水口君とはよく映画の話をした。
「先輩、あれ観たことありますか?」
「naotoさん、今度あれ観て下さいよ」
いろんな映画を薦められた。
その中には僕の好きな古いミュージカルとか、僕らが生まれる前のモノクロ映画なんてのは無い。
古くても『ゴッドファーザー』くらいまでだったんじゃないかな。
おおよそ80年代以降の洋画、水口君がほぼリアルタイムで観てきた作品が多かった。
彼がよく話していた映画の中に『007シリーズ』があった。
僕もショーン・コネリーは好きだし、ロジャー・ムーアのシリーズも何作かは観ている。
でも水口君はそのあとのティモシー・ダルトンだのピアース・ブロスナンなどもよく観ていて、よく知っていた。
『007シリーズ』やアクション映画そのものに対する愛情が、僕などとは断然違った。
それを思い出して、最近僕も観るようになった。
ピアース・ブロスナンの『ゴールデンアイ』。
ハンサムだわねえ。
ダニエル・クレイグの『カジノ・ロワイヤル』。
多分、歴代のボンドの中で、水口君が一番気に入っていたのがダニエル・クレイグじゃなかったか。
はっきりそう聞いた覚えはないが、何となく言葉の端々に、そういう気分がこぼれ出ていたような気がする。
確かにこのボンドもカッコいい。
ショーン・コネリーも勿論好きだったと思う。
観たことのなかったシリーズ第1作『Dr. No』を借りてきた。
『Dr. No』に「ドクター・ノオ」と仮名を当てたのも、この際いいセンスだ。
実際、ノーやノウより怖いドクターが出てきそうじゃないか。
『007』は、何度も観た作品がある一方で、タイトルは知ってても意外と一度も観たことがない作品があったりする。
それがタイトルだけでは判断がつかなかったりする。
ジャケット裏のあらすじを読んでも、観たような観てないような曖昧な記憶だったりもする。
この際最初から全部観てみようか。
そういうのもちょっと違うような気がする。
時々思い出して、また観てみますよ、M。