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「大野病院事件」
癒着胎盤を剥離して、
女性が死亡。
医師が刑事裁判にかけられる。
※福島地方裁判所平成20年8月20日判決
(判例時報2295号6頁)
前回の記事
126.弁護人(被告人側)の主張
⬜︎ 癒着胎盤で胎盤を剥離しない時は、
以下の3つと主張した。
① 手術前に、
「穿通胎盤・嵌入胎盤」と診断できた時
*穿通胎盤・嵌入胎盤は、
癒着胎盤の中で重症度が高い。
② 開腹した後、
メスで子宮を切る前に、
「穿通胎盤・嵌入胎盤」と診断できた時
③ 胎盤の剥離をした時に、
癒着のため、
最初から用手剥離ができない時
127.中止すべき義務はなかった
⬜︎ さらに、被告人側の弁護人は、
「用手剥離を開始したら、
出血してでも、
胎盤剥離を完了させるべきで、
剥離を中止すべき義務はない」
と主張。
⬜︎ 剥離を完了させて、
子宮の収縮を期待しつつ、
止血処置をすべきで、
それでも大量出血した時に、
子宮を摘出する流れが、
当時の医療水準と主張。
「胎盤剥離を、
途中で中止すべき義務はなかった」
と主張した。
128.裁判所の判断
⬜︎ 検察官側・被告人側も、
証言した複数の医師のいずれも、
癒着胎盤で、
胎盤剥離を中止・子宮摘出に移行した、
具体的な症例を経験していない。
⬜︎ また、検察官側・被告人側、
いずれからも、
報告症例の提示もない。
129.流れが一気に変わる
⬜︎ 裁判所は、
被告人側の主張を認め、
検察官が主張した、
「癒着胎盤と認識した以上は、
直ちに胎盤剥離を中止して、
子宮摘出に移行すること」
については、
認めることはできない
とした。
⬜︎ また、裁判所は、
具体的なリスクの高さを根拠にしても、
胎盤剥離を中止すべき義務があった
とも認められない
とした。
130.業務上過失致死罪への該当
⬜︎ 業務上過失致死罪の、
要件(条件)である、
過失があったという証明ができず、
罪は成立しない
と判断した。
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