それともジヒドロテストステロンのレヴェルが高い分、テストステロンの方は品薄のような状態になり、レヴェルは低くなるのか。 わからない。  胎児期の脳の男性化にはテストステロンが一番大きく関係するはずで、ぜひ知りたいところだが、残念ながらこの件についてはまだこの段階ではお預けということになるのである。 アジア系はゲイ界で人気がない 男性同性愛者の間では実際、ペニスは魅力の一つとして大変重要で、見られたり、比較されたりするパーツとされる。 むろん大きい方がよく、大きいものの持ち主には盛んにオファーがかかる。  サウスーオーストラリア大学のM・ドラモンド(Drummond)らは、いろいろな年齢層の同性愛者の男、計三〇人にインタビューを行なっているが、その中にこんなエピソードがある。  あるオーストラリア人の男性同性愛者が日本にしばらく滞在し、日本の男とセ″クスした。 彼によれば、それは悪夢としか言いようがない出来事だったという。  サイズの足りないその代物で一時間にもわたり、「シガー、シガー、バン、バン」と攻められたが、まったく何の満足も得ることができなかったというのである。  このようにペニスの大きさが問題となるゲイ社会では、モンゴロイド(アジア系)の男はコーカソイド(ヨーロでハ系)、ニグロイド、ラテン系の男よりも随分低く位置づけられている。 ペニスの大きさは、ニグロイド、コーカソイド、モンゴロイドの順だからである(もちろん、全体としてそういう傾向があるというだけで、個人として見たら、ニグロイドよりも大きい物を持つモンゴロイドだっている)。
もちろんゲイのなかにもアナルーセックスをする人たちは存在する。 けれどもアナルーセックスをしない人たちもいる。 にもかかわらず、そうしたゲイの性生活のごく一部でしかないアナルーセックスがゲイ全体を表すものとしてみなされてしまったのである。  エイズーアクティビズムが生んだもの さて、もちろんエイズの問題が、同性愛者にもたらした否定的な影響を軽んじることはできない。 けれども、日本の文脈では、エイズ問題は少なくとも男性同性愛者を可視化する役割を果たしたともいえる。 もう少し正確にいうならば、エイズ予防啓発を促進し、HIV感染者・エイズ患者への支援をおこない、さらには行政に対策を講じるように働きかけるエイズーアクティビズムは、ゲイのムーブメントを活性化する触媒となったといえる。  一九八〇年代前半までは、前述のように北アメリカなどのエイズ症例や情報について耳にすることもあったが、それでも日本の男性同性愛者たちの多くにとっては、エイズはまだ「対岸の火事」でしかなかった。 しかし、八〇年代後半に入ると、日本でも「一号患者」が報告され、また、エイズは海外からやってくるというイメージから、ゲイーサウナには「外国人の入店お断り」という店舗まであらわれた。 ゲイの人々のあいだでも感染に対する「恐怖」が蔓延し、それによって感染した人を遠ざけたり排除するという動きも出てくるようになった。 八〇年代ではまだ行政による予防啓発支援やHIV感染者・エイズ患者に対するケアがほとんどおこなわれていなかったなかで、こうした危機感や恐怖を自分たちでなんとかしなければならないという問題意識から、少しずつエイズの予防啓発活動や患者のケア活動が組織化されるようになつたのである。
これまでさまざまな数字が報告されてきました。 たとえば、「一〇%」説というものがあります。 一九四八年のアメリカのキンゼイーレポートで報告された数字です。 その他に、調査の方法によって三%とか五%という数字もあります。  これは、どのような行為や経験を「同性愛」とするかによって変わってきます。 同性との性体験をもったことを「同性愛」と考えるのか、それとも同性に性的に惹かれたという感情的なレベルだけで「同性愛」とみなすのか、などによって異なりますね。 また、同性愛が法律で禁じられている国では、同性愛者を数えること自体が不可能です。 異性愛者は黙っていても異性愛者として数えられますが、同性愛者は黙っていれば異性愛者のなかに含められてしまいます。 この「黙っている」という状態のために、異性愛者にとっては見えない存在となっていますし、それだからこそどこに同性愛者がいるのかを知リたいという欲望が出てくるのでしょう。 しかし、ここでの問題は同性愛者の数ではなく、なぜ同性愛者が見えなくされているのかということなのではないでしょうか。    ― 同性愛の原因さがし 遺伝子がみつかった? 一九九九年三月二三日付けの東京新聞夕刊にある記事が掲載された。 気に留めなければ、つい読み飛ばしてしまうくらいの大きさである。 大見出しには、「「心の性」決める遺伝子の存在?」と書かれている。 その脇には、「ハエの同性愛から分かること」という文字。 それまでは「遺伝子」には関心がなかったが、私はその脇にある「同性愛」という言葉に反応した。 リードには次のように書いてある。