バンド・ワゴン | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

195.3年 アメリカ
監督: ヴィンセント・ミネリ
原題: The Band Wagon
 
 
いままで秋のミュージカル祭りをやってきて、図らずしてというか、必然的というか。「巴里のアメリカ人」「雨に唄えば」「ロシュフォールの恋人たち」とジーン・ケリー出演作が複数登場しました。ミュージカル映画といえば50-60年代アメリカのミュージカル映画の黄金期を外しようがありませんし、あの時代のミュージカル映画のスターといえば、ジーン・ケリー。そしてもう一人。フレッド・アステアも勿論外せません。というわけで、そろそろアステアの映画も観ておかないと^^。
 
 
これぞアメリカ!That's entertainment!なミュージカル映画の良さがたっぷり詰まった贅沢な名作です。監督は「巴里のアメリカ人」と同じ、「オズの魔法使」のジュディ・ガーランドの2番目の夫で「キャバレー」のライザ・ミネリの父親であるヴィンセント・ミネリ。出演者もフレッド・アステアを筆頭に実力あるスターばかり。「巴里のアメリカ人」で私のお気に入り、ピアニストのアダムを演じたオスカー・レヴァントに、「雨に唄えば」ではジーン・ケリーとのダンス・シーンで出演していたシド・チャリシー。映画冒頭部分では、当時のスター女優エヴァ・ガードナーが本人役でのカメオ出演も(^v^)。
 
 
かつては一世を風靡したミュージカル映画スターだったトニー・ハンター(フレッド・アステア)ですが時代の変化と共に出番がなくなり過去の人状態。そんな彼がNYKに到着した途端「トニー・ハンター ファンクラブ」のプラカードを持っておちゃめで楽しい歓迎をしてくれたのが、旧知の仲の劇作家のレスター(オスカー・レヴァント)とリリー(ナネット・ファブレイ)のマートン夫妻。
 
 
レスターとリリーは新作『バンド・ワゴン』を書き上げたばかりで、トニーに主演を、新進のジェフリー・コルドバ(ジャック・ブッキャナン)に演出を計画していました。コルドバ演出・主演の舞台「オイディプス王」の前衛的で派手な演出が、朗らかなコメディ向きの自分とは合わないと難色を示すものの説得とコルドバのノリノリのパフォーマンスの力技で制作が決定、出資者も集まりました。トニーも復帰をかけて頑張りますが。
 
 
ワンマンぶるコルドバの思いつきでどんどん脚本が変更され、相手役にキャスティングされた若い美人バレリーナのギャビー(シド・チャリシー)と彼女の恋人の振付師ポール・バード(ジェームズ・ミッチェル)とも波長が合わず、初日直前になっても一向にまとまらない状況についに我慢の限界。ブチ切れて飛び出しちゃいます。
 
 
自分との年の差に引け目を感じていたトニーと、尊敬する故に認めてもらいたくて背伸びして虚勢をはっていたギャビー。お互いの誤解を解いて、素直な気持ちを伝えあうと2人のダンスに素敵な化学反応が。キャストの気持ちはやっと一つになって初日に向けて前向きに頑張りますがコルドバがいじりまくった脚本と演出はまったくウケずに舞台は大コケ。成功を祈って盛大に開催される予定で準備されていたホテルの大宴会場は閑古鳥。ありゃあー(笑)。
 
 
ダチョウ倶楽部の「ダァー!」を連想するのは私だけ?( *´艸`) 後世の日本では知名度低いのでたいした情報がみつかりませんが、ナネット・ファブレイと当時のイギリスではスター俳優だったらしいジャック・ブッキャナンも素晴らしいです。全て失敗に終わった「バンド・ワゴン」ですが、トニーが所蔵のドガの絵を売って資金を作り、コルドバもリーダーのポジションをトニーに譲り、練り直しのリニューアル「バンド・ワゴン」をひっさげて地方巡業から出直すことに決定~。あきらめないこと、それがアメリカン・ドリームの肝です^^。
 
 
5つの趣の異なるナンバーによるオムニバス方式のショー「バンド・ワゴン」はツアー各地で大盛況、ついにNYKブロードウェイへの凱旋公演がかないます。舞台は成功、トニーのキャリアも復活。残りはトニーとギャビーの恋愛模様の行方・・・。「バンド・ワゴン」のナンバーは劇中劇として楽しめますが、トニー、リリー、コルドバが三つ子の赤ちゃんに扮する「Tripls(三つ子)」は特に楽しくてお気に入り。演出もシンプルながらうまくできている♪
 
 
ラストのトニーとギャビー主演の「Girl hunt ballet(ガール・ハント)」は、それまでのコミカルなナンバーとガラっと雰囲気を変えたハードボイルド風でスリリングでシックでドラマチックです。シド・チャリシーの脚線美にはやはりウットリ(*^_^*)。フレッド・アステアとジーン・ケリー、何かと比較対象となる二大スター。子供のころは、ダンスや歌や演技の上手さとかテクニックの違いとかはよく分からなかったので、単純に渋好みだった為に年上のフレッド・アステアの方がより「素敵なおじさま~♡」と思ったりしていました(笑)。そして秋のミュージカル祭りで久しぶりにジーン・ケリーの涼しい顔でこなす天才的なダンスの技と笑顔に感動しまくりました。こんなに素敵な人だったんだな!の新発見気分。
 
 
そしてジーン・ケリーに心が傾きながら久しぶりにフレッド・アステアのダンスを観てまたしても衝撃。なんて優雅なの~( *゚Д゚)。重力も骨格と筋肉の関係も全て関係なくなったかのような、踊るというより浮遊している?ものすごく高精度なマリオネットを天才的な職人が動かしている??洗練のアステア、技術のケリーと言われたのがやっと腑に落ちました。いやもうどちらも選べませんて、こりゃ(選べと誰にも言われていない)。才能って努力って素晴らしいですね。神様のギフトを受け取ったのはスターの彼ら自身よりも、そんな彼らの素晴らしい仕事を何十年後でも何度でも観て感動することができる私たちの方なのかも。
 
ピック・アップするナンバーは、やっぱり楽しいものが気分♪「Shine On Your Shoes」ではゲーセに立ち寄ったトニーが靴磨きの男性と一緒に踊って歌いますが、この靴磨き役の男性は実際に、踊りながら靴を磨くパフォーマンスが売りの本物の靴磨きをヴィンセント・ミネリが見つけてスカウトしたそうです。そしてお気に入りの「Tripls」。三つ子の知られざる苦悩と「ここに銃があったら他の2人を殺して残るのはたった1人自分だけ」という腹黒い策略(?)が笑いを誘います^^。さらにアステアの真骨頂?シルクハットに燕尾服のタップダンス「I Guess I'll Have to Change My Plan」。最後はこの映画から生まれた偉大なるスタンダード・ナンバー「That's Entertainment」です^^。