BOOTS STRAP 外国語と ゆかいな哲学の館

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ありふれた日常を考察する
<芦屋・三宮>

芥川賞受賞作家・開高 健(かいこう たけし) 氏が亡くなって久しい。
多くの小説を発表しているが、記憶に残る小説作品は少ないが、
エッセイには魅力あるものが多く、今でも色褪せないものも多い。
彼は、カナダに渓流釣りに行ったかと思えば、従軍記者としてベトナム戦争に行ったりした。
「食通」を自認して高級フランス料理などの講釈もするが、
彼が醸し出す雰囲気から、ゲテモノと呼ばれる珍味や怪味について語る方が説得力がある。
その開高健氏が絶賛したフランスの書に、
『美食三昧―ロートレックの料理書(L'Art de la Cuisine)』なるものがある。
"L'Art de la Cuisine"

これは18世紀のフランスの画家・ロートレックのこだわり料理について書かれている。
その一つ、ネズミ料理なるものがある。
これは、玉ねぎとジャガイモのシチューに、脂身を落としたネズミを入れて煮るという、
こだわりのロートレック仕様の調理法もある。
ネズミを食するのは、ロートレックばかりではない。
パリの「ラ・トゥール・ダルジャン(La Tour d'argent)」と言えば、歴史ある誉れ高いレストランに数えられ、今でも最高級とも言われる。
澁澤龍彦氏によると、このレストランにかつて、「ハツカネズミのパイ」
なるものもあったという。


日本では、齧歯類を食することはないが、その仲間であるリスを、
カナダではパイにして食するのが最高という声もある。
これらの仲間と呼ばれる種類に「ヤマアラシ」がいるが果たして美味いのか?という声がある。
これこそ、開高健氏の専門分野。
彼のエッセイで、ベトナムの戦地で野鼠などを食したと出てくる。
そのようなら、ヤマアラシも食したかもしれない。

果たしてヤマアラシの味や如何に?

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<了>

時々、わが書棚から取り出して読む本の一つにスーザン・ソンタグの著書
『他者の苦痛へのまなざし(Regarding the Pain of Others)』がある。
ソンタグは、この著書で人間は残虐な行為を否定する心を持っていると説くが、
その一方で、目は残虐なものを見ようとする心理があると書いている。


戦争写真というものは、その悲惨さを訴え、見る者も心にそれを焼き付かせ、
こんな姿は、あってはならないと思いを深めさせる。
その一方で、人は、もっと悲惨な画像を求めているところがあることを指摘する。

その表現として使われるのが、プラトンの『国家』に出てくるレオンティオスのエピソード。
処刑された死体を見てはいけないという気持ちと、この目で見たいという欲望。
レオンティオスは、葛藤の中で、
「さあ、お前たち、このおぞましい風景を見るがいい!」と叫ぶのを例として挙げている。

戦争写真や悲惨な写真には、たいてい、キャプションがついており、
そのキャプションによって政治的な意図へ誘導するものもある。
現代人は、さまざまな悲惨な画像を目にすることが多くなった。
実際、今も世界各地で戦争が起きている。
そんな戦争と直接的には関わっていないが、遠くにある我々も、その影響はある。
悲惨な様を撮った多くの画像も目にする。

政治的な意図や立場からの発信ではなく、素直な平和を希求する心と鎮魂の思いで、
戦争に反対する姿勢が必要だ。

そんな原点に立ち返らせてくれる好著でもある。

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<了>

贋作にダマされるというのは、よくあること。
『徒然草』八十八段に、小野道風の書いた『和漢朗詠集』という話が出てくる。
小野道風は平安時代中期の筆の達人で「和漢朗詠集」は小野道風が亡くなってから編纂された。
そんな「書」があろうハズもない。
そこで、その持ち主に「あろうハズもない」と言うと、
「あろうハズもないものが、ここにあるから貴重なのだ」と返ってきた。
こんな人には論理は通じない。

1960年代のアメリカで贋作画のスタイン・デーヴィッド(Stein David) が引き起こした一連の事件があった。
このスタイン・デーヴィッドはフランス生まれ。
冗談のつもりでコクトーの絵を真似て絵を描き、本物と偽り100ドルで売れた。
これに味をしめ正式な美術教育を受けていないのにルノワール、セザンヌ、ゴッホ、
モディリアーニ、ピカソ、シャガールなどの贋作を次々に描いてニューヨークに出て、
次々に売りまくり、2年もしないうちに100万ドルを売り上げた。
モディリアーニを真似た絵

描いた絵も4年間に400点以上。ちょっと古く見せるための工夫として紙を紅茶に浸した。
その紅茶は、なぜだかリプトン。これでないとダメだという。
順調に売れたが、シャガールの贋作画を買った人が鑑定書を要求し、
そのことから足がついて服役することになってしまう。
(発覚したのが110点のみ。あとの300点は贋作と知らずに持っている人がいる事になる)

このスタイン・デーヴィッド、これで終わる人物ではなかった。
出所後、変わることなく羽振りよく過ごしている彼に、テレビのインタビューが入った。
「今ですか?アラブの資産家から、古い画材で絵を描いてくれと頼まれている」
著名人の作と騙って贋作を描けば犯罪だが、画風は似せているが、自分のサインを入れている。
贋作風の作品だが、意外な高値で取引されている。
「文句あるか?」というところらしい。
この事件は、ドキュメント映画にもなった。
彼は1999年にフランスで没している。
彼が出所後、描いた自分の名をサインした「絵」に関しては異論はない。
ただ、偽のサインを施した以前の300あまりの贋作画が気になる。

どこかで「著名人の作」として美術館にしっかり収められ、
人々は、それを仰ぎ見て「すばらしい!」という声を挙げているかも知れない。

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<了>