BOOTS STRAP 外国語と ゆかいな哲学の館

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ありふれた日常を考察する
<芦屋・三宮>

太宰治に『トカトントン』という短編小説がある。
ずっと以前に読んで、再び読み返したことすらない小説だが、
妙に心に残っている。
簡単に、この小説のストーリーを紹介すると、
これは、作者(太宰治)への手紙文で構成されている。
「手紙の主が、したためたことは、戦地から復員してきた私は気力が失せており、何にも身に入らない。それならば、いっそのこと、と思い死を決意した。
その瞬間、「トカトントン」という金槌で何かを叩くような音が耳元に聞こえてきた。
それが聞こえてくると死ぬ気力も情熱や感性も冷めてしまい、やるせない空虚な気持ちになった。
気を取り直して仕事に励もうとすると、
また「トカトントン」という音がどこからか聞こえてくる。
恋愛に熱を上げたりした時もそう。
その音が聞こえてくると生きたり行動する気力さえも一瞬にして消え失せてしまう」
というもの。
太宰治『トカトントン』

太宰治の小説として、『人間失格』や『斜陽』などを読んだ憶えがあるが、
記憶に残っているのは、この『トカトントン』。
なぜ記憶に残っているのだろうか?と思えば、
おそらく、一つには、「トカトントン」というタイトルの音の響き。
このリズムを感じさせるカタカナ表記も大いに寄与していると思える。

もう一つには、誰しもこれと共感する世界を持っているものなのかも知れないこと。
一所懸命になったりするとそれに対する反作用が生まれてくる。
それは、外部の要因ではなく、心の内から。

当方は、ほぼ毎日、外部が闇といった深夜にブログを綴っている。
そんな時、耳元で聞こえてくる、トカトントン、、、

コイツとの戦いだ。

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<了>

最近、わが蔵書の整理をはじめた。その目的は、断捨離というより終活に近い。
かつて、断捨離の意識で思い切って本を処分したことがあった。
かなり前のことだが、一級資料を捨て去ってしまった様な後悔がいまだに残っている。
そのため、それ以降は本の処分をためらっている。
今日、雑誌類の書棚を見てみると、古い月刊誌などが並んでおり、
その一つを取り出すと『月刊イメージフォーラム』というタイトルがついている。
『月刊イメージフォーラム』

下には創刊準備号とある。年号を確認すると1980年。
映像芸術雑誌のプレ発行版ということらしい。
こんな雑誌を買っていたんだ?
裏面の全面広告には、ソニーのベーターマックスビデオデッキ。


表紙の裏には、ビクターのビデオカメラの広告。
そこには、1980年そのものが詰まっていた。
まず、一番目には詩人の谷川俊太郎氏のインタビュー記事。
その当時、すでに売れっ子の詩人だった。
ページを開くと、そのセクションのタイトルとして、
「ライオンの鳴き声をひいてみたい」という言葉。


「ひいてみたい」と書かれているが「ライオンをひく」とは何事?
と読み進めると、「プライベート・ビデオが電波に乗る制度があればね」
という谷川氏の予言的な言葉に驚いた。
それは、まるで現代の "YouTube" を語っているようでもある。
インターネットが世に広まったのは、1995年以降のこと。
この雑誌は、それよりも15年も早い1980年頃。
その頃に、谷川俊太郎氏は "YouTube" を夢見ていたとも言える。
さすがである。
そして、「ライオンの鳴き声をひいてみた」というのは
項目を百科事典でも索(ひ)くようにみてみたいということだった。
すなわち「検索」のこと。

雑誌の購買から46年後に、こんな再会があるとは想像だにしなかった。
この雑誌には、その頃の時間がギューッと詰まっている。

当方は、まるで、タイムトラベラー。

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<了>

食のお店を格付けする「ミシュランガイド」が日本で発行されたのは2007年のこと。
あれから20年ほどになり、すっかり定着した感がある。
元々は、フランスのタイヤメーカー「ミシュラン」が、
ドライブして立ち寄るレストランをガイドする目的で発行された。
これは調査員(インスペクター)を極秘で派遣して、味付けのみならず、
店の雰囲気や接客も含めて星の格付けをするというもの。

かつて、関西圏の括りでスタートした時に、
近所の日本料理店と、時々行っていた蕎麦屋が星を獲得したことがあり、
わが地域では、ちょっとした話題となった。
ただ、その蕎麦屋は、それまで少ない客で静かな接客をしていたが、
急に混むようになり店主の息子らしいのが現れて店を切り盛りするようになった。
様相が変わったことに驚いたが、いつの間にやら店を畳んだ。
「星」を獲得したことがさまざまなドラマを生み出しているようだった。
ミシュランガイドも紆余曲折を経つつ、以前は「神戸」もあったが、
現在は、「東京」「京都」「大阪」「奈良」があり、
そこに新たに「神戸・淡路島」が加わることになった。
ミシュランガイド「神戸・淡路島」

「食」と言えば、当方の外国人講師が日本のテレビで辟易するのは「食」の番組だという。
楽しげな雰囲気を出しつつ、そこで「食レポ」をする。
その派手な演出と、わざとらしさが鼻につき「うんざり」だという。
ちょっと食べては「うまい!」を連発。
見ていて鼻白む。
本来、「食」は、五感を持って味わうもの。
ミシュランガイドが、店の雰囲気や接客も対象に入れているのも納得といったところである。
「うまい」には、すんなりとは、のっていけない。

「うまい話」には、ウソがつきもの。

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<了>