これまで何となく避けていた場所に足を踏み入れることにした。港区白金、言わずとしれた都心のど真ん中の高級住宅街。
住人に知り合いもいなければ、出入りするようなオフィスビルもない。
もちろん住んだこともなければ、この先住む予定もない。
まぁ一言で言えば縁もゆかりもないのだ。
あとは「セレブの街」とか「シロガネーゼ」みたいな勝手な先入観が心理的距離をも少なからず遠ざけている。
地下鉄の改札を出たところのエレベータは、まず地下駐輪場のフロアへ。
さらにエレベータを乗り換えて外に出ると、今度は歩道橋の上。
国道1号を眼下に見ながら住人とおぼしき主婦たちが自転車を押して渡っている。
ちょっと変わった駅の構造だが、余剰スペースのない都心、土地の活用法としては理にかなっているのかも知れない。
もちろん自転車と車椅子、坂道さえ絡まなければこの辺の動線は一緒だ。
昼下がり、せっかくだからカフェ飯と洒落込むことに。
メニューはボンゴレロッソのパスタ、冬野菜と
豆のスープ、ハーブティーのランチセット。
美味しかったことに間違いないが、いかんせん
値段に見合う量ではなく、あえなく5分で完食。
あきらめてお茶を飲みながら、窓の外に広がる柔らかい日差しに包まれた白金の街を眺める。
シロガネーゼ・・・、誰が何の目的で付けたネーミングなのかは知らない。
確かに、高級そうなマンションは多いし、お洒落な犬を連れて散歩を楽しむお洒落なマダム達には目を引かれる。
でも、それは東京中に広がる幾百の街のなかの一つの光景でしかなく、彼女たちが特別気取った風には見えない。
通りすがりの奥様に「私はセルブよ」と声をかけられることもなければ、胸に世帯年収入りのネームプレートを
付けてる人と遭遇もしなかった。
シロガネーゼ・・・、果たしてそれは実態のあるものなのか、それとも架空の存在なのか。