『リチャード三世』 ウィリアム・シェイクスピア 著/小田島雄志 訳 | 今日もこむらがえり - 本と映画とお楽しみの記録 -

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備忘録としての読書日記。主に小説がメインです。その他、見た映画や美術展に関するメモなど。


ついに薔薇戦争の終結、「嘆きの王冠~ホロウ・クラウン~」一連のシェイクスピア歴史劇のおっかけ読書もこれにてコンプリート(*^-^*)。
劇場版「リチャード三世」を観た後なだけに、どういしてもリチャードの台詞の部分はベネディクト・カンバーバッチを思い浮かべながら読んでしまいます(´ω`*)。

あらすじは劇場版「リチャード三世」とほぼ同じ。周囲の反対を押し切って未亡人エリザベスを妻に迎えて王子王女にも恵まれて繁栄している兄王エドワード四世を、兄クラレンス公と共にグロスター公として支えながら虎視眈々と王座を狙い続けているリチャード。裏で噂や中傷の糸をひきクラレンス公を追放に追いやり、バッキンガム公と結託し忠実な部下ケーツビーに汚れ仕事を指揮させ、エドワード四世の世継ぎの王子たち、エドワード四世に忠誠を尽くす貴族たち、一旦妃に迎えたヘンリー六世の皇太子エドワードの妻だったアンまで次々と邪魔者を暗殺した上で「私は望まないのですが皆さんがどうしてもと言われるので・・・」の猿芝居でまんまと王座を手に入れます。

ところが、王座を手に入れた途端、安心するどころか次々と湧き出る不安に際限はなく、想像していたような達成感や満足感もなく、忠実なバッキンガム公も裏切り暴走し、自滅への坂道を転がり始めたところでランカスターの希望の星、成長したリッチモンド伯ヘンリーが王位を求めて挙兵し、ボズワースの戦いでついに討ち死にするまで。その後ランカスターのリッチモンド伯はヘンリー七世となり、ヨークの王女エリザベス(エドワード四世とエリザベス王妃の娘)と結婚することによりランカスター家とヨーク家による薔薇戦争も終結し、イングランドは長い内戦と混乱の時代を経て、アイルランドおよびイングランド統一のチューダー朝の繁栄の時代が幕を開けます。


ちなみにチューダー家の紋章はこちら。ランカスターの赤薔薇とヨークの白薔薇の両方を組み合わせたデザインに。百年戦争と薔薇戦争を題材にしたシェイクスピアの一連の歴史劇は、チューダー朝の正当性と功績をたたえる賛歌として利用されたという一説もあります。

劇場版「リチャード三世」同様、読み応えのある戯曲でした。映画にはなかった、エドワード四世王の逝去後に市民達が集まって「これからいったいどうなるんだろう」と噂話をするシーンが印象的でした。また、『ヘンリー六世 第三部』の終わりで身代金と代替でフランスへ追放されたマーガレット(ヘンリー六世の王妃)、映画ではフランス追放ではなくずっとイングランドの牢獄に幽閉された後に老年になって解放された設定になっていましたが、原作ではヨーク家への恨みつらみの執念に憑りつかれたマーガレットが密かにイングランドに舞い戻って潜んでいた、ということになっています。

そしてリチャードが殺した人間たち・・・ヘンリー六世と皇太子エドワード、クラレンス公、エドワード四世の王子たち(映画以上に利発で才気あふれる少年な印象でした)、アン王妃、、、etcの霊が登場してリチャード三世とリッチモンド伯にそれぞれ語りかけるシーンは、文章なのに迫力があって臨場感あふれる感じでゾクゾクしました。映像とはまた全然違った演出が楽しめる舞台での「リチャード三世」も観たくなります。