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お名前をつけてくださると幸いです。
匿名・匿名希望が多く、
過去にご質問頂いた内容が、
わからなくなってしまいます。
お手数おかけ致しますが、
なんでも良いので、
お名前をつけてくださるよう、
ご協力して頂けると助かります。
「大野病院事件」
癒着胎盤を剥離して、
女性が死亡。
医師が刑事裁判にかけられる。
※福島地方裁判所平成20年8月20日判決
(判例時報2295号6頁)
前回の記事
解説を担当致します。
弁護士の、
甲野 裕大(こうの ゆうだい)
です。
【取り扱い分野】
不妊治療分野/離婚分野
・不妊治療クリニック顧問
・凍結胚トラブル
・精子提供、卵子提供
・不妊治療中の離婚
・不倫
など
131.医師法違反の検討
⬜︎ 医師法では、
通常とは異なる状態で死亡であれば、
医師は、
警察に届け出をする義務がある。
⬜︎ 裁判所では、
医師法21条に則って、
法医学的にみた、
「通常とは異なる状態で死亡」
に該当するかを検討した。
132.失血死は順当
⬜︎ 前置胎盤の患者が帝王切開中に、
「胎盤剥離」という、
診療行為の結果、
大量出血で患者が死亡したので、
(失血死・ショック死という意味では、)
不自然な死亡とは言えない
と認定。
⬜︎ これらから、
医師法に違反しておらず、
「罪は成立しない」
と判断された。
133.無罪が言い渡される
⬜︎ 被告人が裁判をかけられた、
「いずれの罪も成立しない」
という判断になり、
被告人は無罪となった。
当時の世論や風潮
当時、医療事故で、
「産婦人科医が、
刑事裁判にかけられた」
という事は、
非常に大きなニュースになり、
産婦人科の臨床の場にも、
波紋が広がりました。
例えば、
悪意や殺意があって、
殺人をした訳ではなく、
治療中の死亡で、
あくまで、医療事故である為、
民事裁判が相場とされています。
産婦人科は裁判が多い
産婦人科は、
元々、裁判が多い診療科として、
有名です。
小児科も多いことで有名です。
産婦人科医のなり手が激減
さらには、
産科(周産期)では、
拘束される時間が長く、
いつ呼ばれても良いように、
近場で、
いつも頭をクリアにして、
過ごす必要があります。
その為、
産婦人科を選ぶ医者が少ないです。
それだけではなく、
産婦人科をやめる医師も出たり、
分娩の取り扱いをやめたり、
帝王切開が必要な妊婦は、
軒並み全て総合病院に搬送する
という事が、
頻発したそうです。
完全な破綻に繋がった
分娩を取り扱う病院も、
年々減少し、
社会問題になっています。
ただでさえ、
産婦人科での民事裁判が多い中で、
現役の産婦人科医が、
刑事裁判にかけられた事で、
『産婦人科は完全に破綻した』
とも言われる、
大きな事件になりました。
今でも、
「大野病院事件」として、
知られることになりました。
裁判の内容と、当時の世論
起こってしまった医療事故は、
とても痛ましく、
適した治療はあったという意見は、
当時から多かったです。
また、裁判でも、
検察側の意見が、
ほとんど認められました。
「診断はつけられた」
「もっと適した治療があった」
「クーパーの無理な剥離が致命的」
などと、
裁判官は、
医療事故についての過失は、
ほぼ認めています。
＊この裁判では、
裁判官は3人でした。
ただ、大きな問題は1つで、
刑事裁判であることです。
過失の内容の大半は認められましたが、
「刑事罰としての過失」
としては、
認められませんでした。
学会からの声明・非難
起訴され、
刑事裁判になったことで、
大きな注目を集め、
日本産科婦人科学会や、
日本産婦人科医会などが、
声明を発表する、
異例の事態になりました。
無罪でも
結果、無罪になりましたが、
『分娩で何かあったら逮捕、
起訴される』
『産婦人科は、何かあったら、
刑事裁判にかけられる』
というイメージが、
強く残る事件となりました。
民事裁判であれば、
そこまで反感を買う事もなく、
遺族にとっても、
また結果も異なるものだった
と思います。
結果として、
「起訴した検察が悪い」
と言われる事件になり、
遺族としても、産婦人科医としても、
非常に納得のいかない、
複雑な事件
として、幕を閉じました。
検察側が控訴せず、
第一審で終わった事が大きく物語っている
と言われています。
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