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<不妊治療関係の裁判>
乳がん治療で、
妊娠・出産ができなくなり、
裁判を起こす。
東京地裁令和2年1月23日判決
LLI/DB 判例秘書登載
前回の記事
前回までのまとめ
女性A(41歳)
32歳で長男出産(現在9歳)
【平成25年9月】
右胸にしこり
Bクリニック受診
【平成25年12月6日 Y病院受診】
・検査実施、手術予定を立てる。
・『乳がんの治療をこれから受ける方のために』
という冊子を貰う。
▶︎ 妊孕性温存や不妊治療については、
質問するようにと記載あり。
【平成25年12月20日〜平成26年1月22日】
・各種検査
・リンパ節の転移の疑いが持たれる
【1月30日 Y病院受診】
・手術前の説明
2月6日:入院
2月7日:手術と説明
2月11日:術後の詳しい説明
2月17日:退院
【3月3日 Y病院受診】
・C医師に質問する
「温存した左胸で母乳は出るか」
▶︎ 子どもを希望する、
直接の質問ではなかった。
【3月24日 Y病院受診】
・病理検査の結果説明
「左胸は浸潤なし、
右胸はリンパに2個転移、浸潤がん」
・冊子を渡される
『乳がんに対するAC療法(抗がん剤治療)について』
▶︎ この冊子を読んで、
抗がん剤の副作用で、
閉経の副作用があることを知った。
【3月26日 Y病院に電話】
・子供が欲しい場合どうすれば良いか。
・C医師(担当医)が男性医師だから、
そのような話がなかったのか。
・女性の医師に相談したい。
【3月28日 Y病院に電話】
・癌の遠隔転移を調べるという、
PET検査の必要性をC医師に聞きたい。
【3月31日 Y病院から本人に電話】
・PETの必要性の説明。
・41歳だし、
今後、5年は投薬予定の為、
受精卵凍結をしても妊娠は難しい。
・息子の為に治療を優先した方が良い。
▶︎ それでも、
妊娠・出産の可能性を残すには、
どうしたら良いか質問はしなかった。
【4月2日 Y病院受診】
・女性のE医師の診察
・癌の再発や閉経の説明を受け、
抗がん剤を受け入れられると回答。
・抗がん剤の開始日を4月10日で予約。
【4月10日 Y病院受診】
・担当のC医師の診察の終了間際、
「F大学G医師に、
セカンドオピニオンを受けたい」と希望。
▶︎ G医師に聞くことがまとまったら、
改めて相談するように、本人に伝える。
・内科に引き継いで、
診察を受ける(H医師,I医師)。
本人「閉経と出産できないことが心配」
H医師「癌の治療で出産は難しくなるが、
再発予防の為には受けた方が良い」
・抗がん剤の投与に同意し、
この日から治療開始した。
【4月11日 Y病院に電話】
・「やっぱりF大学のG医師に、
セカンドオピニオンに行きたい」
▶︎ G医師への紹介状作成
【5月7日 F大学受診】
・G医師に診察を受ける
▶︎ C医師に対して返事を作成
女性Aが裁判を起こす。
令和2年判決
(上記治療は、平成25年の41歳時)
36.女性Aの主張①
【 女性Aの主張1つ目 】
⬜︎ Y病院の医師は、
初診日(平成25年12月6日)の時点で、
前医からの情報や、女性Aの訴え、
乳がん短期間で倍近くまで大きくなったこと、
HER2が高値なので、
進行が速いことを認識できたはず。
⬜︎ 初診日から数週間以内には、
手術を実施すべきだった。
37.裁判所指摘:根拠にならない
⬜︎ どの程度の期間で、
どの程度がんが大きくなったら、
「他の患者に比べて、
早期に手術を実施すべき」
と言えるか、
基準は明らかになっていない。
⬜︎ HER2の高値を理由に、
「他の患者に比べて、
早期に手術を実施すべき」
という、
医学的知見は認められない。
38.裁判所指摘:証言内容も一般的
<C医師の証言内容>
・女性Aは、
【前医で大きさ6㎜程度の非浸潤がん】
との診断されており、
他の患者と比べて、
特に急を要するような状況にはなかった。
・病院初診日のエコー検査の結果、
大きさ15㎜になっているが、
大きさ15㎜だけで、
急ぐべき状態にはならない。
・大きさの変化についても、
計測者が異なることでの誤差、
女性Aの乳がんの境界が不明瞭な事での誤差、
もあるので、
これらを考慮すれば、
「他の患者よりも、
早期に手術を実施した方が良い」
という判断に至ることはない。
⬜︎ 上記のC医師の証言内容が、
臨床医学の医療水準に反するとは言えない。
39.裁判所指摘:冊子内容
⬜︎ Y病院は、
患者に冊子を配布している。
⬜︎ その冊子には、
手術を受ける前に検査をする事について、
以下のように書いている
・治療開始前に、
全身麻酔手術が安全にできるか、
調べる各種検査
・がんの広がりを確認する為の各種検査
・リンパ節への転移を確認する為の各種検査
・遠隔転移の有無を確認する為の各種検査
などが必要になる、
と書いている。
40.裁判所指摘:手術までの流れ
・初診日(12月6日)に、
手術までの待機時間ができる事を。
説明されている。
↓
・各種検査を実施していく中で、
リンパ節への転移や、
左乳房にも乳がんの疑いが、
指摘されている。
↓
・1月16日のC医師の診察のとき、
左乳房は確定診断前の段階ではあるが、
医師の予定と手術室の空きから、
最も早い日程で手術をする事になった。
⬜︎ この経過なので、
手術の実施が遅れたとは言えない。
41.女性Aの主張①の判断
①「手術の実施時期が遅かったから、
がんがリンパ節へ転移した。」
裁判所は、
医師の過失を認めず。
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