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【 生殖関連の裁判例 】
妊娠38週での分娩の誘発で、
子宮破裂で女性が死亡。
遺族が裁判を起こす。
※東京地裁令和5年2月20日判決
(LLI/DB 判例秘書登載)
前回の記事
前回までのまとめ
⬜︎ 女性A(昭和54年生まれ)は、
平成29年11月20日、
Y病院で、妊娠6週6日と診断。
⬜︎ 妊娠38週2日(平成30年7月5日)に、
分娩誘発の為に入院して、
翌日に分娩誘発を行う。
⬜︎ 当日朝9時に、
NST(分娩監視装置)をつける。
*NST:胎児心拍と、
子宮収縮の度合いを同時に見る検査。
⬜︎ 時系列ごとの処置・状態
「アトニン」:分娩誘発剤
「アナペイン」:硬膜外麻酔
9:12 アトニン5ml/h
9:12 子宮口 2.5㎝
9:44 硬膜外麻酔カテーテルを入れた
(無痛分娩の為)
10:05 アトニン15ml/h
10:35 アトニン25ml/h
11:05 アトニン45ml/h
11:35 アトニン35ml/h
11:42 アナペイン2.5ml
12:10 アトニン55ml/h
13:00 アナペイン5ml
13:00 子宮口2~3㎝
13:15 アトニン60ml/h
15:20 アナペイン5ml
16:30 人工破膜・破水
17:19 胎児心拍120bpmまで低下
→助産師が医師に伝えず
17:25 アナペイン5ml
17:30 分娩室へ移動、NST外す
17:30 子宮口4㎝
17:40 NSTつける
17:40 子宮口5㎝
17:30 子宮口7~8㎝
17:30 胎児心拍50~60bpmまで低下
17:52 アトニン投与中止
18:00 出産と、多量の出血が始まる
18:01 胎盤娩出
18:10 出血が止まらず、
C医師が分娩室に入室
止血を試みたが出血止まらず、
さらに、搬送を要請した病院の、
全てから受け入れを断られる。
輸血10単位(2000cc)
18:30 出血量2410gに達した
18:40 出血量4303gに達した
開腹の為手術室へ移動
出血量は移動中に1140g増加
子宮動脈を縫合するも、
女性は心肺停止。
心臓マッサージ・カウンターショックで
自己心拍再開。
18:58 119番通報
19:03 救急車がY病院に到着
19:25 救急車が出発
19:45 救急車がE医療センター到着
子宮の摘出を行う
【平成30年7月6日】
0:43 死亡
裁判で争ったポイント①
① 分娩誘発をした日(7月6日)の、
午後5時20分に、
NST(CTG)で、
胎児心拍が120に低下していた。
NST:胎児心拍と子宮収縮を見るモニター
しかし、
助産師が医師に、
胎児心拍の異常を報告もせず、
分娩誘発剤のアトニンを、
中止や減量しなかった。
『この時点で、過失と言えるか』
まず、裁判所は、
遺族側から提出された、
アトニンの添付文書と、
分娩時のガイドラインを見た。
アトニンの説明書(添付文書)
*添付文書*
法律(薬機法)で定められている、
薬を作っている会社が、
薬を説明する公的な文書のこと。
⬜︎ オキシトシン(アトニン)の、
添付文書に、
以下の記載がある。
「オキシトシンに対する
子宮筋の感受性が高い場合、
過強陣痛、胎児機能不全が
あらわれることがあるので、
このような場合には
投与を中止するか、又は減量すること。」
ガイドライン
⬜︎ さらに、ガイドラインでは、
以下の記載がある。
・胎児機能不全が起きた時
(胎児心拍数の異常)
・10分に5回を超える回数の
子宮収縮が起こった時
(子宮頻収縮)
子宮収縮薬の点滴中に、
上記のどちらかの症状が出た時
↓
↓
【1】吸引分娩などが可能な場合
子宮収縮薬の継続も考慮される
【2】吸引分娩などが可能ではない場合
子宮収縮薬の投与の中止か、
半分量以下への減量が、
推奨されている
他の医師の意見
裁判では、
第三者の視点の医学的な意見として、
当事者とは別の複数の医師達が、
意見を述べた。
⬜︎ 裁判に協力した、
外部の医師達の意見は、
「午後5時20分の時点で、
子宮収縮波形が、
子宮頻収縮を示している」
と述べた。
⬜︎ また、この、
「NSTの波形を見ると、
子宮の収縮は強かった(頻収縮)」
とした医師達の意見に、
反する証拠もない。
⬜︎ 医師達は、
午後5時20分頃のNSTに、
遅発一過性徐脈の所見を認め、
過半数の医師は、
午後5時20分の時点までに、
基線細変動の減少も認めた。
→ 胎児に元気がない事を示す波形。
⬜︎ 医師達は、
異常波形であるとした。
(少なくともレベル3以上)
⬜︎ つまり、
この時のこの波形を見れば、
「子宮に強い収縮があり、
尚且つ、
赤ちゃんに元気もない事がわかる」
と意見した。
裁判所の判断
⬜︎ つまりは、女性Aの状態から、
ガイドラインの、
「子宮収縮薬の投与の中止か、
1/2量以下への減量の検討を推奨」
に該当すると言える。
⬜︎ その為、
胎児心拍が120まで低下した時、
アトニンの中止か、
1/2量以下に減量すべき異常波形があったのに、
助産師は、
医師に報告せず、
アトニンの中止・減量もなかった
裁判所の判断
「病院側に、注意義務違反があった」
裁判で争ったポイント②
② 子宮破裂は、
いつ起きて何が原因か。
原因は病院にあるか。
⬜︎ 胎児心拍と子宮収縮を
同時に見るモニター(NST)で、
午後5時50分頃に、
心拍が50-60になっており、
重症だった(高度徐脈)
⬜︎ さらに、子宮破裂が起こると、
腹腔内(子宮の外)でも出血する為、
「胎児の吸引分娩と同時の大量出血」
という事も、
『午後5時50分頃に、
子宮破裂が発生した根拠の1つ』
第三者の医師達が意見した。
⬜︎ また、NST(CTG)を見ると、
「アトニンの投与のせいで、
強い子宮収縮が起きて、
胎児に元気がない状態だった」
と、医師達の意見が合致。
*アトニン:子宮収縮をさせる薬。
分娩誘発剤。
⬜︎ 医師達は、
下記の意見で合致した。
『アトニン投与が、
子宮破裂の要因の1つ』
裁判所の判断と結論
裁判所の判断
☑︎ Y病院の医師・助産師が、
胎児心拍が120に低下した、
午後5時20分に、
アトニンの投与中止か、1/2への減量で、
子宮の収縮が収まり、
子宮破裂を避けられた可能性が高い。
☑︎ つまり、
アトニンの投与量や、
助産師が報告しなかった事と、
子宮破裂には、
因果関係があると認定する。
☑︎ 女性Aが死亡原因は、
子宮破裂での大量出血と認定する。
☑︎ 結論として、
Y病院側に女性Aの死亡の責任がある。
賠償金の金額
裁判所は、
賠償金を認定し、
Y病院に支払いを命じた。
⬜︎ 治療費
⬜︎ 葬儀費用
⬜︎ 逸失利益
⬜︎ 慰謝料
⬜︎ 弁護士費用
合計 7637万9963円
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