ロバと王女 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

1970年 フランス
監督: ジャック・ドゥミ
音楽: ミシェル・ルグラン
原題: Peau D'ane
 
 
急に気温が下がってお天気が秋のミュージカル祭りに追いついた感じの今日この頃、いかがお過ごしですか^^。「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」に続く、ドヌーヴxドゥミxルグランのフレンチ・ミュージカル作品3作目。 シャルル・ペロー の童話『千匹皮』を元にした
ミュージカル映画です。観るのは今回が初めて。わくわく。
 
 
ドゥミ監督自身が7-8歳だったころこの童話が大好きだったそうで、映画もその年頃の子供たちの目線に向けて製作したそうです。なので、コスチューム・ドラマというよりも絵本の世界をそのまま再現したようなドレスやセット、演出の数々。「魔法にかけられて」にも共通しますね。スローモーションやリバースモーションなどの手法も使い、敢えての贅沢な大人の学芸会劇のような造りで、結果大人も子供も大喜びのメルヘンがつまった夢のような映画に(*'ω'*)。事実、ドゥミ監督作品の中で最大のヒット作となったそうです。
 
 
ある豊かで幸せな王国のたいそう美しいお妃さまが重い病気にかかってしまい、王様と一人娘の王女を残して死んでしまいます。お妃と王女を、カトリーヌ・ドヌーヴが一人二役。王様(ジャン・マレー)は、死ぬ間際の王妃の遺言で、お妃以上に美しい王女以外とは再婚しないと固く誓います。王妃の死後、王国の跡継ぎが必要だと主張する家臣たちは世界中の王女の肖像画を集めてきますが、どの王女も欠点ばかりでなくなった王妃以上の美人が見つかりません。
 
 
王、最愛の王妃を亡くしてから哀しみのあまり王女(カトリーヌ・ドヌーヴ)と会いたがらず遠ざけていましたが、世界中の王女の肖像画にダメ出しした後で、亡き王妃にそっくりな美貌に加え優雅さと知性に上回るほどの唯一無二の存在が王女であると気が付き、なんと実の娘にプロポーズします。父を心から慕う王女は、父のたっての願いに応えたいという思いと、実の父親と結婚するということへの戸惑いから動揺し、悩んでしまいます。
 
 
悩んだ王女が相談しに行ったのは、名付け親であるリラの妖精(デルフィーヌ・セイリグ)。やや自分勝手で若干エキセントリックな魅力的な妖精。「娘は父親とは結婚しないものよ」と王女に道理を説いてきかせ、王様が諦めるような我儘な無理難題をふっかけるようにアドバイスします。ところでこのリラの妖精、もしかして過去に王様と何かあった・・・?と思わせるような気配がチラリ。汚れた大人は「おやおやおやっ?」と気になってしまいますがまだ心が幼いピュアネスな王女はそこまで勘ぐりが働きません( *´艸`)。
 
 
「空の色のドレスが欲しい」という可愛い王女の我儘に、王宮お抱えの職人たちをこき使って(笑)一晩で結果を出してみせちゃう結婚する気マンマンの王様。そんな王様の玉座が巨大な白猫!大道具小道具の隅々までファンタスティックで可愛い♡そんなラブリー玉座にしかめっ面で威厳ふりかざす王様の絵面が最高( *´艸`)。王様役のジャン・マレーはジャン・コクトーの秘蔵っ子として知られ、プライベートでも長年の愛人だったと言われているそうです。空色のドレスに続いて「月の光のドレス」「太陽の輝きのドレス」と次々と実現不可能と思った難題をクリアしちゃう王様。結婚願望に燃える権力者は奇跡を起こす(笑)。
 
 
ついに最後の課題、国の一番の宝物、フンの代わりに金銀宝石を産み落とすロバの皮が欲しいというお願いも叶えてしまう王様。追いつめられた王女は、リラの妖精の指示でそのロバの皮を被り顔を暖炉の杯で汚して変装し、遠くへ逃げて身を隠します。「生きていくって大変なのよ、たとえ国王の娘でもね」ともっともらしく教訓をたれるリラの妖精から魔法の杖を借りた王女は遠い他国の農家で豚の世話係の下女として身を潜めて暮らすことになります。
 
 
みすぼらしく悪臭ふりまく「ロバの皮」がまさか王女さまだなんて誰も思いません。村人たちは酷い病気で醜い容姿になってしまったのを隠しているのだと噂話をしたり、こっちによるなよと棒でつついて意地悪をしたり。人間というものが外見で判断し、自分より劣ると判断した相手に残酷な態度を平気で取る生き物だという実地の社会勉強。
 
 
森の奥のオンボロ小屋で暮らす薄汚い「ロバの皮」ですが、小屋の中では魔法で出した上等の家具と王様が作った素晴らしいドレスで寛いで本来の自分の姿を取り戻す王女。「愛」を探す若く美しい王子様が偶然通りかかって、ボロ屋にそぐわぬキラキラ輝きまくる王女の姿を覗き見して一目惚れしてしまいます。それにしても、高貴なお育ちの王子様たちって、やたらと女性を覗き見して一方的に惚れてばっかですね、そういえば^^;。王子様だから美しい恋になるけれど、一般人のアクタイオンは悪気がないのに貰い事故的にディアナの水浴を目撃したカドで殺されちゃうんですよねぇ・・・世の中は厳しい(苦笑)。
 
 
そんな生まれも容姿も恵まれた理想の王子様を演じるのはコチラ↑、ジャック・ペラン。「ロシュフォールの恋人たち」でもドヌーヴそっくりの理想の女性との出会いを夢想する芸術家役で出演していましたが、その行く末は「ニュー・シネマ・パラダイス」の大人になったトトですよ~。トトさんは若い頃王子キャラだったのね・・・(´ω`*)。恋のやまいを患って食事も公儀も放置状態。心配する王妃に「ロバの皮のお菓子なら食べられるかも」とオネダリします。
 
 
こんな薄汚い掘っ立て小屋でそんなに美味しいお菓子が?といぶかしむ家臣たちの命令で、魔法のレシピ本を見ながら歌いながら「太陽のドレス」でお菓子作りをするシーンは、とってもおとぎ話めいていて楽しい可愛いシーン(*'ω'*)。特典のメイキング映像で、スタッフの女性?が「一度あの歌通りにケーキを焼いてみたことがあるけれど、全然美味しくなかった(笑)」と話していました。そりゃそーだ(笑)。でも、気持ちわかります(*^^*)。そして意外とあざとい?王女はケーキにこっそり自分の指輪を仕込んでおきます。王子さまが気づいてくれますように~♪って、可愛い乙女心ですが可愛い女子って本能的に戦略家|д゚)。
 
 
王子はお菓子を食べて元気になり、ほっと一安心の両親に「この指輪がピッタリ合う女性と結婚する」と言い出します。お触れを聞いて我こそは王子と結婚を、と必死のあらゆる女性たちが怪しげな美容薬を買ったり、自分の指をナイフで削ろうとしたりと醜いあがきを繰り広げるところも含めて、灰かぶり姫と似ています。国中の未婚女性がお城に集められますが、指輪に合うほどのほっそりした指の女性がいません。最後に誰も気に留めていなかった「ロバの皮」が現れ、見事ピッタリ。ロバの皮の下から美しいドレス姿の王女が現れます。
 
 
晴れて王女は父ではなく、愛する王子と巡りあって幸せな結婚にたどり着くことができました。結婚の祝宴は三か月も続き、世界中の王族や賢者や有名人が駆けつけてきました。可愛い息子が幸せになれて国王と王妃も満足、ニコニコ。
 
 
王子の両親、王妃(ミシュリーヌ・プレール)と王様(フェルナン・ルドゥー)も子煩悩で仲良し夫婦。王様のフワフワのあごひげにお花がくっついているのが、これまたラブリー♡。
 
 
知らせを聞いて王女の父王も駆けつけます。なんと、デコったヘリコプターで!(笑)しかも、隣にはあれあれ?リラの妖精がΣ(゚Д゚)。「王様と結婚したの。祝福してあげてね」とサラっと王女に耳打ちする妖精。やっぱり2人、過去に何かあったな・・・やけボックイてやつですかぁ?まーさーか、このために王女を遠ざけたんじゃ・・・いやいや、きっと天然でらっしゃいますのよね、妖精だもの(笑)。こんな風にちょいちょい、大人は思わずニヤリとしちゃう仕込みが、大人心をくすぐる要素のひとつです( *´艸`)。
 
 
そして、やはりとっても美しいカトリーヌ・ドヌーヴさんでした。おとぎ話の絵本から飛び出してきたお姫様が、これほどまでにハマる女優さんはきっと他にいなかったでしょうね~(*'ω'*)。ドヌーヴの存在そのものがまさに幻想的。くるくると色が変わる「空の色のドレス」から最後のヘリコプターまで、ドゥミ監督の魔法がたっぷり振りかけられた夢のような映画です。自分や親戚に女の子がいたら、一緒に観たら楽しいだろうなぁと思います。
 
YouTube貼りつけは、映画予告編から。そしてヒヨコちゃんが可愛い「Recette Pour Un Cake D'amour(愛のケーキの作り方)」と、劇中何度も登場する(オウムも歌う)愛についての歌「Amour, Amour」で美しいドヌーブとドゥミ監督の演出とルグランの音楽に酔いしれてください^^。