春雨じゃ、傘がないと... | BOOTS STRAP 外国語と ゆかいな哲学の館

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ありふれた日常を考察する
<芦屋・三宮>

『春雨 (はるさめ)』は普通に降る雨よりも、もっとささやかに降る雨で、
霧吹きで飛ばしたような雨のこと。
降るというより、静かにあたりを濡らす雨。

万葉集の中に、そのような春雨を詠った歌が収められている。
"よみ人知らず" の歌になっているが、紹介すると、
わが背子に 恋ひて術(すべ) なみ春雨の
        降るわき知らず 出でて来しかも
(口語訳すると=抑え難い恋心のゆえか、あの方を恋しく思い、衝動的に家を出てしまった。
ふと、気がつくと、髪の毛もしっとりと濡れている。
霧のように小さな春雨が降っていることも知らずに、あの方を思いつつ歩いていた)
恋心は、衝動を生み出すことがある。
まして、寒さが一段落し、浮き立つような思いに駆られやすい時期でもある。
そのような女性の恋心を詠った静かな味わいのある歌と言うことができるだろう。

大正時代に誕生した演劇に『新国劇』というのがある。
歌舞伎などの剣劇の立ち回りは、ゆっくりとした「舞」だが、
そこにリアル感とスピードを加えた「殺陣(たて)」を発案し大成功を収めた。

その当たり芝居の一つに『月形半平太 (つきがた はんぺいた)』というのがある。
坂本龍馬と同郷の志士・武市半平太をモデルにして行友李風(ゆきともりふう) が著した芝居。
その芝居の中で、よく知られているのは「春雨」をテーマにしたワンシーン。
舞妓雛菊(ひなぎく)が、月形半平太に傘をさしかけ、
「 月さま、雨が、、、」
半平太が、徐(おもむろ)に空を見上げ、
「春雨じゃ、濡れて行こう」
と風流な言葉を語り、傘を受け取らずに春雨の中を歩いて行く。
印象的な一コマ。

桜の便りもあるこの頃、糸のような柔らかさのある春雨の季節でもある。
だけど、今どきの雨の成分には、花粉、黄砂、PM2.5。
「濡れて行こう」などありえないか。

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<了>