正月は初詣と墓参り位で。ヲタ活もしないので、結構時間あって
こんな時は普段あまり聞けない長が~~い曲を聞こうかと
レコード棚を漁りました。去年はベルクの歌劇「ルル」でしたが
今年はロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル(ギヨーム・テル)」
を聞きました。ロッシーニ最後のオペラにして長大なオペラです。
演奏時間は約4時間。LP5枚組です。
演奏は
歌手がモンセラート・カバリエ、ニコライ・ゲッダ、他
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ランベルト・ガルデッリの指揮
英EMIのレコードで、たまたま某レコードショップのリストに
"Special Price"なんて書いてあったのでオーダ。レコードの
番号はSLSなのでレギュラー盤ですが、レーベルは黄色で
Angel Seriesとなっていたので扱いは廉価版ですかね。
この当時は円高も手伝ってお安く購入できました。
このレコード同曲の世界初録音盤。後にムーティや
シャーイのレコードが出ますが、正直何枚も買うレコード
でもないしこれだけあればいいかな?って感じです。
このレコード、初演時の仏語版でフランスオペラなんで
「6人の踊り」「チロル人の合従」のバレエ曲もあるし
なんと草稿にはあったものの、実際は使われなかった
ジェミのアリアも収録されています。これで収録時間は
さらに長くなっている。
そんな事もあって、さらに英語のリブレットを読みながら
聞いているので結構大変と言えばそうですが、英語とフランス
語は構造が似ているので日本語対訳より意外に馴染みやすい
所もあります。
ともかく久々に聞き切りました。我ながらよくやった(苦笑)
その原因は演奏と録音の良さでしょうね
。
歌手はこれがベストかは判りませんが、ニコライ・ゲッダが
素晴らしかったです。日本ではあまり評価されてないですが、
モンセラート・カバリエも綺麗な声ですね。
ガルデッリは確かフィリップスでベルディの初期のオペラを
結構録音していてイタオペで「世界初録音」と言えばこの人
なんでしょうか?実演は聴くことがなかったのすが
長い間ヨーロッパで仕事していた知り合いの人が実際に
聞いた事あって、「様式感を大事にする指揮者」だそうです。
聞いていてそんな感じはします。あの指揮者だったらもっと
歌わすのにと思う所も程々にして結果として全体をがっちり
纏めている感じ。歌よりもドラマ性を強調した演奏でした。
録音もいいですね。キングス・ウエイホールでの録音。EMI
ってコンサートホール(オペラハウス)の特上席で聞いた
感じを再現するような録音で、後にこれがマルチマイク
を駆使した他社の録音と比べて地味な存在となってしまい
挙句の果てに「貧素な録音」と蔑む人もいたのですが、
各パートのバランスの良く、定位もはっきりしていて
本当に聞き易いです。スピーカーが変わってさらに
その良さを体験できました。
さてこのオペラですがウィリアム・テルの物語の
時代は多分、ドイツ王アルブレヒト1世です。
(1250~1308)そしてシラーが戯曲
「ウィリアム テル」を書いたのは1804年。この年は
ナポレオンが戴冠した年。当時はそんな時代でした。
さて1823年、ロッシーニはパリを訪問し、大歓迎を
受けました。この頃は復古王政でルイ18世の時代。
そして1925年はシャルル10世の即位に際して、記念
オペラ・カンタータ「ランスへの旅」を作曲。
ロッシーニは「フランス国王の第一作曲家」の称号と
終身年金を得ます。そしてウィリアム テル初演は
1829年8月3日。初演の翌年の1830年7月には7月革命
が起こっています。
こう見ると、ロッシーニは王政側の人間と思われますが
7月革命後前国王政府から給付された年金を確保すること
に成功したので多くの人からの人気があったのでしょうねえ。
さてこの「ウィリアム・テル」題材がスイスを支配する
ハプスブルグ家が派遣した総督ゲスラー(日本の時代劇で
言えば悪代官ですかね)の圧政に耐え兼ね、反乱を起こ
した人々の話。早い話反体制派を称える物語。
フランス初演時は王政復古の時代で翌年7月革命が起こるので
不穏な時代なのに良くこんな題材のオペラを上演したな
とおもいます。よっぽどロッシーニって人気あったのでしょう。
面白いのはこのオペラ、悪役となっているハプスブルグ家
のお膝元ウイーンでは結構上演されていて、一方当時
オーストリア(ハプスブルグ家)と対立関係にあったイタリア
では逆に権力に抵抗する革命的な人物を賞賛しているという
理由でなかなか演奏されなかたとか。
なかなか面白いですね。