エール 名もなき人たちのうた 朝倉宏景
「申し訳ないが・・・」 窪塚夏樹、24歳。元プロ野球ピッチャー、元年俸500万円。突然球団から戦力外通告を受けた夏樹は、決死の思いで合同トライアウトに挑むが、待てど暮らせど連絡は来ない。専業主婦の妻、3歳の息子。おまけに母親が若年性アルツハイマーにかかり、実家も頼れない。ヤバい、人生積んだ、そう思いかけたとき、夏樹に唯一救いの手を差し伸べてくれたのは、居酒屋を経営母体にした 社会人チームだった。昼まで練習、夕方からは居酒屋勤務、慣れない仕事に四苦八苦しながらも、あたたかく迎えてくれたチームメイトと監督とともに都市対抗野球出場を目指しながらプロ復帰を狙う夏樹。もしかして、ひょっとして。腐りかけた心に希望が芽生え始めた夏樹。ところが、そんな彼らに「コロナ禍」という未曽有の災いが忍び寄る。悔しくても、悲しくても、負けたく、ない。コロナ禍で苦境に立たされた元プロピッチャーの迷いと再生を描く、居酒屋社会人野球小説。やりたいことができないもどかしい思いを抱くすべての人に届けたい、応援歌!