ゴールデンウィークとは無関係に、僕の列車は進む。
『道ありき』に強く心揺さぶられた僕は、次の三浦綾子に手を伸ばす。
並んだ背表紙の中から、スッと抜き出した1冊は『塩狩峠』。
(最近選ぶ本が大抵そうなのだが)なんの先入観もなく読み進めるうちに、すっかり足を取られ、身動きできなくなっていた。
子供の頃に眠った、重い綿布団に圧されているような充足と、妙な安心感を思い出した。
汗ばむ布団をはねのけて、パジャマを脱いだ胸に朝の風を受けながらボーっと庭を眺める。
そんなエンディングのあとで、このドラマが実話に基づいていることを知った。
(多分、この小説を読んだ多くの人が思うように)塩狩峠へ行きたくなった。
そしてこの表紙にあるような、枕木の脇に咲く、小さな名もなき花を見つけたくなった。