劇団四季ミュージカル
パリのアメリカ人
作曲: ジョージ・ガーシュウィン
作詞: アイラ・ガーシュウィン
台本: クレイグ・ルーカス
演出・振付: クリストファー・ウィールドン
装置・衣裳デザイン: ボブ・クローリー
照明デザイン: ナターシャ・カッツ
音楽監督: ブラッド・ガードナー
出演: 劇団四季
〈キャスト(2019.2.16 夜公演)〉
ジェリー・マリガン: 酒井 大
リズ・ダッサン: 石橋 杏実
アダム・ホックバーグ: 斎藤 洋一郎
アンリ・ボーレル: 小林 唯
マイロ・ダヴェンポート: 宮田 愛
マダム・ボーレル: 佐和 由梨
ムッシュー・ボーレル: 味方 隆司
オルガ: 木村 智秋
ミスターZ: 金久 烈
男性アンサンブル:
吉岡 慈夢、ツェザリ・モゼレフスキー、照沼 大樹、田中 勇人、皆川 知宏、鈴木 伶央、渡邉 寿宏
女性アンサンブル:
篠原 真梨子、吉村 菜奈子、森田 美穂、武田 恵実、塩住 珠希、藤本 典子、村上 今日子、森 真琴、平井 佑季
会場: 東急シアターオーブ
2019年最初のミュージカルは劇団四季でした^^。四季劇場以外での四季ミュージカルは、初めて。実はこのプロダクション、No Markだったのですが敬愛するブロ友フランツさんが絶賛記事を書かれていたのを拝見し、これは観に行かなくては!と( *´艸`)。ジーン・ケリー主演の映画版「巴里のアメリカ人」は大好き。映画同様、音楽は全てガーシュウイン。間違いあるはずがありません。でもほんのちょっとだけ、映画版が好き故にもしも万が一ガッカリしてしまったら・・・との一抹の不安が一瞬よぎりもしましたが、心配無用!でした。大満足、大満喫♡。
思わずチケット取りたくなっちゃう、フランツさんの記事はコチラ↓
https://ameblo.jp/franz2013/entry-12435978088.html
映画版「巴里のアメリカ人」の私のレビューはコチラ↓
https://ameblo.jp/pmds90l80/entry-12311628767.html
フランツさんの記事を拝見し、観に行きたい!と熱烈に思ったのは勿論フランツさんのレビュー内容もしかり、もう一つの大きな要素が振付・演出を担当したのがクリストファー・ウィールドンさんだという情報!英国ロイヤル・バレエのオリジナル作品で、去年は新国立劇場でも初上演して話題だったバレエ「不思議の国のアリス」の振付を手掛けた方です。「不思議の国のアリス」、とっても観に行きたかったのですが術後だったこともあって敵わず、次回は必ず観に行きたい!と思っております。
そして、公演ホームページを見たらさらに舞台美術のボブ・クローリーさんは同じく劇団四季の「リトル・マーメイド」や「アラジン」も手掛けた方とのこと。どちらも四季劇場で鑑賞して、舞台美術がとても素晴らしかった、と印象に残っている作品です。そしてミュージカル版「パリのアメリカ人」そのものは、映画版「巴里のアメリカ人」を原作として2014年にパリで初めてミュージカル化され、その後ブロードウェイへ渡ってトニー賞で振付賞、編曲賞、装置デザイン賞、照明デザイン賞を獲得。
これだけの綺羅星が並んでいたら、観に行かない理由がもはや見つかりません(笑)。そして、こちらのチケット購入ついでに、どうしようかなーと思っていた「王様と私」の先行チケットも買っちゃったのですが、それはまた後日のお楽しみということで・・・(笑)。
いやはやもう、まったく、素晴らしかったです!フランツさん本当にありがとうございます!そして私も友人に勧めまくってさらに観客動員に一役買いました(笑)。期待膨らましてハードル上げておいてもそれをかるーく飛び越えて押し寄せる感動。もうこうなったら、日本語だろうが英語だろうが上演言語は全く関係ないですね。音楽、ストーリー、振付、舞台美術、キャスト。全てが混然一体となって極上のエンターテイメント。
ハナから音楽は素晴らしいに決まってますが、映画版には含まれない(と思う)、ガーシュウインの楽曲もプラスオンで超オトク♪バレエを主軸にした振付も本当に美しくて、タップダンスのシーンも、アンサンブルと一緒に大勢で踊るシーンも、どれも見応えアリだし、ジェリー役の酒井大さん、リズ役の石橋杏実さん始めキャストの皆さんも演技に歌に踊りにと、本当に素晴らしかったです。こんなにいろんなことが出来る人たちが世の中にはいるんだな!しかも何人も!と手放しで感動&感激。
個人的な感想としては、映画版とミュージカル版で、メインの4人の関係性やラブストーリーの展開は共有しつつも細かな設定や展開がちょっとづつ違っているのも、良かったと思います。1粒で2度おいしい的に、大好きな作品をまた新しい味わい方で楽しめる喜び。映画製作から60年以上経過しているので、映画版のストーリーをさらに膨らませて少し複雑にして、時代や観客の嗜好の変化に合わせたアップデートと、ミュージカル版ならではのオリジナリティも生まれていて良い感じでした。
というわけで、映画とミュージカルの違いをメインに、内容についても少し書いておこうと思います^^。
第二次世界大戦のヨーロッパ戦線が終結し、解放されたパリ。アメリカ兵のジェリーは帰国当日、パリの街で魅力的な女性(リズ)を見かけて一目で恋に落ち、彼女の姿を追いかけますが見失ってしまいます。それでも芸術家志望のジェリーは、帰国を取りやめてパリに残る決意をします。そして偶然入ったカフェで同じくアメリカ人でピアニスト志望のアダム、アダムの友人でブルジョワ階級だけれども両親に内緒で歌手を目指しているフランス人アンリと知り合い、それぞれ芸術と自由を愛する3人はあっという間に仲良しに。
アンリは、映画版では既に有名な歌手でしたが厳格な両親に反対されつつアメリカへ渡ってラジオ・シティーの舞台に立つことを夢見る青年、と設定を変えたことは後々の色々な展開に大きく影響してきます。そしてアンリのキャラクターも、自信たっぷりの成功者、ではなくピュアで心優しい育ちのよい坊ちゃん、でも内面にはしなやかな強さと複雑で深い思いやりや苦悩を抱えているという人物像になっていて、魅力アップしていました。
そして物語の背景に戦争が絡んでいると、以前はなるほどその時代なのね、くらいに思っただけですが、戦争映画まとめを作った後だと、その戦争のその場所のその立場、状況、というものをより多角的に考えるようになって、物語の背景への考察が広がるというか、より奥行きを持って受け止めることができるようになったような気がします。
ミュージカル版で唯一の残念ポイントを挙げるとすれば、映画版で私が主演のジーン・ケリー以上にお気に入りだった、オスカー・レヴァントが演じたアダムの存在感が薄れたことでしょうか(笑)。ジェリーとアンリが、お互いの想い人が同一人物だとは夢にも思わず「彼女は僕に恋してる♡」とウットリ陶酔しているところにアダムだけが事実を知っていてハラハラするコミカルなシーンの他、四角関係の恋の顛末に重要な役割を担うアダム。
ミュージカル版でも概ね役割は一緒なのですが、アダムまでリズに恋しちゃうっていうのは蛇足だったかと。途中でアダムの恋は中途半端になっちゃって、その設定活かせていなかったし。でもまぁ、オスカー・レヴァントの芸術的なまでの演技と存在感と比べてしまうのは酷というものかもしれません。ミュージカルを観た後、また映画も観たくなりましたが(そしてまだ観られていないのですが)、その理由の1/3くらいは、オスカー・レヴァントのアダムに会いたかったからだと思われます(笑)。
ジェリーのパトロンとなるマイロ。宮田愛さんのマイロもとても素敵でした。プライド高く聡明な資産家のブロンド美女。ビジネスライクな割り切りと切ない恋心のせめぎ合い。映画版よりもさらに共感や感情移入されやすい魅力的なキャラクターになっていたように思います。マイロさん、切なし!(:_;) そして映画での、レジスタンスを両親に持つリズを、アンリが命がけで守った・・・というエピソードも、アンリの両親もドイツ友好派の立場を表向き保ちながら陰でレジスタンス活動をしていた、両親が収容所へ連行されたリズのことをずっと匿っていた、というファミリー巻き込んでの設定にしたことで、アンリの両親の立場や想い、アンリと家族の葛藤、リズとボーレル家の関係もさらに複雑に、センシティブに。
才能あるダンサーだった母親の血を受け継ぎ、ギャラリー・ラファイエットの香水売り場の売り子をしながらバレリーナを目指している設定のリズ。映画ラストの、ジェリーのイマジネーション世界での長尺での素晴らしいダンスシーンは、リズの為にマイスターが特別に振付をしたバレエ作品でデビューするリズの初舞台での、リズの実際のダンスと、頭の中のイメージが融合する演出。最初は背面を客席に見立てて、舞台側の視点の演出から、途中で正面側にくるっと視点が変わるところも素敵でした。
おっと、先ほどうっかり言い忘れましたが、ボブ・クローリーさんによる衣装と舞台美術も本当に美しくて世界観を大いに盛りたてていました。ミニマムな舞台装置と、美しいプロジェクション・マッピングが素晴らしいマッチング。夢のような世界が舞台いっぱい広がっていました。まだ公演日程残っています。その後横浜公演もあります。ぜひぜひ♪
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