料理の四面体    玉村豊男 | やるせない読書日記

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 読書の備忘録で始めたブログだが、年ごとの

 

頭の劣化で、感想文を書くのがシンドクなり、

 

本を読んでも頭に入らなくなってしまった。で

 

も、読書には愛着がある。少しは感想文でも

 

書かなきゃ。

 

 この本は確か、三十代の頃、読んだ。この

 

本は料理の実践のおしゃれな解説本なんだが、

 

その頃、俺は料理なんて作ったことなく、色

 

々、書かれている向こうの料理についても、

 

まあ、そんなもんかと思いながら、読んだ。

 

今、少しは煮たり焼いたりするが、実践で

 

この本のレシピが役立つことはないね。

 

 著者は1945年、生まれで西高から

 

東大仏文科、在学中にパリ大学に留学。意識

 

高い系雑誌に需要がある人だ。

 

 多分、俺がこの本を読んだのは当時、流行って

 

いた構造主義にほんの少し触れていたからだろう。

 

 「なお、料理の四面体という奇妙なアイデア自体

 

は、フランスの人類学者クロード・レヴィ=ストロー

 

スの著書に多くのものを負っていることをここに

 

記しておきたい」

 

 なんて書くとカッコイイので、カッコつけて書いて

 

おこう。

 

 レヴィ=ストロースは、ご存じのように構造主義哲学

 

の鼻祖とも目される二〇世紀の大学者で、学生のとき

 

何冊か彼の本を読んだことがある。難しい内容なので

 

よくわからなかったが、その中に、料理の三角形なる

 

言葉が出てきたことだけは覚えている。

 

 料理の三角形というのは、たしかナマのものと、火

 

にかけたもの(直火で焼いたもの・容器に入れて煮た

 

もの)、腐ったものというように料理の形態を対比さ

 

せ、それをもとにして様々の議論を展開させていった

 

ものだった気がする。

 

 でまあ、それに一面を加えて立体形にして料理の

 

方法としたものと述べているが、説明するのが面倒

 

なので省略。肝要なことは

レヴィ=ストロースは、ご存じのように構造主義哲学

 

の鼻祖とも目される二〇世紀の大学者で、学生のとき

 

何冊か彼の本を読んだことがある。難しい内容なので

 

よくわからなかったが、

 

 

 西高から東大仏文科を出た人でも構造主義は難しい

 

ということだ。当時、構造主義は流行っていて、

 

俺も頭が悪い癖に何冊か読んだがさっぱり分からな

 

かった。東大仏文科卒でわからんのだから俺に

 

分かる訳ない。と思ったのだ。これがこの本で

 

得たことの一つ。

 

 もう一つ覚えているのはこのオサレな本に我が愛

 

するホッピーの記述があることだ。

 

 チョルバ・デ・ブルタというルーマニア料理につい

 

てで、牛の胃袋を煮込んだスープで、サワークリーム

 

とニンンク、青唐辛子を添えて食べる。しかも朝の

 

料理なのに向こうの焼酎もグィッとやる。不健康で

 

よろしい。

 

 日本のシロモツの料理法とよく似ている。という

 

よりもチョバ・デ・ブルタなんて言ってるがもつ煮込み

 

のようなものだ。

 

 またこうして煮あがったシロモツを味醂と酒と

 

出汁で溶いた味噌の中でさらに煮込み、豆腐を加え

 

上からさらしネギをたっぷりのせて豆腐を加え、唐辛子

 

でも振りかけると、ホルモン焼き屋の

 

 「モツ煮込み」

 ができあがる。焼酎、あるいはホッピーなどをやり

 

ながらこれを食べる日本の夕暮れは、ルーマニアの

 

朝にまさるともおとらぬ至福の時間である。

 

 素晴らしい文章である。

 

 蛇足だが付け加えると、多分、今のホッピーとこの

 

頃のホッピーは味が違う。昔の方は辛くてコクがなく

 

いかにも貧乏人が手っ取り早く酔っぱらう酒だった。

 

代替わりして娘さんが経営者になり、今の甘くて

 

コクのある味にしたと何かの記事で読んだ気がする。

 

 俺は今の方が好きだ。