持つべきではないと述べてきましたが、あなたは個人的にイランが核兵器を手に入れるのにどれほど近づいていると考えていますか?」

 

トランプ大統領は「彼女(国家情報長官)が何をいったかは気にしない。私は彼ら(イラン)が核兵器を持つことに非常に近づいているとおもうのだ」と答えたのである。

I don’t care what she (Tulsi Gabbard) said, I think they were very close to having one.

 

国家の諜報機関や情報機関のトップである国家情報長官が否定しようが、そんなことはどうでも良い。自分がそう思うからそれに対する対策を打つのだとトランプ大統領が発言したのである。

 

この話は、米国の幾つもの報道機関も大きく報じている。通信社APの配信記事を引用する:https://apnews.com/article/gabbard-trump-intelligence-iran-nuclear-program-51c8d85d536f8628870c110ac05bb518

 

それを聞いたこの日のゲストであるコロンビア大学のジェフリー・サックス教授は、それがここ数十年の米国大統領の姿であると話す。

 

ジェフリー・サックス教授:

 

これがアメリカ政府のやり方であり、何十年もそうしてきたことだ。トランプ政権だけがそうしているわけではない。2003年頃の有名なインタビューで、ブッシュJrの最高顧問の一人が記者の質問に答えて当時の情況を記者に説明した。そしてその時、「我々は我々自身の現実を作り、君はそれを報道するのだ」と言ったのだ。

 

これが米国政府の見解であり、それはもはやPRに過ぎない。これが米国政府の姿だ。彼らは独自の物語を持っている。それを語るときにはニヤニヤ笑う。真実には全く興味はない。そして最終的に現実を決定付けるのは兵器だと信じている。兵器こそが現実だという考え自体が、真実を作りだすもの。
 

ただ、今回は高官の発言ではなく、大統領自身の発言である。今回のトランプ大統領の発言は、例えば、急いでいたからとか、いつもこの記者の執拗な姿勢に鬱陶しく感じたからなどを理由とする事故的発言だったわけではない。トランプという人物は一事が万事この調子なのだと言うのである。


 

2)ここ数十年の米国大統領の姿について

 

実はこの番組の最初にナポリターノ判事は、公平を期するためと言って、先月のサウジアラビア訪問時の演説を紹介した。ナポリターノ判事を含めトランプを応援してきた人の多くは、以下の演説の一節を聞いて、改めてトランプ大統領に期待したのだった。

 

ナポリターノ判事:

 

先月のサウジアラビアでの演説の核心部分は次の通りです。」(以下は演説でのトランプ大統領の言葉)

 

私たちの目の前で新世代の指導者たちが過去の疲弊した分裂による古き紛争を乗り越え、中東が混沌ではなく商業によって定義される未来を築きつつあります。この偉大な改革は西側諸国の介入によってもたらされたものではありません。リヤドやアブダビの輝かしい脅威もいわゆる国家によって創造されたものではありません。

 

建設業者、ネオコン、或いは何兆ドルも費やして失敗したリベラルな非営利団体など、 カブール、バグダット、その他の多くの都市の発展を期待していたにもかかわらず、近代中東の誕生は地域の人々自身によってもたらされたのです。

 

結局、国家権力者たちは築いた国よりも遥かに多くの国を破壊しました。そして介入主義者たちは自分たちが理解すらしていない複雑な社会に介入したのです。

 

彼らはやり方を説いたものの、自分たちはそれをどうやるかが分からなかったのです。平和、繁栄、そして進歩は究極的には皆さんの伝統を根本的に拒絶することからではなく、むしろ皆さんの国民的伝統を受け入れ、皆さんの愛するその同じ伝統を受け入れるところから生まれたのです。」


 

「サックス教授、彼がまさにその言葉を発していた時、CIA, MI6,モサドは卑劣な準備をしていたと言っても過言ではありせん。 先週、イスラエルがイランに対して行った一方的な攻撃です。」(補足1)


 

サックス教授:「確かにモサドが主導権を握っています。 モサドは暗殺、殺人部隊の筆頭ですが、モサドは何十年にわたって米国の政策を事実上決定しており、トランプ大統領もそれに同調しているのです。」

 

「大統領が次々と暗殺に同調していくのを見るのは実に驚くべきことです。」

 

ナポリターノ判事: 「彼がその言葉を発した時、あなたも私も、そして番組の他の出演者たちも歓喜した。アメリカ大統領がネオコンを非難し、軍事冒険主義と外国への介入を非難した。しかし、それは茶番だった。」


 

サックス教授:「ある意味では、2017年にプーチン露大統領が言ったことは私たちは学ぶべきことだったと思います。プーチンはインタビューに答えて以下のように言った。」

 

私は、多くのアメリカ大統領と接してきました。彼らはアイデアを持って就任しますが、その後黒いスーツにブリーフケースを持つ青いネクタイをした男たちが現れ、世界はこうなるだろうと説きます。そしてその(就任時の大統領の)アイデアは二度と聞かれなくなります。

 

「彼が今日言ったことややっていることは、先月の発言に反しています。トランプ大統領がどう考えているかわかりません。あなたが言ったように政策はCIAMI6と言ったディープステート機構によって統制されているのだ。」

 

ここまででこのyoutube動画の内容紹介を終わります。(なお、話が理解可能なように編集しています。)その後、興味ある話は続きますので、是非視聴してみてください。

 

まとめ: 

 

トランプの支離滅裂な発言と態度が、歴代大統領に比べて異常に見えるのは、単にトランプが上のプーチンの発言にある「就任時のアイデア」が並外れたものだったということだろう。トランプは馬脚を現したが、それは歴代米国大統領と同じ作りと動きなのだ。ただ、トランプだけ特別に異常に見えるのは、就任前と直後の彼の発言と態度が正に我々が期待したもの、反ディープステート、反グローバリスト的なものだったからなのだ。


補足:

 

1)CIA, MI6, モサドは、それぞれ米国、英国、イスラエルの諜報機関。英国の国内治安維持を担当するのはMI5で米国のFBIに相当する。

(14:00、補足1を追加;6/20朝、二ヶ所修正)