アイ・ソー・ザ・ライト | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2015年 アメリカ
監督: マーク・エイブラハム
原題: I Saw The Light


1940年代に絶大な人気を博しながらも29歳にしてこの世を去ってしまったという伝説的カントリー歌手ハンク・ウィリアムズの伝記映画。ハンク・ウィリアムズのことは全く知りませんが、「マイティ・ソー」シリーズのロキ役とシェイクスピア劇ドラマ「嘆きの王冠~ホロウ・クラウン~」シリーズのヘンリー四世役でガッツリとハートをわしづかみにしてくれたトムヒことトム・ヒドルストン目当てで鑑賞です。ちなみにイギリスBBCドラマの「ジェイン・オースティンの後悔」でオースティンものにも出演していたりして、何をやってもツボを押さえてくるトムヒです( *´艸`)。
 
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暗転したステージにスポット・ライトに浮かび上がるハンク・ウィリアムズ(トム・ヒドルストン)が静かに歌い出すオープニング・シーンがいきなり美しくて画面がぶりつきです。やっぱりトムヒは歌も上手かった♡ 最初はアカペラで、やがて音がひとつづつ、そっと寄り添いちょっとづつクレッシェンドしていき、カメラもパーンしていきます。格好良くて叙情的な映像に感銘し、オープニングだけ巻き戻してリピートしちゃいました。



ハンク・ウィリアムズのことは知らないので、本人に対する感情移入や思い入れは皆無。知らない人の伝記、と思うと、才能あるアーティストの内面がナイーヴかつ直情的で名声は得ても家庭生活は上手くいかず、プレッシャーや孤独を募らせてアルコールと薬に溺れて身体も精神も徐々に蝕まれて行き早逝する、というのは映画のストーリーとしてはよくあるパターンで(実在の人物の人生によくあるパターンというのも失礼な言い方ですが)、特にこれといって目新しさはありません。トムヒありきのトムヒを満喫するための映画です。あと、哀愁だだよう美しい映像と音楽。ストーリーより雰囲気重視。



才能はありながらも、映画冒頭では早朝枠のラジオ番組と地元のカントリー・バーくらいしか仕事がないハンクですが、最初の妻オードリー(エリザベス・オルセン)とバンドと共に未来を信じて頑張る姿が微笑ましいです。やがてチャンスを掴み、レコードも制作され、ついにビルボードのヒット・チャート1位を獲得するまでに!イケイケドンドン、順風満帆な道がやっと開けます。



仕事が増えて収入も増えたので家を建て、美しい妻オードリーにも毛皮のコートをプレゼントできるようになり、幸せいっぱい♡ オードリーは、自分も夫と一緒に憧れの番組「グランド・オール・オプリ」に出場するのを当然のごとく目指します。夫に比べて才能がないと批判されることも多いのですが、ハンクは周囲の反対や批判をはねのけて機会あれば妻を盛り立てる優しい夫。理想の夫婦。「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」でも思いましたがオルセン姉妹の末っ子がこんなに大きくなったとは。



でも。何事も良い面だけではないのが人生。そもそも、息子の才能を溺愛している姑と、そんな夫に尽くすより自分も目立ちたがる気の強い嫁との仲は元々最悪。ことあるごとに衝突。オードリーが身ごもるという素晴らしい出来事も、ハンクだけが夢の「オプリー」への出演が決まるというタイミングのため喜び半減。一人、キャリアを磨いていく夫を妊娠、出産、子育てで家に縛り付けられて見送らなければならないオードリー。次第に夫婦の間の諍いも多くなり、元々アルコール依存症のハンクが酔った勢いに暴力を振るい手が付けられなくなることも増えます。夫の仕事が成功すればするほど、夫婦仲が壊れていく哀しい現実。



オードリーという支えを失ったハンクはどんどん破滅の道へ。女癖も悪い、悪い。こういう人ってその瞬間、その瞬間は本気で一途なんでしょうねー。但し、気が多い(苦笑)。新しい恋人ビリー(マディー・ハッソン)を自宅に連れ込んだら、仕事仲間兼愛人のダンサー、ボビー(レン・シュミット)と鉢合わせして、どっちも失いたくなくてオロオロしたり情けない(笑)。それでも、結果的にはビリーが粘り勝ちで2人目の奥さんの座をゲット。ハンクは何しろモテ男なので、彼を取り巻く女性たちも美女揃いでそちらでも目の保養( *´艸`)。古き良きアメリカ、の時代のファッションてクラシカルで男女共に端正な品格があって、いいですよね~。
 

 

ちなみに↑こちらがハンク・ウィリアムズ本人のポートレート。さすが我らがトムヒ、雰囲気よく掴んでいたんじゃないでしょうか^^。映画のストーリーではなく、トムヒと、クラシカルな美女たちと、ノスタルジー溢れる映像美を味わう映画ですがそれで十分成り立ちます。トムヒ好きな方は一度はぜひ。