サタデー・ナイト・フィーバー | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

1977年 アメリカ
監督: ジョン・バダム

原題: Saturday Night Fever

 

 

秋のミュージカル祭り拡大解釈編。先日久しぶりに「ヘアスプレー」を観て楽しかった~♪でも、ジョン・トラボルタといえばこの映画。ですが、実は今まで一度も観たことがなかったのです。理由①世代違い ②ジョン・トラボルタが好きじゃなかった だからわざわざレンタルするほどの動機づけがなかったのですが、観たことがない人間にもこんなに存在が浸透している映画。この機会に観てみようとAmazonビデオでレンタルしてみました^^。

 

土曜の夜はフィーバーしよう(笑)。昔は土曜日は「半ドン」と言って学校も会社もお昼まであったんですよね。それが週休2日が浸透して「花金」という言葉が流行り、その後に「花木」なんていう言葉もできましたねぇ。最近は水曜が「ノー残業デー」。プレミアムフライデーは実際に実施されているという話を身近に見聞きしたことはまだありませんが、どんなものなんですかね?と、当時のポスターだけで余計な雑念の独り言がダラダラと(苦笑)。

 

 

70年代初頭のNYKの下町、ブルックリン。イタリア系移民のトニー(ジョン・トラボルタ)の鬱屈した日々。街の塗装屋の店員として毎日働くが実家を出るほどの稼ぎはなく、土曜日の夜、街のディスコへ仲間と繰り出すのが唯一の憂さ晴らし。これといった将来の希望も見えず野望もなく、それでも自分の状況を受け入れてなんとなく惰性ながらも上手くやり過ごす日々。

 

 

父親は半年も失業状態が続いていて卑屈な態度ばかりで父親の威厳ゼロ。母親は文句ばかりで、家族の中の出世頭と思っている長男の自慢ばかり。トニーのことはお兄ちゃんと比べて落ちこぼれのろくでなし扱い。そんな家族にウンザリしているトニーですが、ちゃんと家にお金は入れるし「着替えたシャツを汚したくない」と言いながらもちゃんと母野の作った料理は食べるしお兄ちゃんのことは尊敬して仲良しだし妹たちの面倒見も良い、家族を大事にするイタリア系青年らしさ。仕事も本人は自覚ないけれど真面目で親切な接客が評判で引き抜きされそうになる場面も。不良と思われているけれど実際は真面目で良い子なんだなぁ。ホメれば伸びる性質なんですね^^。

 

 

家では落ちこぼれ扱い、職場でも客受けはいいけれど店主からは軽んじられているトニーですが、そんな鬱憤はすべて土曜の夜に開放されるのです。念入りに時間をかけてヘアスタイルを決めて、金のネックレスで身を飾って少ないお小遣いで揃えたキメ服にお着替え。鬱積した若いエネルギーを発散させる、トニーが夢中になれる、唯一得意だと自他共に認められているもの、それはダンス♪いつの時代も、若者の有り余った青春エネルギーの発散の場が必要なのです。

 

 

土曜の夜のトニーはディスコ・キング。トニーのダンスにうっとりした女の子たちの逆ナンはひっきりなしだし、トニーが踊ればモーゼの海のごとく満員のダンスフロアにスペースが。初めて観る映画なのに、曲も振り付けもほとんど知っているのはなんでだろう( *´艸`)。後の時代のドラマや映画でも山ほどオマージュされていたりネタになったりし続けているし、当時青春時代を送った先輩方とお酒を飲んだり遊びに行ったりで間接的に知る機会が多かったから?しみじみ、すごい影響力を残した作品ですよねぇ。トラボルタ、やっぱり好みではないけれど、手足長くてディスコ・ファッションが映えますねぇ。この映画でまさにフィーバー巻き起こしたのは納得です。

 

 

そのディスコ・フロアーで踊るステファニー(カレン・リン・ゴーニイ)に一目ぼれして、年に一度のダンス・コンクルールのパートナーに誘います。ステファニーは美人でダンスが飛び抜けて上手でしたが、トニーを寄せ付けない空気をプンプン放っていました。マンハッタン側とブルックリンの世界の違い、特にマンハッタンがどれほど美しく洗練されているか。向上心と自尊心の強いステファニーは自分がマンハッタンでどんな素晴らしい仕事に携わっているかを散々自慢し、年下で教養もないトニーを鼻で笑ってバカにする態度。

 

トニーは、ステファニーの言っている言葉がほとんど理解できないし(ローレンス・オリヴィエの名前も知らずカメラのCMに出演しているおじさんくらいにしか思っておらず、彼に言えばカメラ安く買える?とステファニーに質問する始末。でもイタリア系のスター、アル・パチーノは認識していて似てるって言われてデレデレ喜ぶシーンがあります^^)、バカにされて傷つくけれど、ステファニーを嫌いになれません。ステファニーもトニーをバカにしながら、彼と一緒にいると無理してスノッブぶらずリラックスできるのを感じている様子。

 

 

ステファニーとの出会いで、ブルックリンから向こう側に行くことが現実にあるということを知るトニー。でも、トニーの日常は相変わらず。悪友ボビー、ジョーイ、ダブルJたちと変わらずくだらないことで騒いで、ギャング相手に報復ごっこしたり仲間が女の子を妊娠させたことよりも今度の土曜の夜の洋服の事の方が気がかりだったり。そんな惰性の日常に嫌気がさしながらも抜け出せないトニー。

 

 

ステファニーとも何度も衝突しながらもなんとかコンテスト当日。会心のダンスで観客を魅了し、お互いのパッションも燃え上っていいムードに。大満足の出来でしたが、次のプエルトリコのカップルのダンスに衝撃を受けることになります。

 

 

トニーにとって最後の砦でもあったディスコ・ダンスでさえ、腐った世の中のひとつに埋没してしまい、何もかもに嫌気がさしてしまうトニーは最終的に、ついに鬱積した古いしがらみも日常も捨てることを決意します。どん底から這い上がろうと立ち上がる若者の青春のストーリー。話の内容はほとんど知らずに観たので・・・ラスト、こういう感じだったのですねぇ。何も解決はしないし、不安や心配の種ばかりですが・・・ある日トニーは気が付いた、そんな物語なんですね。ラストシーンはちょっと爽やかで清々しさとほんの少しの希望の光が射すようですが、大人としては色々複雑な気分になります。観る年齢によっていろいろと感じるものが変わるのが醍醐味のひとつなんだろうな。

 

 

それにしても、トニーに一方的に片思いをし続けて一生懸命つきまとうアネット(ドナ・ペスコウ)にまつわるエピソードがどれもいたたまれなかった・・・(T_T)。好かれていないってわかっていても諦められずストーキング、好きな人にあんなにあからさまにウンザリ顔されたらたまらない(>_<)。他の仲間たちなら簡単にこれ幸いと手を付けるところ、トニーは一度デートしただけで合わないと見極めて、拒絶しつづけるところはモトが誠実で優しいのだなぁと思いますが、それでもやっぱり、腐った蜜柑箱の中。仲間にもアネットにも冷たくしきれない情け深さが優柔不断となって残酷なとこに。最後の方のアネットの身に降りかかった残酷な出来事・・・つらすぎて正視できませんでした(T_T)。

 

トニー、地元に嫌気がさしてイチヌケする決心をするけれど、アネットやボビーの身に起こったこと、彼らに自分がしてあげなかったこと、結果的に自分が追い込んだことをもっと自覚しないと這い上がるのは無理だろうなぁ・・・。あの後簡単にうまくいくはずないし、幸せになっちゃいけないでしょ。それもあって、結果を見せずあぁいうところで終わっているのかもなぁ。

 

トニー、これから、本気で頑張れよ。結局はブルックリンの汚泥にくすぶったまま終わるのか、ステファニーが目指しているような成功を手にするのか。いくつもの可能性のあるトニーの未来像に思いをはせながら、自分自身の人生と重ねたたり、人ぞれぞれ解釈と想像の余地が広がる映画でした。ディスコ・ミュージックでワクワクするばかりじゃない、意外と一筋縄でいかない映画でした。だからこそ未だに人々の記憶に残っているんでしょうね。

 

とはいえ。ダンス・ナンバーはいつだってプラスのエネルギーを運んでくれます^^。サタデー・ナイト・フィーバーといえば、コレでしょ、なビージーズの「Stayin' Alive」をまずはしっかりご堪能ください♪そして、トニーとステファニーのコンテスト用ナンバー、タヴァレスの「More Than a Woman」。そしてこれも、青春の甘酸っぱさ漂う名曲ですよね、ビージーズの「How Deep Is Your Love」。この3局でディスコ・フィーバーに浸りましょう^^。