ジョイ | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。

2015年 アメリカ
監督・脚本: デヴィッド・O・ラッセル
原題: JOY
 
 
WOWOWで録画鑑賞。この映画、日本は劇場公開されなかったんですね。実在するアメリカ人女性、ジョイ・マンガーノの半生をジェニファー・ローレンスが演じた実話に基づいた映画です。頑張る女性のサクセス・ストーリーって、いいですよね( *´艸`)。しかも本名で「JOY(喜び)」!サクセスして映画化されるために名付けられたかのようです。監督は「スリー・キングス」「世界に一つのプレイブック」「アメリカン・ハッスル」でも監督・脚本を手掛けたデヴィッド・O・ラッセル。どの映画もまだ観たことがありません。この世界には、まだ観ぬ映画のなんと多いことか。
 
 
こちら↑がジョイ・マンガーノ。なんと、本物も美人さん~♡
シングル・マザーのジョイが、日々の家事の経験から「手で絞らず、ヘッドが取り外して洗濯機で洗える」ワンダーモップを考案し、ショッピング・チャンネル「QVC」(うちの母も観てます(笑))への出演をきっかけに大成功し、その後も数々の発明品をヒットさせて100を超える特許を取得し億万長者になりました。そんな彼女の伝記的な映画。映画なので、まんま全てが事実の通りではないでしょうけれど、成功するってわかっているので、途中の数々の困難も、ガンバレー!と応援しながら安心して観ていられるのが、こういう映画の良いところ^^。
 
 
ここからは、映画のお話^^。小さい頃から手先が器用で発想が豊かで、色んなものを工夫して作るのが得意だったジョイ。そんなジョイを祖母のミミ(ダイアン・ラッド)は特に評価し、「あなたが家族を導く存在になるわ」と常に愛情と精神的なサポートを注ぎました。ジョイにとっても、実の母以上に大切な存在が、ミミでした。
 
 
高校を首席で卒業するほど優秀なミミ。そのままいい大学へ進学し、良い就職をして良い生活をして良い結婚をして・・・のはずだったのに、両親の離婚のために大学進学は断念(実際のジョイは大卒らしいです)。ラテンなイケメンでミュージシャン志望のトニー・ミラン(エドガー・ラミレス)と情熱的な恋をして結婚して子供も2人生まれるも、トニーに生活力はなくイライラと不安が募って離婚。でもトニーは生活力がないから地下室に居候^^;。再婚離婚を繰り返しては出戻ってくる父親と、部屋に引きこもってメロドラマに没頭する母親(ヴァージニア・マドセン)に振り回され、仕事と家事と子育てと家の修理とフル回転しても生活は苦しいばかり。”こんなハズじゃなかった”なジョイの”未来”の現実。
 
 
ある日、父親の新しい恋人トルーディ(イザベラ・ロッセリーニ)の夫の遺産のクルーザーで皆で過ごしている時に、波でワイングラスを落としてしまい、掃除したモップを手で絞る時に割れたガラスで手を怪我してしまったジョイ。もう、人生踏んだり蹴ったり、何もいいことがない。いったいどこで間違ったのか・・・と落ち込む一方で、手を汚さず使えるモップがあれば・・・と閃きが。娘の画用紙とクレヨンを借りてアイディアを練り、父親の修理工場の職人の手も借りて試作品を作っては試行錯誤。
 
 
トルーディに出資を頼み、彼女の弁護士の提案で似たような特許を持つ香港の事業主のパートナー会社にロイヤリティーを支払い部品製造の発注をし、ついに製品が完成!後は売って売って売るだけ・・・。ですが、ビジネスの経験もツテもないジョイ。全財産を投じて良い製品を作った自身はあっても、販売チャンネルを確保できず、一本も売れません・・・(T_T)。絶体絶命のジョイを心配して人肌脱いだのは、ダメ夫だったトニー。昔の職場仲間が出世して、ボスにプレゼンすればその会社で売ってくれるかもしれないと。
 
 
そして、QVCの創設者ニール・ウォーカー(ブラッドリー・クーパー)と遂に出会うジョイ。ニールに会いに会社に訪ねて行ったジョイとトニーが対面して販売部にプレゼンをする流れで、最初は声だけ、後ろからの肩のみ、引きでの後姿だけ、手元のズームアップ、それから上半身をゆっくりなめてからのやっと顔出し、ドーン!という、あまりにも勿体つけた登場の仕方に若干ウケてしまいました(笑)。ブラッドリー・クーパー、素敵ですが最近ではもっぱら「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のロケットの声の人、の認識( *´艸`)。
 
 
ニールに「5万個用意しろ」と言われ、家を二重抵当に入れてさらに借金を増やして増産、「彼が紹介すれば絶対売れる」とお墨付きのカリスマ・プレゼンターのオジサンが担当することになり、家族関係者一同揃って放送を見守ますが、モップの扱い方が解からないオジサンのプレゼンが悲惨すぎて、まさかの注文電話ゼロ、オジサン慌てて次の商品へ・・・全てが終わってしまいました。ニールから電話で「残念だったな」て、あんたのスタッフがマズかったって一目瞭然でしょー。さらに「コストの1/3は保証する契約だが正直難しいと思う」って、それ契約違反でしょー( `ー´)ノ。
 
 
でも、負けない。ジョイは自分の製品ではなく、扱い方を知らなかったプレゼンターのせいだと主張し(その通り!)、もう一度、今度は自分が出演することを主張し、ニールもついに承諾。最初はいざスポットライトをあてられると頭マッシロになってしまったジョイですが、なんとか持ち直して発注電話もどんどん増えて、あっという間に完売の快挙!ちなみに映画ではここまで1本も売れなかったことになっていますが、実際のジョイさんは自力の販売努力で数千本の実績を作った上でのQVCだったそうです。
 
 
ジョイのピンチを救ったのは、幼馴染で親友のジャッキー(ダーシャ・ポランコ)。普段から、ジョイが精神的に参ってしまってイライラも疲労もマックスでもうどうにもならない・・・というタイミングを察して何気ない素振りで会話して、話を聞いて、ジョイの心をほぐしてくれる素敵な友人。主役のジョイ以外では、このジャッキーのファン(*'ω'*)。こんな友人、いいなぁ。欲しいなぁ。なりたいなぁ。と思います。
 
でも、まだまだこれで終わりではなかった。さらなる苦難がジョイを待ち受けます。姉のペギー(エリザベス・ローム)の嫉妬と焦りが原因の妨害や先走り、仕入れ先からの不当値上げ請求や不正行為・・・最初のQVC出演で成功を収めたのもつかの間、あっという間に自己破産申告書へのサインを要求される窮地に。もう、今度こそ本当にどん底に突き当たってしまったように見えるジョイ。
 
 
でも、最後の最後にやっぱり諦めず闘ったジョイ。仕入先の親会社があるテキサスへ乗り込んで海千山千のおじさんを相手取って大逆転のシーンは小気味よいです。映画なので、色々細かいことは気にせず。はしょっていてもノー問題。生活苦にある女性のサクセス・ストーリーのノン・フィクションものと言えばジュリア・ロバーツ主演の「エリン・ブリコビッチ」が今でも印象強いのですが、エリン・・・も含め他のサクセス伝記もの映画と比べると、派手さはなく割と地味に淡々とした作り方になっています。ストーリーも、いくつかの人生の帰路となるポイントに順にスポットを当てていく感じで、掘り下げたり、もっとドラマ性を高める演出もなく、説明不足と感じる人もいるかもしれませんが、その潔さがこの作品の場合、むしろ上手く活きていると思います。
 
演出や脚本でのデコレーションがシンプルな分、何をおいてもジェニファー・ローレンスが兎に角際立って、輝いています。ロバート・デ・ニーロやイザベラ・ロッセリーニといった大御所も、一歩引いて引き立て役に徹している点も好感的。ジェニファー・ローレンスの出世作である「ハンガー・ゲーム」のシリーズは、当時の自分のメンタリティーや諸状況の影響で内容的に受け付けなかったので一切スルーしたので未だ観たことがなくて「パッセンジャー」で大人になった、綺麗になった、と驚きましたがこの作品では彼女の魅力に圧倒されました。どのシーンの表情も、物凄く良い。あぁ、とんとん拍子で成功したように見えるその理由がちゃんとあったんだな、すごい女優さんなんだな、と思いました。
 
ある意味、ジェニファー・ローレンス=ジョイを観るための映画、と言ってもいいかもしれません。そして、その価値はあります。観おわって振り返って一番心に残るのは、様々な表情のジェニファー・ローレンスと、
彼女が演じるジョイの、揺るがない強さ。どんなに逆境にあっても、しっかり家族の面倒を見て、半信半疑の反応でも何度でも方法を変えて家族に説明し、ハードルをひとつひとつクリアして、壁にぶち当たってもあきらめず必ず道筋を見つけだし、納得いかない要求には徹底的に反駁し、くじけても、倒れても、また立ち上がって前に進むことを諦めない強さ。国民性の違いもありますが、つい安きに流されがちでほどほどのところで妥協してヨシとしてしまう自分を大いに反省し、学ぶべきものがジョイの強さにあるような気がします。・・・といいつつ、また変わらぬ日常に甘んじるワタクシ~をやすやすと想像できるのですが|д゚)。
 
ジェニファー・ローレンスのファンになっちゃいました( *´艸`)。そういえば「X-MEN:アポカリプス」での若かりし頃のミスティーク役もすごくよかったですよね(*'ω'*)。これからもっとしっかり注目しちゃいます。観そびれたままの「ハンガー・ゲーム」も、そのうち観なくちゃです。